この照らす日月の下は……

BACK | NEXT | TOP

  48  



 ザフトの三人はまだ紳士的だったとわかったのはそれからすぐのことだ。
「……地球軍があんなだったなんて……」
 強引にシェルターを追い出されてフレイがショックを隠せないようにつぶやく。
「パパに言いつけてやるんだから」
 さらに彼女はこう付け加えた。
「フレイのお父さん?」
「……大西洋連邦の政務次官、だったかしら。だからとっても忙しいんだって。家はママがいないから、おばあちゃんのうちがあるオーブに住んでたの」
 一応、籍もオーブにある。フレイはそう続ける。ただ、どこか居心地が悪そうだ。
「いいんじゃないか。地球連合のがちがちの教育よりもオーブで学んで広い視野を持つのは」
 カナードがそう言いながら小さく笑みを浮かべる。それがフレイを安心させるためだというのはわかった。それもきっと彼女がキラの友人だからだろうと言うことも、だ。
「もし向こうに戻ったとしても、お前ならコーディネイターを道具扱いしないだろう?」
「当然よ」
「なら、それで十分だ」
 事実、カナードの一言でフレイの表情が和らぐ。
「……それよりも、どこかに避難しないと」
 どうしよう、とトールがつぶやいた。
「兄さん……」
「不本意だが仕方がない。サハク所有のシャトルを使うか」
 問題は、と彼はため息をつく。
「モルゲンレーテの工場内にあるだが、外れだから破壊されていないはずだ」
 万が一のことがあっても、あそこならば何とでもなる。そう続けた。
「地球軍の所業に関してはサハクから正式に抗議させてもらうしな」
 記録はとってある。そう言って笑うカナードはさすがだと思う。
「フレイ、大丈夫? 歩ける?」
 ともかく、少しでも早く安全な場所に移動しなければいけない。追い出されるまでの時間とは言え多少休息をとれたので、多少はマシだが、と思いながらキラは彼女に声をかけた。
「大丈夫よ」
 フレイがそう言うが、今ひとつ不安がぬぐえない。
「ならいいけど……無理はしないでね」
「そうよ。いざとなったら男どもがなんとかするわ。カナードさん以外の」
 キラの後にミリアリアもこう言って笑う。
「つまりそれは俺たちって事か?」
「他にいないだろうな」
 トールとサイが肩を落としながらつぶやいている。
「頑張れ」
 キラがそういったときだ。そう離れていない場所から銃声が響いてくる。
「全員、適当なところに隠れていろ」
 即座にカナードが指示を出した。
「兄さん!」
「任せておけ。お前達は俺が声をかけるまで顔を出すな」
 いいな、と強い口調で言われる。
 その言葉に逆らうことは最初から考えていない。周囲の者達を促してキラは彼の指示に従う。
「僕たちが余計な行動をとると兄さんの邪魔になるから」
 友人達にそういえば彼等も納得してくれる。
 だから、キラは知らなかった。
 この先で自分の知人が銃口を向けられていたことを。


BACK | NEXT | TOP


最遊釈厄伝