「……地球軍の、動きはどうなっているんだ?」
 カガリは上着を脱ぎ捨てながらキサカに問いかける。
「パナマ、に集結しているようだ。それは当然のことだろうが……ただ、一部、アフリカに展開をしている部隊がある……」
 それが何を狙っているのかは言わなくてもいいだろう、と彼の瞳が告げていた。
「……どうして……」
 食いしばった歯の間からカガリは声を絞り出す。
「どうして、あいつばかり……」
 あんなに苦労しなければいけないのか、とカガリは思う。ひょっとしたら、それは自分だったかもしれないのに、と。
「……しかも、私は……表だってあいつを助けられないんだ……」
 キラは、自分を助けてくれた、というのに……と口にしながら、カガリはきつく拳を握りしめる。
「仕方がないな……オーブは中立だ。そして、彼女は今、バルトフェルド隊長の養女、と言うことになっている」
 それがキラを救うために執られた手段だ、としても、だ。キラは既にオーブの国民ではない。そうである以上、オーブが動くことは出来ないのだ。その理屈はカガリにだってわかっている。
「だからといって……」
 何も出来ないのは悔しい。
 カガリがそう思っていることにキサカは気がついているのだろう。
「……内密に……彼らを向かわせた。表向きは我々と関係がない彼らだからこそ、あちらには気づかれずに適切な行動を取ってくれるだろう」
 ため息と共にこう告げる。
「キサカ……」
 自分に知らせずに何を……といつもは怒鳴るところだ。だが、今回だけは彼の行動を感謝したくなる。
「ただし、本人には、知らせないように。それがウズミさまの出された条件だ」
 だからカガリも言動に気を付けるように。
 キサカはこう釘を刺してくる。
「……わかっている……ただ、あいつの無事を祈るだけは……許してもらえるんだろう?」
 それ以外に出来ないのだから、とカガリは聞き返す。
「それは当然の権利だ。誰にはばかることはない」
 キサカがもったいぶった口調で言葉を返してくる。それに頷き返すと、カガリは瞳を閉じた。

「……キラ、キラ?」
 フレイの声がキラの耳に届く。
「何?」
 それにキラはようやく顔を上げた。
「何じゃないわよ。何回呼んだと思っているの?」
 本当に、と言いながらフレイは頬をふくらませている。と言うことはかなり彼女を待たせた、と言うことになるのだろうか。
「ゴメン……ちょっと集中していたから、気がつかなかった……」
 こういう時の彼女は怒らせてはいけない。そう判断して、キラは即座に謝罪の言葉を口にする。
「別に怒っているわけじゃないわよ」
 そうすれば、フレイは直ぐに口調を和らげた。
「ただ、マードックさんがキラに聞きたいことあるって連絡を寄越したの。それと、ノイマンさんも」
 だから、キラが手が空く時間を教えて貰おうと思っただけ、とフレイは付け加える。
「……キラが忙しいのはよくわかっているし……今のところ、体調も良さそうだから、そんなに心配していないんだけどね」
 ただ、少しは休んで欲しい、と彼女は付け加える。
「ありがとう、フレイ」
 そんな彼女の気持ちは嬉しい、と思う。でも、とキラは心の中で付け加えた。何時、地球軍が襲ってくるかわからないのだ。
「でも、本当にもう少しで終わるから」
 そうしたら、ちゃんと休むよ、とキラは彼女に微笑み返す。
「それよりも、マードックさん達からの連絡の方が気になるね。ここの端末で繋がるのかな?」
 言葉と共にキラは腰を上げる。
 次の瞬間、軽いめまいを感じたのはどうしてだろうか。
「キラ!」
 慌てたようにフレイがキラの体を支えてくれる。
「ゴメン……立ちくらみ……」
「当たり前でしょ! あんた、午前中からずっと座りっぱなしで、食事もろくに取ってないんだもの! やっぱり、連絡の前の食事だわ、食事!」
 その間に、二人を呼び出してあげるから! と言いながら、フレイはキラを引きずるようにして歩き出す。
「フレイ、あのね……」
 お腹は空いていないんだけど……とキラは慌てて彼女に声をかける。
「だめ! 食べないなら、もう何もさせないわよ」
 きっぱりと言いながら、フレイはドアを開けた。そうすれば、そこに両手にお盆を持ったサイが立っている。
「フレイ?」
 危ないだろう、と彼は苦笑混じりに口にした。
「仕方ないでしょ? キラにご飯食べさせようと思ったんだし……」
 食堂に連れて行こうと思ったの、と彼女は言い返す。
「だろうと思って、持ってきたよ。三人で食べよう?」
 食堂は今、行かない方が良いから……と付け加える彼に、フレイだけではなくキラも首をかしげる。
「何かあったの?」
「……アイシャさんが爆発している……それが収まってもしばらく食堂が使えないかもしれない状況だからさ」
 だから、厨房の人に作って貰って来た、と付け加えられれば納得するしかない。
「アイシャさん……どうしたんだろう……」
 しかし、新たな疑問が湧き上がってくることもまた事実だ。彼女がそんな風に感情を爆発させるなんて考えられない、というのがキラの本音だったりする。
「……さっき、何か報告が届いて……それを聞いた瞬間、思い切り爆発していたから……」
 それが原因なんだろうけど、とサイはため息をつく。
「ともかく、食事をしてからにしよう。マードックさん達からも催促が来ているから」
 な、と言う彼にフレイもキラも、頷くしかできなかった。



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久々のカガリ。そして、キラの現状ですね。あぁ進まない。
アイシャ爆発は次回かな? 伏線を消化しておかないと(T_T)