「何なんだよ、こいつら!」 まさかイザークと二人がかりでここまで苦戦をするとは思わなかった。それがディアッカの本音だ。 同時に、あのクルーゼとミゲルが苦戦するはずだ、とも納得してしまう。ここにキラがいればまた話は違ったのかもしれないが、彼は今、もっと重要なことを行っているはずだ。 だから、自分たちでできることは自分たちで何とかしなければいけない。 「って……ラスティとニコルは何をしていやがるんだよ」 手伝え、と思わず心の中で付け加えながら、ガンランチャーで敵の接近を防ぐ。ついでに損傷も与えたかったところだが、そういうわけにはいかないらしい。 「ちぃっ!」 いったい、どういう装甲を使っているのか。それともシステムの方か……と忌々しく感じてしまう。 ビームがねじ曲げられてしまえば、攻撃のしようがないではないか。いや、ないわけではない。 「接近戦かよ」 それはバスターの一番苦手とするところだ。 と言うことは、ミゲルかイザークに任せたいところではある。 そんなことを考えていたときだ。背後から接近してくる機影をセンサーが捕らえる。 「……後ろから!」 まったく、一機でも厄介なのに……と思いながら、反射的に振り向こうとする。しかし、今まで相手をしていた方のもMSがそれを許してはくれない。 「まったく!」 頼むから、こっちに寄越すなよ……とそう心の中で毒づいた時だ。 目の前を、あらぬ方向からのビームがよぎる。 「隊長?」 おそらく、ドラクーンを使って相手の動きを牽制してくれたのだろう。実際、その後にミゲルとイザークが相手の機体を抑えにかかってくれている。 「と言うことは……俺も泣き言を言ってられないってことだよな」 少なくとも、こいつらをキラやアスランの元に行かせるわけにはいかない。 彼等の手が止まるようなことになれば、本国にいる人々がどうなるか。 「まったく……さっさと撃ちろよ!」 そうすれば、自分たちもミサイルたたきに奔走できるのだ。そう思いながら、ディアッカは相手の弱点を探す努力を再開した。 「……見つけた……」 多分、あれだろう。 ニコルはそう心の中で呟く。 「よかった……取りあえず、バッテリーが切れる前で」 後は……と心の中で呟きながら、取りあえず、ラスティ宛に合図を送る。そうすれば、彼が後は何とかしてくれるだろう。 ならば、自分はあれの動きを止めて、指揮官を確保するだけだ。 そうすれば、地球軍の動きは止まらないまでも指揮系統に混乱が生じるはず。 ほんのわずかな時間でもいい。それさえあれば、きっと他の者達が何とかしてくれるはず。 だから、と思いながらニコルは慎重にブリッツを近づけていった。 その報告は、クルーゼの元へも届いた。 「無茶をする」 だが、確かに適切な判断だろう。そうも考える。 「成長をするものだ」 ならば、この後のことも任せて大丈夫だろう。というよりも、残念だが、今の自分にはその余裕がない。 いっそ、バルトフェルドに押しつけてしまおうか。 「……それがいいかもしれないな」 本人はいやがるだろうが、そんなことは自分の知ったことではない。そうも考える。 「そうさせるか」 もし、自分の余力ができたときには、そちらに手を出すよりももっと別の方面の手助けをしたい。そう思うのだ。 「そのためにも、そろそろ終わらせてもらうよ」 今まで時間をかけたのは手間取っていたからだけではない。どうせなら、最小限の労力で最大限の成果を上げよう。そう思ったのだ。 だが、このような状況になるのであれば、さっさと終わらせてもよかったかもしれない。そうも思う。 「後で、あの男がうるさいな」 まぁ、それに関しては適当に言いくるめればいいか。 それができる自信があるし。 心の中でこう呟きながら、目の前の機体に向けてドラクーンの照準を合わせた。 「間に合うか!」 目の前で数発の核ミサイルがプラントへと発射された。それら一つ一つに照準を合わせている余裕はないだろう。 しかし、下手な角度で攻撃をすれば、それがプラントに当たる可能性もある。 どうするか。そうアスランが心の中で呟いたときだ。 プラントと核ミサイルの間を隔てるようにビームが鮮やかな軌跡を描いた。 それが何から放たれたものか。確認しなくてもわかる。 「キラ!」 おそらく、彼がこの状況に気づいて防御に動いてくれたのだろう。 そして、全てのミサイルがフリーダムの動きで四散する。 「……そうだな。一人じゃないんだ」 一人のミスは他の誰かがフォローしてくれればいい。 だからといって、同じミスを何度も繰り返すつもりはないが。 「後は……どこにいる?」 キラへの礼は二人きりになったときにじっくりとすればいい。だから、と思いながら周囲を見回す。 そして、メビウスの一群を見つけると、それらとプラントの間に割り込むようにジャスティスを移動させた。 「攻撃を中止させてください! でなければ……この艦を破壊します!」 ニコルの声が戦場に響き渡った。 |