「大丈夫ですよ、キラさん」 メイリンがにっこりと微笑みながらこう言ってくる。 「すぐに見つかりますから」 侵入者は、と彼女は続けた。 「そうだね」 ミネルバの人はみんな優秀だから、とキラも頷いてみせる。 だが、どうしてその相手がよりによってミネルバに侵入してきたのか……と思うのだ。 目標はいったい何なのか、とそう思うのだ。 いや、その前に目的は何なのだろう。 「……あの人達を取り戻すつもりなのかな……」 おそらく、そうなのだろう。だが、そのために何をするつもりなのかはわからないのだ。 いや、わかっていないわけではない。 しかし、どうして……と考えてしまうのだ。 「僕なんて……」 キラが小さくため息をついたときである。 「キラさん!」 「大丈夫ね?」 言葉とともにレイとルナマリアが飛び込んできた。 「レイ君?」 「お姉ちゃん……どうしたの?」 いったいどうして彼等が……と二人は思わず目を丸くしてしまう。彼等のザクはまだ甲板にあるのに、と。 「どうしてもこうしてもないでしょう。キラさんの護衛!」 万が一、ブリッジに敵が侵入してきたときのために、とルナマリアが言い返す。 「他の人たちは、自分で自分の身を守れますが……キラさんの場合、二人分ですから」 いざとなったら、自分が抱えて走ります、とレイが付け加えている。 「その時は、あんたもちゃんと護衛をするのよ!」 「わかってるって。大丈夫よ」 メイリンもきっぱりとこういう言い切る。 「……それって、何か違うと思う……」 思わずキラはこう言ってしまう。 「何を言っているんですか! 赤ちゃんがお腹にいる人はそれだけで凄いんです!」 メイリンが拳を握りしめながらこう言ってきた。 「キラさんは、私のあこがれなんです! だから、絶対に可愛い赤ちゃんを産んでもらわないといけないんです!!」 さらにこう力説されて、キラは何と言い返せばいいのかわからない。それでも、可の歩が本気で心配してくれているのはわかる。 「あ、ありがとう」 だから、思わずこう口にする。 「気にしなくていいですよ、キラさん」 レイのこの言葉に、周囲の者達は皆頷いて見せた。 「ったく……」 どうして気づかれたのか。 アウルは忌々しさに顔をしかめる。 だが……と彼はすぐに思い直す。 「だったら、こそこそしている必要はないよな」 元々、こんな風にこっそりと行動をするのは苦手だし、と言いながら、アウルはナイフをしまう。そして、その代わりに銃を握り直した。 「ナイフよりはこっちの方が得手だしな」 くすりと笑う。そのまま、アウルは顔を上げると通路に飛び出した。 「だから、グラディス艦長につなげ、と言っている。お前達では話にならない!」 アスランは自分の前に立ちはだかっている整備クルーに向かってこう言い放つ。 「……アスラン……グラディス艦長は今、お忙しいのですから」 少しはこらえてくれ……とニコルは言外に口にする。しかし、それで彼がおとなしくしてくれるはずがないこともわかっていた。 「……本当にこの人は……」 困ったものだ、とこっそりとため息をついたときだ。 「インパルスとストライクが着艦をする! さっさと準備を始めろ!」 どうやらここのチーフらしい男がこう叫ぶ。その瞬間、アスランの表情が忌々しそうに顔をゆがめたのがわかった。 「フラガさんですか……」 しかしニコルにしてみれば彼が来てくれるというのは安心できる情報である。同じように考える人間は少なくとももう一人いるはずだ。 「キラさんが喜ばれますね」 アスランを刺激するだけだとわかっていても、ニコルはこんなセリフを口にしてしまう。それが、彼に対するくだらない嫌がらせだ、と言うこともわかっていた。 「フラガさんは、キラさんにとってお兄さんみたいな存在だそうですし」 しかし、そんなことを気にすることなくニコルはさらに言葉を重ねる。 「そうなのですか?」 「えぇ。アークエンジェルにキラさんが保護されていたとき、良くして頂いたのだそうですよ」 いつの時か……はあえて口にしない。それでも彼は勝手にアラスカ後のことだ、と判断したらしい。 「ナチュラルでも、やはり命の恩人は大切にするものなのですね」 こんなセリフを口にしている。 「礼儀を知らないのは、一部のバカだけ、と言うことでしょう」 偉い連中がそのバカだが、とニコルも言い返す。 「そうですよね。普通の人たちは、割と俺たちのことを受け入れてくれていますから」 個人レベルでそれができるのに、国となればできないのは、きっと、上層部が適当なことを言っているせいだ……と言う彼にニコルは微笑み返す。 「ともかく、移動してください。踏まれますよ」 笑顔で注意をしてくれた彼に頷くと、ニコルは視線をアスランへと移した。 「アスラン、いつまでもにらんでいても意味がないですよ」 そしてにこやかな口調で言葉を口にする。 「フラガさんがいらっしゃるなら、一緒にブリッジに案内してもらえるかもしれませんしね」 こう口にしながら彼を派遣してくれたデュランダルに感謝の念を抱くニコルだった。 |