「だから、どうしてここで待機をしなければいけないんですか!」 今にも飛び出しそうな表情でアスランがこう叫ぶ。 「アイシャが彼らを迎えに行っているからだよ。行き違いになりたいかね?」 そんな彼をなだめるようにバルトフェルドが声をかけてくる。その瞬間、アスランの体から力が抜けたことに、ミゲルはほっと安堵のため息をついた。 このまま彼が本気で暴走をすれば、止められる自信はなかったのだ。 「それにしても……ここまで食い込んでいられたとは……なめられたものだね、僕も」 だが、その安堵感をバルトフェルドはあっさりと打ち砕いてくれた。 はっきり言って、この男はやばい。 キラと彼、本気で怒らせた場合、厄介なのはどちらな……とまで思うほどだ。 「……まぁ、連中にしてもキラ君とアイシャの双方からの熱烈なアプローチに根を上げたのかもしれないがね」 別方面から洗い出しを進めていたようだし、とバルトフェルドは付け加える。 「そりゃ……確かに焦るな……」 キラだけでも、厄介なのにもう一人、とは……とミゲルは素直に簡単の言葉を漏らす。それも、バルトフェルドが任せたのだからかなり信用がおける相手なのだろう。 だとすれば、この地に潜入しているものだけではなく《ブルーコスモス》そのものの情報すらいずれは手にしていたのかもしれない。 「……何で、それを今までしなかったんだよ……」 ぼそっとディアッカが呟く。 「だよな……そうすりゃ、俺たちの勝ちが見えていたじゃん」 ラスティもその言葉に同意を示している。 「ただし、それは危険と隣り合わせなんですよ。こちらの情報も相手にばれるかもしれない、と言う」 いくらキラでも、それは難しいとしか言いようがないのだ、とミゲルは付け加えた。 「そうだね。今回のような状況でなければ、僕たちも許可を出すつもりなかったよ。キラ君をそんなことで失うことになってはそれこそ大損失だからね」 アイシャにしても同様だ……と彼は笑う。 「正確に言えば、許可を出したつもりはなかったのだがな」 さらにクルーゼがため息まり時にこう告げる。 「あの子の場合、ただでさえ、オーバーワークだ。他にできるものがいるのであれば、手を出すな……とは言っていたのだが」 止められなかったのだ、と口にしながらラウが意味ありげな視線をミゲルへと向けてきた。無意識のうちにそれからミゲルは視線を知らしてしまう。はっきり言って、その共犯を務めていた自覚はあるのだ。 「……もっとも、それに関してはそれなりに配慮されていたようだからな……」 ただし、次はないぞ……と言外に告げられたような気がするのはミゲルの錯覚だろうか。さすがに、それを確認する気力はない。 「アスラン!」 押さえつけていた腕から力が抜けたからだろうか。アスランがさっさとそこから抜け出した。 「どこに行くんですか!」 そのままドアに飛びつこうとした寸前でニコルが彼を捕らえる。 「いくら何でも遅すぎる! 何かあったに決まっているんだ!」 アスランがそれに対してこう叫び返す。 「そんなことは……」 ないだろう、とミゲルが言い返そうとした。 その瞬間である。 室内に何かの警報が響き渡ったのは…… 「……まさか……ここもばれていたなんて、ネ」 銃弾をさけながら、アイシャがため息をつく。 「と言うことは、かなり上の方まで食い込まれていた……と言うことだワ」 本当に忌々しい……と言いながら、それでもしっかりと彼女は反撃をしている。しかも、そのねらいをはずすことはない。 いや、彼女だけではなかった。キラもまた的確に相手をしとめている。 それと比べて自分はどうなのか。 「……落ち着いて……」 そんなシンの耳に、キラの穏やかな声が届いた。 「焦るから引き金を引くときに照準がずれてしまうんだよ」 だから、当たらないのだ……とキラは付け加える。 「ですが……」 「いいから……ここにいるのは君一人じゃないから。まずは、一人ずつ確実に倒すことを考えて」 ね、とキラはさらに言葉を重ねてきた。 「……わかりました……」 確かにそうすべきなのだろう。だが……と思うのだ。 「それにしても、本当に厄介ね……」 だが、キラも焦っているのだ、とこの言葉から伝わってくる。つまり、彼も焦っているのだ、と。あるいは、自分に心配をかけないように虚勢を張っているのかもしれない。 「大丈夫ヨ。今、アンディに連絡を取ったから」 たぶん、助けに来てくれる……とアイシャが告げてきた。 「そこには、みんないるはずヨ」 「だと思いますけど……」 だが、それでは、みんなも危険にさらすことになるのではないか……とキラは言い返す。 「大丈夫ですよ……残念ですけど、あいつらは強いじゃないですか……」 だから、とシンはキラに声をかける。任せてもいいのではないか、と付け加えたのだ。 「そうネ……もっとも、こっちまで被害を受けないように気をつけないといけないのが難点なのよ」 アンディの場合……とアイシャはため息をつく。 「……そうなんですか?」 「見境がなくなるのヨ……誰かさんと一緒だわ」 それも、コーディネイターの共通点なんて思われたくないと、彼女は付け加える。確かに、そう認識されてしまえば笑い事ではないだろう……とシンも思う。だが、それは今言うべき言葉なのだろうか。 「アスランも、何をしでかしてくれるかわからないですね……本気でこの建物が使い物にならなくなる前に終わってくれればいいんですが」 しかし、キラまでそれに乗っているのだから、必要なことだったのかもしれない。少なくとも、余裕を取り戻す……と言うことに関しては、だ。 二人の体からよけいな力が抜けたような気がする。 これも、実戦経験があるからなのだろうか。そう考えたときだ。何か、妙な音がシンの耳に届く。 「……アイシャさん……」 それが壁の向こうからだ、と判断して、シンは彼女に声をかける。 「なぁに?」 「この壁の向こうって、何ですか?」 シンの問いかけに、アイシャもまた外に向けて耳を澄ましたらしい。だが、すぐにその表情が曇る。 「この外は、ホテルの壁ヨ……それを、誰かが壊そうとしているようネ」 つまり、自分たちを最初からここに足止めするつもりだったのか……と彼女は口にした。 「罠にかかってしまった、と言うわけですね」 キラもまた眉を寄せる。だが、それはすぐに別の表情へと変化した。 「危ない!」 そのまま、彼はシンを突き飛ばす。 次の瞬間、彼らの間を遮るかのように壁が崩れた。 アスラン出陣……間に合うのか、彼は……と言うことですね(苦笑) キラたちにはさらに厄介な状況が待ち受けているようだし。そろそろ第二部の山場? 本当はもっと早くに来るはずだったんですけどね、このシーン。 |