途中、余計なおまけもあったが無事にプラントに辿り着いた。
　そんな彼らを大勢の者たちが出迎えている。
「……何でまた……」
　それを目の当たりにしたカガリがこう呟くのが、キラの耳に届いた。
「ラクスがいるからじゃないかな？」
　彼女は、プラントでも一番のアイドルだから、そちらの関係のマスコミも多いのだろう、とキラは説明をしてやる。
「カガリとムウ兄さんのことはばれていないはずだし」
　むしろ、オーブとのことを考えて極秘で進めるように指示が出ているのだ。だから、指示があるまでは大人しくしていて欲しい、ともキラは付け加えた。
「……で、アスラン達が先に出てくと……いいのか、キラ？」
　不意にカガリがこう問いかけてくる。
「何が？」
　彼女が言いたいことはだいたい想像が付いていた。だが、一応こう聞き返す。
「あの馬鹿とラクスのことだ」
　そうすれば、予想通りの答えが返ってくる。
「あの二人のことは必要なことだし……それに、アスランとラクスの子供って可愛いと思わない？」
　自分たちの間ではちゃんと話が付いているのだ、とキラは笑う。
「つまり……全部は合意を取り付けた上での行動だ、って言うんだな？」
「そう言うこと」
　でなければ、アスランの気持ちを受け入れる決意がつかなかった……とキラは微笑む。
「……どうしてキラは……」
　カガリが小さなため息をつきながら、こう呟く。
「物事、なるようにしかならないんだっていうのに、慎重なんだろうな」
　たまには冒険してもいいんじゃないのか、と彼女は付け加えた。
「それが許される立場ならね……」
　カガリであれが、まだ多少の融通は利くかもしれない。だが、自分の立場であればそれは難しいだろう。キラは言外にそう告げる。
「……それもわかっているけどな……でも、どうしてキラだけって思うんだよ」
　自分たちは双子なのに、と吐き出しながらも、彼女の腕は優しくキラを抱きしめてくれた。
「仕方がないよ。僕も、ラウ兄さんも……コーディネイターだから……」
　今の地球では暮らすことが出来ない。いや、地球だけではない。オーブのコロニーでも同じ事だ。
　そして、自分たちの《血》の源がオーブの中枢にある以上、プラントでも慎重に行動しなければならない。
　カガリにそれを理解しろ、と言っても難しいだろう事も、キラにはわかっていた。
　いや、理解しようとはしてくれているのだが、当事者ではない以上、微妙な事柄まではわからないらしい。いや、彼女の場合、性格自体に問題があるのではないかとも思う。
　それでも、彼女の存在が自分にとって救いであることもまた事実だ。
「だから、それがどうしたって言うんだ！」
　キラはキラで、ラウはラウだろうとカガリは口にする。
「あのばかのことは心配するな！　オーブに戻り次第、手を打つさ。ムウ兄様もその気になってくれているし」
　あの人がその気になってくれているうちに何とか出来れば、自分たちの勝ちだ、と彼女は笑う。
「なら、それこそ側で見張っていないと……魅力的な女性が目の前を通れば一発でアウト、でしょう」
　別の意味を笑みに含ませながらキラが指摘をした。
「そうなんだよなぁ……それが一番厄介なんだよ」
　かといって、男ばかりで固めても意味がなさそうだし……とカガリはため息をつく。
「そうなの？」
　ザフトでは別段珍しくもないらしい関係だとミゲルからは聞いていたが、女性兵も前線に出ることが多い地球軍では考えられないことではないだろうか。
　それ以上に、彼の性格では男を相手にするとは思えないのだ。
「あぁ。私の前でも平気で男を口説いていたぞ」
　そんなキラの内心を知っているのか。カガリは妙に力を込めてこういった。
「あるいは……何か目的があったのかもね」
　そう考えれば納得できる、とキラは心の中で付け加える。
「男相手に色仕掛けか……趣味と実益をかねているとか？」
　よくわからないが、カガリはため息をつく。
「趣味はともかく、実益は否定できないかも」
　好みの女性がいないなら……とフォローするつもりで言った言葉だが、その逆の効果しかもたらさないことにキラも気づいてしまった。
「ともかく……ムウ兄様が婚約者じゃなくてよかった、って事だな」
　自分の性格では耐えられないに決まっている、とカガリは付け加える。
「と言うことは、男に生まれてよかった……って事かな？」
　もしキラが女であればそう言うことも否定できなかったのだ、とウズミから聞かされ事を思い出してげんなりとした表情になってしまった。
「私は……あの人に《義姉さま》何て言われたくないぞ」
　逆ならまったく気にならないが……と言うよりも、今と全然変わらないから、とカガリは言い切る。
「と言っても、アスランにそう呼ばれたいと思わないがな、私は」
　だから、どうしてそこに戻るんだ、とキラは心の中で呟く。せっかく、話題をずらしたのに……と。
「アスランだって言わないと思うよ」
「当たり前だ！　言わせてたまるか！」
　キラが苦笑と共に告げた言葉にカガリは怒鳴るように言い返してきた。
「……カガリ……」
「何の話だ？」
　キラが何と言い返そうか悩んでいれば、さらに厄介な人物が姿を現す。どうやら、目立たないようにと言うことなのか。彼はザフトの一般兵の軍服を身にまとっている。だが、どこか浮いているような気がするのは、彼が持っている雰囲気のせいだろうか。
「誰かさんが、男を口説いていた……って言う話だ」
　キラが何と言うべきか、と考えているときに、カガリがこう言う。
「あれか……仕方がないだろうが。俺はキラのようにばれないでハッキングなんてできなかったんだから」
　一番良い方法は、誰かにプログラムを流して貰うことだったんだよ、と彼は付け加える。
「だからって……男か？」
「いいだろう。パイロットじゃよくあることだし……まぁ、キラのように可愛らしい奴がいないって言うのは事実だけどさ」
　こいつにはアスランがいるからなぁ……と言いながら、フラガはキラを抱き寄せる。
「と言うことで、おにーさんに何処まで進んだか教えてくれないか？」
　さりげなく囁かれた言葉に、キラは反射的にひじ鉄を食らわせてしまった。
　それだけではない。
　カガリの拳がしっかりと彼の頬へと食い込む。
　その後、フラガが自力で無事にヴェサリウスを降りられたかどうか、それは言わなくても良いことだろう。



……なんか、誰かさんのイメージも変に(^_^;
疲れているのかな、私……