「……アスラン達と一緒にいるのは……誰だろうな」
 いい加減、イザークのぼやきを聞くのに飽きたディアッカが顔を上げたとき、知らない顔が視界をよぎっていくのが見える。
「知るか!」
 そんな彼に、イザークが顔も上げずに怒鳴り返してきた。
「……なるほど……そんなことを気にかけている余裕がないって事か」
 本当のことを言えば、ディアッカにしてもそうできる余裕があるわけではない。まして、今は《キラ》が合流したのだ。これからのことを考えれば、彼にある程度及第点をもらえる程度にOSを整えておきたい、と言うところなのだ。
 しかし、とディアッカは思う。
 自分の実力では、この地に適応させるだけで精一杯だ、と言うのが事実。
 後は、キラから意見を聞いて……と考えているのだが、それでは彼の負担が大きくなるだろう。だが、下手に手を出して、取り返しがつかないところまでいってしまってもまずいのではないか、と思うのだ。
「あの方は、オーブからのオブザーバーだそうですよ」
 こう声をかけてきたのはニコルだ。
「何でも、ミゲル達が使う予定の機体のテストパイロットをされていた方だそうです」
 さらに付け加えられた言葉に、ディアッカだけではなくイザークも興味を示す。
「……と言うことは……コーディネイターなのか?」
「そうお聞きしていますが……」
 彼の言葉にニコルはこう言葉を返す。しかし、一体いつの間にこれだけの情報を仕入れてきたのか、と感心するしかない。
「でも、何かアスランの逆鱗に触れるようなことをされたようですね」
 まぁ、原因は想像がつくが……とニコルは意味ありげな笑みを口元に浮かべる。
「ラスティの話だと、キラさん、オーブでまたシンパを増やしていらっしゃったようですし」
 そのうちの一人だろう、あれは……と彼は付け加えた。
「そりゃ、バカだな」
 キラとアスランの関係がどれだけ深いものかわからないくせに口を挟んだのか、とディアッカは言い切る。
「知っている方がおかしいのではないか?」
 キラはほとんどオーブ本国に足を運んだことがないと言うし、月にいたのであれば、アスランのことを知らないはずがない。つまり、彼はオーブ本土で育ったと言うことだろう。それは、カガリと同じように戦争を捕らえていると言うことではないだろうか。
 イザークは忌々しさを隠せないという口調でこう告げる。
 だが、逆に言えばオーブではまだ、コーディネイトが行われていると言うことでもあろう。もちろん、地球本土ではないだろうが。それでも、コーディネイトをされ、本土で普通に育つことを周囲からも認められている。
 そして、ある程度の立場になることを許されているのではないか。
 こう考えれば、うかつに切り捨てることができないというのは事実だ。
「本当、侮れない国だよな……」
 ディアッカは小さな声でこう呟く。
「そうですね。まぁ、隊長やキラさんを見ているだけでも、十分にわかることでしょうし」
 オーブという国であれだけ才能をのばす事ができるのだから、とニコルもうなずいた。
「あの二人が優れているのは……コーディネイターだからだろう?」
 しかし、イザークだけはわからないらしい。こんなセリフを口にしてくる。
「だが、それを隠すことなく、二人とも自分の得意分野をのばしている。そんなことが本国以外で許されていると思うか?」
 少なくとも、地球連合では認められないだろう。だが、あの二人はオーブで育ったにもかかわらず、自分たちでも目を見開くほどの実力を見せつけているではないか。
 ここまで言えば、さすがのイザークも二人が言いたいことがわかったらしい。
「まぁ、否定できないな。これらも、オーブの力があったからこそ、作られた機体だろうし……」
 あれも、キラがミゲル達に使わせようと考えたのならば、かなりの性能を持っているのだろう、とイザークは口にする。
「だが……」
 不意に口調を変えるとイザークは眉を寄せた。
「そのせいで地球軍に利用された、と言うことも否定できまい」
 もっとも、それを事前に察知できたからこそ自分たちがこの機体を使っているのだが……と彼は付け加える。
「そう、だな……」
 本当にやっかいなことだ……とディアッカもため息をつく。
「……そのやっかいごとが……ここまで及んでいなければいいのですが……」
 ニコルのつぶやきが、三人の中に不安を呼び覚ました。





久々に三人を書いたような気がします。好きなのですが……なかなか出してやれませんね、彼らも。
ついでに、オーブという国に対する認識を。