休暇中とはいえ、やはりキラやクルーゼの様子が気になる。そう言うことで、久々にイザーク達は軍本部へと足を運んでいた。
「おい……」
 だが、目の前を通っていった相手に彼の機嫌はいっぺんに降下する。
「イザーク……わかっていると思うが……」
 そんな彼の耳に、何かを心配しているようなディアッカの声が届く。
「うるさい!」
 わかっている、とイザークは怒鳴り返す。
「あいつがここにいるのは……キラと仲がいいから、だろう」
 きっと、キラのことを心配した誰かが呼び出したに決まっている、と彼は付け加えた。
「……まぁ、それは当たっているんだろうが……」
 それだけじゃないしな、あの二人は……とわけもなくディアッカが呟いている。そんな彼の態度も、ある意味見慣れたものだ。
「親友で幼なじみ、だけじゃないのか?」
 キラの側にアスランをオク理由はそれだけでも十分だろう、とイザークは思う。
 本来であれば、ミゲルの方が慣れているのかもしれないが、そうなればクルーゼの手助けをできる人間が二人とも彼の側を離れることになる。それでは何かの時にこまるのではないか。そう思ったのだ。
「俺では、キラが弱音を吐けないだろうしな……」
 それはディアッカやニコル、ラスティでも同じ事だろう。
 アスランは本当に兄弟のようにして育った、ということだし、ミゲルにはアカデミー時代にさんざん迷惑をかけまくっていた。そうなれば、彼等の前でまで虚勢を張る必要がない、と判断をしても当然だ。
 それが少し悔しいような気がしないでもない。
 だが、今それを言っても無駄なことはわかっている。
「ともかく、あれを捕まえればキラの居場所がわかるんじゃないのか?」
 自分たちが立ち入りを許可されない場所だとしても、アスランなら呼び出しをかけられるだろう、とイザークは付け加えた。
「なるほどな」
 そりゃそうだ、とディアッカも頷いてみせる。
「隊長が呼び出したんなら、そこいらのフォローも万全か」
 しかし、と彼はすぐに付け加えた。
「あれを呼び止めるのも俺の役目……なわけね?」
 イザークでは決して友好的に事を運べないだろう……と言外に付け加えられたようで気に入らない。だが、否定もできない事実だから、あえて聞かなかったことにしておく。
「当たり前だろうが!」
 そんな面倒なことをしてたまるか……とイザークは胸を張る。
「へいへい」
 仕方がないな……と口にしながら、ディアッカはアスランへ向かって歩いていった。

「まさか、お前達がわざわざ顔を出しに来るとはな」
 予想もしていなかった……とアスランははっきりと口にする。
「俺たちだって、一応、それなりにキラの事情は知っているからな」
 心配になっただけだ……とイザークは言い返す。
「そうか……」
 悪かったな……と告げた真意は何なのだろうか。それはわからない。
「で、キラは?」
 これ以上、自分たちに会話を続けさせてはいけない、と思っているのか。ディアッカが慌てたように口を挟んでくる。
「隊長に報告中だ。それが終わったら来ることになっている」
 そこでふっと何かを考え込むような表情を彼は作った。
「アスラン?」
「……その後で、ラクスとニコルに食事に誘われているんだが……お前達はどうする?」
 今なら、連絡を入れれば人数を増やすことも何とかなるのではないか、とこう問いかけてくる。
「……ラクス嬢とニコルか……」
 ディアッカが微妙なニュアンスを含ませながらこう呟く。その理由もわかってしまう。
「大丈夫だろう……少なくとも、ラクスは」
 キラのことを彼女も彼女なりに心配していたし……とアスランは口にする。
「ニコルも、そう言う点に関しては配慮があるから、大丈夫か」
 その後に続けて、ディアッカもこういう。
「それに……人数が多い方が、キラが喜ぶだろうしな」
 あの二人がバカをやってなきゃ、呼び出す予定だったし……とアスランはさりげなく付け加えた。
「あの二人というと……ミゲルとラスティか?」
「あぁ。よりにもよって、ストライクのOSをいじっていてバグを出したそうだ」
 自分で何とかしろと、隊長に言われたらしい……とアスランは意味ありげな笑みを浮かべる。
「それって……まさかとは思うが……」
 何かに気づいたのだろう。ディアッカがこう問いかければ、
「そのまさからしいぞ」
 だから、隊長もキレたんだろう……とアスランは言い返す。
「……バカだな」
「あぁ、バカだ」
 二人だけでしている会話が気に入らない。
「だから、何がどうなっているのか、きちんとわかるように説明をしろ!」
 イザークはとうとうこう怒鳴ってしまう。
「……ミゲルがラスティをからかったせいで、大切なところをデリートしちゃっただけだよ」
 それに対して答えを返してきたのはキラだ。
「キラ」
「取りあえず、バックアップは無事らしいって。整備主任が激怒しながらも監督してくれるって言っていたから、大丈夫じゃない」
 こっちの報告も終わったし……とキラはさらに言葉を続ける。
「そうか。なら、移動するか?」
「その方がいいかもね……さっき、まずい人を見つけちゃったから」
 開発局のメンバーとキラは苦笑を浮かべた。その理由はイザークも理解している。
「俺たちが乗ってきたエレカが、入り口にある」
 連絡その他は、それに乗り込んでからでも十分だろう、とイザークが口にすれば、他の三人も頷いて見せた。