うさんくさい。 目の前の四人組を見て、アスランはそう思う。 「助かりました。車が急にオーバーヒートをして難義をしていたんです」 そう言いながら微笑む金髪が一番うさんくさい。というよりも、奴の言動に自分たちに対する侮蔑が感じられるのは錯覚だろうか。 「アスラン?」 どうしようか。 アスランがそう考えたときだ。 キラの声が彼の耳に届く。 「大丈夫、直ぐ終わるよ。だから、そのまま乗っていて」 その瞬間、アスランはいつもの笑みを浮かべるとこう言い返す。 「……あれって、天然? 態度、全然違うじゃん」 「俺に聞くな」 ぼそぼそと会話を交わしている声がアスランの耳に届く。 コーディネイターの聴力を侮っているのか。それともわかっていてわざとやっているのか。おそらく後者だろうと、アスランは判断をする。 やはり、このまま見捨てていくのが一番良さそうだ。 こう考えるものの、キラの目の前でそれは難しい。仕方がないから、さっさと直してやるか、とアスランがため息をついたときだ。 「彼女に近づくな!」 最後の一人が自分たちのジープに歩み寄っていくのが見せる。それを認識した瞬間、アスランはこう叫んでいた。 「彼女は対人恐怖症なんだ! 知らない人間が側によると発作が起きる」 そんなことをするなら、自分達はお前達を見捨ててさっさと出発する、と付け加える。 「シャニ……こちらに来なさい」 仕方がありませんね……と言いながら、金髪がこう口にした。その口調も何処か投げやりなものに思える。というよりも、面倒くさがっている、と言うべきか。 「女性の側に迂闊に近づくのは、無礼ですよ?」 気になるのでしたら、きちんと手順を踏みなさい……と言う言葉は正しいのだろうが、この場で聞きたいとは思えないものだ。 「……いい加減にして頂かないと、手元が狂いますよ?」 そうしたら、故障を修理するどころか破壊することになるかもしれない、とアスランは言外に脅しをかける。 「それは困りますね。君たち、大人しくしていなさい」 このセリフもまったく真実みが感じられない。 他の三人よりもこいつが一番気に入らない、とアスランは心の中で呟く。そして、こいつらに《キラ》の正体を知られてはいけない、と何の脈絡もなく思う。 それは、第六感が働いたのだろうか。 それとも、彼ら――特に、金髪の男――のコーディネイターを侮蔑したような態度からか。 どちらにしても、こいつらは《敵》だ。アスランはそう結論を出した。 「……あら……」 キラ達の位置を確認していたアイシャが、小さな呟きを漏らす。 「どうかしましたか?」 ハンドルを握っていたイザークが問いかける。 「止まっているのよ、二人の位置が」 何かあったのだろうか、とアイシャは眉を寄せた。 その言葉に、イザークもまた不安を覚える。 一番可能性が高いのが、キラが不調を訴える、と言うことだろう。その場合、アスランに対処が取れるとは思えない。 それとも、流砂か何かにタイヤを取られたか、だ。 「……いったい、何が……キラに危険は?」 「わからないわ。少なくとも、この位置には地形的な危険はないはずなの。一応、公道扱いだし……いくらレジスタンスでも、ナチュラルを巻き込む可能性がある場所に地雷なんかは埋めないわ」 第一、信号が出ているのだから、車が破壊されたわけではない、とアイシャは言葉を返してくる。 「可能性があるとすれば、ガス欠か……あるいは、側に誰かがいるのかもしれないわね」 この言葉に、イザークは表情を強張らせた。 「……スピードを上げます。あいつらが動いていないなら、追い付くチャンスでしょう」 そうすれば、キラに危険が及ぶ前に助けられる。イザークは言外にこう告げた。 「賛成ネ。どうせ、周囲には誰もいないんだもの。好きなだけスピードを上げて」 もし、何かが飛び出してきても、コーディネイターの視力であれば避けられるだけの距離で認識できるだろう、と彼女は笑う。そうでなければ、MSのパイロットなど、出来るわけがないのだ、とも。 「任せておいてください」 そんなことをすれば、自分たちもただではすまないだろう。そうなれば、キラがあいつの良いようにされてしまうのは目に見えている。 「貴様にだけは……何があっても、キラは渡さない……」 キラがもし、自分を選ばなくてもかまわない。彼女が幸せになってくれるなら。 こう考えた瞬間、イザークは口元に苦笑を刻んだ。 「だから……何で、そんなことを許したのよ!」 フレイが大人達――正確に言えばクルーゼ――の顔を睨み付けながら、こう叫ぶ。 「あのバカが、キラに何をしたか、当然、知っていたのでしょう? なのに、誰も監視に付けなかった、なんて……失態も良いところだわ!」 この言葉に関しては、反論が出来ない。 「……そこまでバカだ、とは思わなかったのだよ……」 自分とバルトフェルドの二重の命令を無視するとは、とクルーゼは口を開く。 「それに、場所が場所だったしね」 アークエンジェルのMSデッキでは人目もあるし、大丈夫だろう……と考えたのだ、とも。 「……そう、かもしれないけど……でも……」 それでもキラは連れ去られてしまったのではないか。 フレイはそう訴える。 「フレイ……君がここで騒いでも何も出来ないよ? フラガさんやアイシャさん、それにイザークさん達を信頼して待っていよう?」 その彼女をなだめようと、サイが口を開く。 「あの人達なら、絶対、キラを無事に連れて帰ってきてくれるから、さ」 だから、彼らが戻ってきてからのことを考えた方が建設的だろう、という彼の考え方をクルーゼは好ましく思う。 「そうだね。この失態のお詫びに、君がアスランを殴りたい、というのであれば、押さえつけていてあげよう」 反撃できないように、とクルーゼは口にする。 「お願いします」 フレイが即座にこう言葉を返してきた。 「フレイ……」 「……無理だけはしないようにね」 どうやら、周囲の者たちは下手に制止すると逆に彼女に火を付けることになりかねない、と判断したのだろう。ため息と共にこう告げる。 「任せておきたまえ」 だが、そんな彼女が好ましいと思ってしまうクルーゼだった。 と言うわけで、あっちゃいましたよ、このメンバー これからどうなるのか。本当に三つどもえですね。間に合うのかイザーク…… |