この照らす日月の下は……

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 カガリがその話を聞いたのは偶然だった。
 だが、それが事実であれば厄介なことになる。そう判断をして自分の目で確認することにしたのだ。
 もちろん、自分の立場上、それが許されるかどうかは理解していた。それでも、知ってしまった以上、行動する以外考えつかなかったのだ。
 何もなければ、その時はキラの顔を見て帰ってくればいい。
 そんな風にどこか気楽に考えていたことは否定しない。むしろ後者の方が目的としては大きかった。
 しかし、だ。
 現実は違った。
 自分は本当に甘やかされていたのだ。
 目の前の光景は自分が想像もしていなかったものだ。
「……何で……」
 中立であるオーブで地球軍の秘密兵器が開発されているのか。
 そう考えた瞬間、脳みそが沸騰したような感覚に襲われる。
「いったい誰が……」
 父とは考えたくない。
 サハクは当主がコーディネイターだから除外してもいいだろう。
 残る三家の中で一番怪しいのは、当然セイランだ。
「あいつら!」
 今すぐでも本土に戻って問い詰めてやる、とカガリが踵を返したときだ。不規則な振動が足下から伝わってくる。
 いや、それだけではない。悲鳴のような声も耳に届いた。
「……まさか……」
 そんなはずはない。
 だが、銃撃音がその後に続いた以上、認めないわけにはいかないだろう。
 今、このコロニーは襲撃されている。地球軍の施設がある以上、おそってきているのはザフトだろう。  そう判断した瞬間、カガリは唇をかみしめる。
 確かにここには地球軍の秘密工場があった。だが、あくまでもここは民間人が多く住む場所なのだ。ここをふるさとにしているものだっている。
 それを壊そうとする奴らは許せない。それが誰であろうとだ。
 しかし『お前に何が出来るんだ』問い割れですぐに言葉を返せない。
 それでもアスハの一員として何かをしなければいけないのだ。
「……管理室に行けば外に連絡が取れる。軍に救難要請も出来るはずだ」
 少しでも被害を減らすにはそれしかない。そう考えて移動を開始する。
 だが、結果として彼女は目的地にたどり着けなかった。
 そのための通路が戦闘で破壊されていたのだ。
 何よりも、眼下でけがをしている人間がいる。その人物が身に纏っているのはモルゲンレーテの作業着だ。
「ったく」
 セイランにつながっている上はともかく、下の技術者達は指示されたことをやっていただけではないか。それなのに、と思いながら足下に落ちていたがれきをつかみ上げる。そして思い切りザフト兵へと投げつけた。
「誰だ!」
 そう言いながらザフト兵が視線を向けてくる。その隙を逃さずにモルゲンレーテの作業着を身につけた人間が腰のポーチから銃を引き抜く。そしてそのまま発砲した。
 それに恐れをなしたわけではないだろう。おそらく別の理由からザフト兵は引いていく。
「大丈夫か?」
 ザフト兵が十分遠ざかったと判断をしてカガリはそう問いかけた。
「大丈夫よ。でも、どうしてあなたはここに?」
 それで相手が女性なのだと初めて気付く。
「シェルターが見つからないから、管理室に行って救難信号を出そうかと」
 あそこならば一人用の簡易ポッドもあるはず。そう言い返す。
「無理よ」
「何故だ?」
「管理室はもうないの。この先にあるのはがれきだけよ」
 今までの戦闘で破壊された、と彼女は言う。それでは確かに不可能だ。
 では、後はどこに行けばいい。
 ここからであれば、一番近いのは宇宙港か。そこまでの移動手段はあるだろうか。なかったとしてもなんとかしなければいけないわけだが。
「わかった。では、私は別の場所に避難をする」
 そう言って方向を変えようとする。
「手伝ってくれるならばシェルターの近くまで乗せていってあげられるわ」
 こう言いながら、彼女は足下を指さす。そこにはシートをかぶせられたキャリーを引いたトレーラーがあった。


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最遊釈厄伝