シンが操縦をするM−1がエターナルへと移動していくのが確認できる。
「……取りあえず、今のところシステムに問題はないようね」
 それを見つめていたマリューがこう呟いた。
「そうだな」
 苦笑とともにフラガは彼女の肩に手を置く。
「大丈夫だ。あちらにはキラがいる。ちゃんとフォローしてくれるって」
 その前にアイシャが何とかしてくれるだろうが、と思う。だから、シンに関しては心配いらないのだが、と小さなため息をついた。
「ムウ?」
「だから、お前にはカガリに付いていて欲しいんだよ。この艦には、後女性はいないし、な」
 それに、とフラガは苦笑を浮かべる。
「ここには、使ってないアストレイがある、からな」
 きちんとロックされているだろうが、それでも何をしでかすのかわからないのだ、あのお姫様は。本当、どうしてキラとカガリの性格が逆ではなかったのだろうか、とフラガは本気で考えてしまう。
 でなければ、性別が逆でもよかったな、と。
 いっそ、その方が世の中収まったかもしれない……と考えかけてやめる。
 キラが女だったら、無条件であのおおバカが手を出そうとしたに決まっているのだ。それも、カガリに対するそれ以上の執拗さで。そんなことになったら、どうなっていたか。
「いくらカガリ様でも、あのアストレイは使えないわね」
 そんなことを考えていたフラガの耳に、マリューのセリフが届く。
「マリュー?」
「悪いけど、多分、貴方でも使えないわよ」
 キラが自分用にくみ上げたシステムをさらにラスティにあわせてカスタマイズしていらから、オーブで見たものよりもさらにピーキーな仕上がりになっている、と彼女は平然と口にした。
 と言うことは、既に彼女は確認をしてきた、と言うことか。
「……マリュー?」
「キラ君が声をかけていってくれたのか。あなた方が相談をしている間に、整備の主任が許可をくれたのよ」
 一応、開発チームの一員だったし、とマリューは悪びれる様子もなく口にする。
「そうか」
 キラが手配をしてくれたのならば大丈夫だろうが……と思う。  だが、彼女もある意味技術バカだ。そう言う点では常識が吹き飛びそうな気がしてならない。
「大丈夫よ。さすがにザフト製のMSをいじらせてくれ、なんては言ってないから」
 興味はあるけど、そのくらいはわきまえているつもりだ、と彼女は付け加える。
「それよりも、プラントに付くまでにあなた達のM−1を何とかする方が先決でしょう?」
 戦闘に耐えるように、システムの確実性を上げていかなければいけない。その方が優先だろう、とマリューは笑う。
「……マリュー?」
「貴方とシンのことだもの。絶対に傍観者ではいないでしょう?」
 だから、そのために必要な準備をするのが自分の役目だろう、と彼女は笑みを深める。
「それはそうだが……」
「大丈夫よ。カガリ様にも付き合ってもらう予定だから」
 こき使わせて頂きます、と言う彼女はあくまでも本気だろう。
「……それに関しては、遠慮はいらないがな」
 問題は、それでおとなしくしてくれているかどうかではないか。カガリの性格では難しいものだ、と心の中ではき出す。
「きちんと見張っているわ。だから、大丈夫よ」
 それよりも、自分の仕事をきっちりとやってね……と逆にマリューに釘を刺される。
「わかっているって」
 ここで自分が失敗すればどうなるかぐらい、とフラガは笑う。
「だから、マジで、カガリのことは頼むな」
 この言葉に、マリューは微笑みとともに頷いてくれた。

 ふわりと微笑みを浮かべるとアイシャが立ち上がる。
「アイシャ?」
 どうかしたのかな? とバルトフェルドが問いかけてきた。
「オコサマ達が戻ってきたワ」
 だから、出迎えに行ってくるの、と彼女は笑う。
「そうか」
 なら、きちんと出迎えてやらないとな……とバルトフェルドは言い返した。特に、シンを。
「あぁ、キラには悪いが、こちらに来るように伝えてくれるかな?」
 アスランとシンは好きにしてくれていいぞ、と付け加える。
「イジメないわよ、ネ?」
 そんな彼の言葉に、アイシャがこう聞き返してきた。
「ひどいな。俺がそんな人間に見えるか?」
 アイシャならともかく……と苦笑とともに笑う。
「それこそ、ひどいワね」
 即座に彼女は気に入らないというように頬をふくらませた。
「お互い様だろう」
 だが、すぐに笑い声を立てる。
「否定できないわネ」
 気に入らないけど……と言いながら移動を開始した。
「すぐに来るように言うワ」
 できるだけ早く解放してね……と言う彼女のにバルトフェルドはひらひらと手を振ってみせる。それに頷くと、彼女はそのままブリッジを後にする。
「さて」
 あの少年はどのような感想を抱くかな、とバルトフェルドは口のなkだけで呟く。そんな彼の前のモニターには、ラクスからのメールが映し出されていた。