「つまり……キラはミゲル達と同期で、極秘任務でヘリオポリスにいたところ、今回、帰還命令を受けて戻ってきた……と言うことでいいんだな?」
 あちらこちらに飛んでしまったキラの話を整理したアスランが、完結なセリフで確認を求める。
「そう言うこと……だね、とりあえずは」
 キラが口調と共にそれに頷き返せば、
「もう少し、事態は複雑なのだが……かまわないだろう。重要なのは、キラが戻ってきたこと。地球軍が開発をした機体を奪取してきたこと。そして、死者が誰もでなかったこと、だ」
 クルーゼがそれをフォローするかのように言葉を口にした。
「死者が出なかった?」
 最後の機体を奪取してきたのが《キラ》であれば、ラスティは当然……と思っていたのはアスランだけではなかったようだ。イザークがこう呟いている。
「ラスティはキラが保護してくれて……今は医務室で手術中だ」
 ミゲルが彼の言葉に答えを返してくれた。
「と言うことは……」
 自分は生きていた彼を見捨てて来たのか……とアスランは衝撃を隠せない口調で呟く。
「あの状況だったし、ちょっと見、死んでいると判断しても仕方がない状況だったからね。あんまり自分の責任だ、って思いこまない方がいいよ」
 そんなアスランの耳に、キラの柔らかな声が届く。
「それよりも、もっと厄介そうな事実があったのですけど……どうします?」
 報告した方がいいのか、それとも黙っていた方がいいのか……とキラはクルーゼへと問いかける。
「もちろん、聞かせて貰うに決まっているだろう、キラ。それとも、あちらとのかねあいで話せないのかね?」
 そんな彼に対し、クルーゼもまた意味ありげな口調でこう聞き返した。
「いえ。それはありませんから」
 でも、本当に厄介事ですよ……と言うキラと、それに対するクルーゼの態度はどう見ても上司と部下、と言う関係には見えない。むしろ、身内と言う方が近いのではないだろうか。
「……あれ、マジで隊長?」
「それとも、あの方が特別なのでしょうか」
「俺に聞くな、俺に」
 アスランの背後でこんな囁きがかわされている。と言うことは、彼らも同じ思いを抱いていたらしい。そんな彼らに対し、キラが意味ありげな笑みを向けてきた。だが、今答えを口にするつもりはないようだ。
「大概のことは対処できるはずだ。聞かせて貰おう」
「……実は、後三機のMSと新造艦がある、と言う情報は掴めたのですが、場所までは特定できなかったんです」
 ごめんなさい、とキラは付け加えた。
「だが、先に奪取してきた四機と、それに積まれていたOSは見せて貰ったが、あれではナチュラルに動かせるとは思えないが……」
 もちろん、百パーセント不可能だとは言い切れないが……と彼は続ける。
「普通のナチュラルなら、ほぼ不可能でしょうが……普通ではないナチュラル用、のようですから、あちらの機体は」
 キラがこんな風に言葉を濁しながらクルーゼに言葉を返した。
「……言いにくいことか?」
 ミゲルが思わず彼らの会話に口を挟んでしまったようだ。微かにまずい、と言う表情を作っている。もっとも、それができるのはこの場では彼だけだ……と言うことも事実であろうが。
「まぁね。情報を入手した瞬間、本気で《バカ》と怒鳴っちゃったくらいの内容だよ」
 ミゲルはともかく、アスラン達に聞かせていいものかどうか、わからない……とキラはきっぱりと言い切る。
「俺達が信用できないとか?」
 その態度にかちんと来たのだろう。イザークがむっとした表情で口を開いた。
「……信用できる、出来ないの問題じゃない。君たちが何処まで覚悟を決めているか、僕が知らない、と言うだけだ」
 それだけ衝撃的な内容だ、とキラは穏やかな口調で言い返す。そんな彼の態度に、アスランは微かに悲しいものを感じてしまう。記憶の中の彼との差違が離れ離れになっていた時間の長さを見せつけているようでもあるのだ。
「かまわんよ、キラ。どのような内容でも取り乱すものはいないはずだからね」
 そうだろう、とクルーゼが笑いながらアスラン達に視線を向けてくる。それに四人は反射的に頷いていた。
「隊長……がそうおっしゃるなら信用します」
 結局、自分はアスラン以外の彼らについて、判断できるだけの情報を持っていないのだから、とキラは付け加える。このセリフにアスランが嬉しいと思ったのは事実だ。
「地球軍……と言うよりはブルーコスモスですね。連中は手術と薬品投与により反射神経その他をコーディネイターレベルに強化した人間をパイロットとして育成しています。もっとも、その処置を受けたものが全員、生きているとは言い切れませんが」
 言外に、死亡した者が少なからずいる……とキラは告げる。その事実に誰もが言葉を失っている。
「そうか……では、それについてはアデス達に任せよう。キラは、整備陣に付き合ってやってくれ」
 書き換えたOSについても含めてな……とクルーゼは命じた。
「はい」
「その前に彼らとの交流を深めておくように。それに関してミゲルに任せよう」
 ラスティの手術の結果を聞くまでは安心できないだろう、とクルーゼは付け加える。その瞬間、アスラン達の口元に苦笑が浮かんだのは事実だった。



どうも、上手くシーンを切れませんねぇ。と言うより、余裕がないだけかもしれません。
ともかく、顔合わせは終了。次回はもう少し突っ込んだ会話になるかな?