最初にバッテリーが切れたのはデュエルだった。それは、シホのミスではなく、彼女が機体になれていなかったからだろう。
「と言うことは、フリーダム以外、危ない、と言う事ね」
 デュエルを緊急に収容するように指示を出しながらこう呟く。
 ストライクであれば、バックユニットを変更すればすむだろう。だが、他の二機は……とラミアスは眉を寄せる。
 相手にしても同じ条件だと言えるだろう。
 だが、相手は数が多い分、交代でバッテリーの交換を行えるのだ。
 だが自分たちは……と暗い方に行きかけた考えをラミアスは強引に遮断する。そして、改めてこれからの対処を考えようとした、まさにその時だ。
「ザフトの機影を確認! おそらく、救援だと思われます」
 チャンドラの声がブリッジ内に響き渡る。
 今までなら間違いなく《敵襲》と判断していたそれらの機影を《救援》と判断できるその柔軟さに、ラミアスは満足感を感じていた。それは、間違いなくキラを始めとした者たちの存在があるからだろう。
「バルトフェルド隊?」
 問題は、その救援が何処の者たちなのか、と言うことだろう。
 イザーク達やモラシムの存在があるから、アークエンジェルが攻撃をされることはないだろう。だが、その後のこと――特にフラガの処遇――を考えれば、やはりバルトフェルド隊の方がありがたい、とラミアスは考えてしまう。
「片方はそうだ、と考えられます。もう片方は……おそらくジブラルタルから発進してきたものだと……」
 おそらく、飛行経路からそう推測をしたのか。チャンドラはさらに言葉を重ねてくる。
「わかりました……デュエルがまた発進できるようであれば、申し訳ないけどアイシャさんを。そうでなければ、シホさんにブリッジに上がるように連絡を取ってください」
 いざというときには、彼女たちの存在が大きな助けになってくれるだろう。
 戦闘さえ終われば、イザークやディアッカも擁護に回ってくれるはずだ。
 だから、大丈夫だろう、とラミアスは自分を鼓舞するように心の中で呟く。
「了解しました」
 彼女の意図が伝わったのだろうか。
 バジルールが即座に行動を開始する。
 それを横目に、ラミアスは意識をまた戦場へと戻す。
「フリーダムの援護を! ヘルダート準備! ただし、フリーダムとストライクには当てないでね」
 最後の一言は余計か、とは思いつつもこう付け加える。
「わかっています!」
 慣れていますからね、と返された言葉に、ラミアスの口元に微かな笑みが浮かんだ。
「キラ君はそうだったかしら?」
 そして、ついついこう言ってしまう。はっきり言って、彼女がストライクに乗っていたという事実は、既に記憶の彼方なのだ。
「かなりのじゃじゃ馬だった、と記憶しておりますが?」
 バジルールが苦笑と共にこう言い返してくる。
「もっとも、あの頃のキラ・ヤマトにその表現が当てはまるのかどうかはわかりかねますが」
 相変わらず、生真面目な口調で彼女はこう付け加えた。
「あの頃のキラ君は……まだ男の子だったものね」
 今は、その姿からは信じられないが……とラミアスは頷き返す。それでも、彼女の存在は、今でも自分たちを守ってくれている。MSに乗れなくても、その心が変わらないならかまわない。だから、自分は――自分たちは彼女を守る選択をしたのだ。
「だから、さっさと終わらせましょう? キラ君に、これ以上のストレスを与えないためにも。せっかく、良くなったのに、また体調が崩れては可哀相だわ」
 この言葉に、誰もが頷く。
「……敵の戦艦に攻撃を加えましょう……許可をいただけますか?」
 まだためらいが残る口調でバジルールがこう問いかけてくる。
「責任は全て私が取ります。最善の方法と思われることをしてください」
 ラミアスの言葉に、ブリッジのものが全員頷いて見せた。


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次ぐらいで戦闘シーンが終わるか……と思っています。その後の展開を考えると、ちょっと今から胃が痛いです(苦笑)