「……いったい、誰を狙ったんだろうな……」
 あの場からとりあえず安全と思われるウズミの執務室に場所を移したラスティがこう呟く。
「きっと、キサカさんが突き止めてくれるとは思うけどね」
 それにキラはこう言い返す。
「カガリだけじゃなく、ウズミ様も本気で怒っていたから。直ぐだと思うけど……」
 それでも、自分たちで動けないのは歯がゆいと思う。思うが、仕方がないことだ、と言うこともわかっていた。
「それに……フラガさんか」
 もっとも、彼は現在、自分たちのフォローのために隣の部屋にいる。そして、そこにはウズミの弟でもあるホムラもいるはずだ。
「……しかし、どこから情報がもれたんだろうな」
 ラスティがため息と共にこう告げる。それはキラも不思議に思っていた。
「オーブも安全じゃないって事はわかっていたんだけどね……」
 キサカに連絡を取ったときに、あるいは……盗聴されたのかもしれない。フラガが行ってくれたとは言え、地球軍との繋がりがあれば十分に推測できたはずなのだ。
「やっぱり、極秘で連絡を取れるシステムを作っておかないとだめかな?」
 暇だし、作ってもいいかもしれないな……とキラは付け加える。
「それは賛成だけど……俺が暇になりそうだよな……」
 キラってば、プログラムに夢中になると周囲のことをシャットダウンしてしまうから……とラスティが苦笑を浮かべた。そうなれば、自分がつまらないだろうと言うのだ、彼は。
「……ミゲルもいないしね」
 ふっと思いついてこう言えば、ラスティがあからさまに狼狽したような表情を作る。
「べ、別に……それを言うなら、キラだって同じじゃないか」
 アスランと離れているんだし……と彼は言い返してきた。
「でも、僕たちはずっと離れ離れになっていたし……今は仕方がないから」
 こう言うときにまでわがままを言うことは出来ないだろう。特に、自分の立場であれば……とキラはさらに苦笑を深めつつ口にした。
「アスランが何をしているのか、気にはなるけどね」
 だからといって、今は何もしてやれないのだ。だから、割り切るしかないのだ、とキラは付け加える。
「それもまた真理なんだろうけどさ……」
 自分はそこまで割り切れないよな……とラスティはため息をついた。
「いいんじゃないかな。僕は僕だし、ラスティはラスティだもん」
 立場が違う以上、考え方も違って当然だろう。キラはそう思う。
 第一、それじゃ面白くないし、とも心の中で付け加えた。
「……まぁ、そう言ってくれるだろう……とは思ってたけどさ」
 ミゲルやアスランからの情報を総合すれば、とラスティは言いながら今まで座っていたいすから腰を上げる。そして、そのまま真っ直ぐにキラの側に歩み寄ってきた。
「ただ、さ……これだけは問題だと思うことが一つだけあるんだよな……」
 そして声を潜めるとこう囁いてくる。
「何?」
 別段、自分には何もないんだが……とキラは小首をかしげた。
「……ミゲル、上手いからさ……自分でするの、味気ないんだよな」
 キラは? と彼は意味ありげな口調で問いかけてくる。
「ラスティ?」
 一瞬、キラは彼が何を言い出したのか理解することが出来なかった。
「アスランって、上手いわけ?」
 そうすれば、ラスティはさらに問いかけの言葉を重ねてくる。
「……ラスティ……何が言いたいわけ?」
 さすがにここまで言われてしまえば、キラにもラスティの言いたいことがわかってしまった。
「いや……最後まではしないからさ……付き合ってくれると嬉しいかなって」
 処理を……と彼は平然と口にする。
「殴っていい?」
 キラは思わずこう言ってしまった。
「それは……困るな」
 だけどさぁ……とラスティはさらに言葉を重ねてくる。
「切実な問題じゃん」
「……それは否定できないかもしれないけどね」
 だからといって、自分に振られても困る……とキラはため息をついてしまう。
「ムウ兄さんなら上手いから、付き合って貰えば?」
 こうなれば、彼に押しつけてしまえ、とキラがこう言えば、
「ミゲルがさ……他の連中としたら浮気だけど、キラとなら練習って事でいいって言ったんだよ」
 だからさ……とラスティは素直に白状をした。
「あいつはぁ……」
 理由がわかった時点で、キラは思わず低い声で言葉を口にし始める。
「本人を無視して、何を言ってるんだよ……」
 しかも、自分だけではなくアスランにも失礼なセリフじゃないか……とキラは思う。
「って……まさか、向こうでもアスラン相手にそんなセリフを言っているわけじゃないよね?」
 だとしたら、本気で許せないかも……とキラは口にする。
「さぁ」
 微笑んでいるはずなのに、何故かラスティの表情はさえない。それが自分のせいだろう、と言うことはキラにもわかっていた。
 だが、どう考えても彼に罪はないだろう。
「……第一、僕は上手くないからね……」
 ふっと表情を変えてキラはこういった。
「それはいいって……だから、付き合って?」
 お願い……とラスティは苦笑と共に言葉を口にする。
「合流したとき、ミゲルを殴る手伝いをしてくれるならね」
 こう言えば、ラスティは苦笑と共に頷いてくれた。




ミゲル……何をラスティに吹き込んでいるのでしょうか。それを信じるラスティもラスティだし。本当にこの二人はバカップルですね。
しかも、何だかんだ言ってもキラもOKしちゃうし。アスランの立場は……あるのかな?