「……あれは……バクゥじゃないよな?」
 目の前にいる機体を見ながら、アスランが呟く。
『たぶん、あれはラゴゥだ。バルトフェルド隊長の専用機、らしいぞ』
 こう言葉を返してきたのはミゲルだ。
『しかも、あれはキラがバルトフェルド隊長のためにOSその他を手がけているからな。かなりのスペックだと言って良いな」
 おそらく、バクゥの倍のスペックだろう。ミゲルはそう付け加えた。
「そうか」
 スペック的には自分たちが乗っている機体の方が優れているだろう。それでも、この地にあったOSに調整が出来ないのだから、それすらも宝の持ち腐れだと言っていい。
「……俺に、もっと実力があれば……」
 これの本来の力を引き出すことも簡単だろう。キラにだけ、あれだけ重荷を背負わせなくてもいいのではないか。そう思ってしまう。
「と言っても、仕方がないか」
 今それを愚痴っても仕方がない。自分に出来ることを最大限行うしかないだろう。アスランは相違式を切り替えることにした。
『まぁ、それに関しては俺もお前のことは言えないからな』
 これの調整が終わっていない以上、とミゲルは苦笑混じりに言葉を返してくる。
『それでも、お前はまだあいつらよりましだしな』
 さらに付け加えられた言葉が指しているのは誰のことか聞き返さなくてもアスランにはわかった。
「そういうなら、ミゲルもだろう? 俺達と違って、ミゲルが使っているのはまったく初めての機体じゃないか?」
 それなのに、ほぼ調整を終え、出撃こそ許可はされないとは言え戦場にいることを許されているのだから、とアスランも言い返す。
『……まぁな……』
 だが彼から返ってきたのは、微妙な言葉だ。
「ミゲル?」
 どうしたんだ、とアスランは聞き返す。
『……他の連中には内緒にしておいてくれるか?』
 一瞬ためらった後、ミゲルがこう口にした。
「そうして欲しい、と言うならな」
 彼のことだから、そんなにとんでもないセリフを言うことはないだろう。そう思ってアスランはこう言い返した。
『実はさ……キラから、貰ってたんだよな……俺用に調整して貰ったこいつのOS』
 ずるだとはわかっていたが、隊長のためには仕方がない……と判断したのだ、と彼は苦笑混じりに告げてくる。
『それをこれの本来のOSと入れ替えた後、ロックするのに手間どっちまってな』
 あははははは、と笑うんじゃない……とアスランは心の中で呟く。そんなことを、ニコルはともかく他の二人にばれたらどんな騒ぎになるんだ、と本気で頭が痛くなってしまう。
 しかし、とも思う。
 キラの判断は間違っていない。
 万が一のことを考えれば、クルーゼ隊のメンバーの中に直ぐに動ける存在が必要だったはずだ。
 そして、自分たちの中でその役目を負うべきなのは、ミゲルだろう。
 自分でないのは悔しいが、それは仕方がないことだ。そう考えることはアスランにも出来た。
 でも、とも思う。
「……内緒にしておく代わりに、何をしてくれるんだ?」
 冗談めかして、こう言い返す。
『そう言うところは本当にそっくりだよ、お前ら』
 そうすれば、しっかりとため息混じりの言葉が返ってくる。
「当たり前だろう。イザーク達にばれれば、俺まで恨まれるに決まっているんだから」
 それだけならまだしも、イザークならさらに突っかかってくるだろう、とアスランは付け加える。
『……否定できないな、それは……』
 ミゲルも、その状況が想像できるのだろう。ため息をついたのがわかった。
『よ〜し! 俺様がお前らのために、エッチのテクニックを教えてやろうじゃないか』
 だが、直ぐに明るい声でミゲルはこう言い返してくる。
「ミゲル!」
 それに、思わず怒鳴り返してしまうアスランだった。






ようやく更新ができました。というわけで、ミゲルもやっぱりラスティと同じ思考の持ち主だ、ということで。