「あっ……」
 キラの指がシーツをきつく握りしめている。
「こらこら」
 どうせなら、俺に掴まりなさいって……と言いながら、その指をそっとほどかせた。そして、そのままフラガは自分の背中に彼の腕を回させる。
「ムウ、さん……」
 キラがうっすらと瞳を開いてこう呼びかけてきた。
「こっちの方が俺も楽しいからな」
 キラが与えてくれるなら、痛みも心地よい……と囁いてやれば、彼の頬がさらに赤くなる。そのままふいっと横を向く。
 目の前に現れた耳たぶも、やはり真っ赤に染まっている。
 フラガはそれにそっと歯を立てた。
「……ひぁっ!」
 それだけでキラの体が跳ね上がる。
「いい反応だな」
 そう言うところも可愛いんだよな……耳に直接吹き込む。同時に、そっとその肌をくすぐってやった。
「あっ……あぁっ」
 キラの唇から次々と甘い声が飛び出す。
 同時に、背中に回された指先に力がこもる。そのたびに爪が肌に食い込んだ。
 それがフラガには心地よい。
「いいこだ」
 久々にこうして肌を重ねているからだろうか。キラはいつもよりも感じやすいような気がしてならない。
 もっとも、自分もそうなのだから、お互い様か……とフラガは小さな笑いを漏らす。そして、そのままそっと彼の首筋に口づけた。
「……んぁっ……んんっ!」
 その刺激も辛いのか。嫌々をするようにキラは首を横に振ってみせる。しかし、それが拒んでいるわけではないということは当然わかっていた。
「やめるか?」
 それでもキラのねだる声が聞きたくて、こう問いかける。
「……やっ……」
 やめないで……と即座にキラは言い返してきた。
 それだけではない。
 ほっそりとした両足をフラガの腰に絡めてくる。
「やめないよ」
 くすりと笑いながら、少しだけ体を起こした。そうすれば、つられてキラの腰が浮き上がる。そこに手を滑り込ませた。
「んぁ!」
 腰の丸みを確認するように手を滑らせれば、キラの唇から甘い声が漏れる。
「可愛いよ、お前は」
 そのまま素直に感じていろ……と付け加えると、今度は指先を双丘の奥へと滑らせた。そして、まるで待ち望んでいるかのように収縮を繰り返しているそこを指の腹でなでる。
「あぁぁぁぁっ!」
 今までよりも甘い声がキラの唇から飛び出した。
 それに、フラガの雄も反応をする。しかし、すぐにつながることはできない。そんなことをすれば、キラを傷つけてしまうことはわかっていた。
「力、抜いていろよ?」
 はやる気持ちを抑えて、フラガはゆっくりとそこに指を侵入させる。
「……ひっ……」
 その瞬間、キラの腰が跳ね上がった。
 反射的に内壁が指を締め付けてくる。だが、すぐにキラは体の力を抜こうと大きく深呼吸を繰り返し始めた。
「そうそう。そのままいいこにしていろ」
 キラの額に軽くキスを落とすとゆっくりを指を動かし始める。
 それがキラの弱みをかすめるたびに、彼の爪が背中に食い込んできた。それが感じていることを教えてくれる。
 だが、やはり潤いを与えられていない場所はいつまで経ってもきつい。
「……キラ……少し離れるぞ」
 舐めてやってもいいのだが、それでは時間がかかりすぎる。あちらから持ってきた荷物の中にそれも入れていたはず。しかも、誰もチェックをしていないのだからまだそこにあるはずなのだ。
「でないと……お前を傷つけかねない」
 それだけはいやなのだ……と囁く。
「いい、ですから……」
 だから早く……とキラはねだってくる。その言葉は本当に嬉しいのだが、とフラガはため息をつく。
「でも、俺がいやなんだよ」
 でないと、治るまで我慢しなければいけなくなるではないか……と付け加える。それに、あの三人の無言の抗議は結構きついんだぞ、とも。
「だから、な?」
 この言葉に、キラはフラガの腰に回していた足を外す。
「いいこだ」
 音を立ててキスを贈ると、フラガはそっとキラから体を離した。そして、手を伸ばしてベッド脇に作られた棚から目的のものを取り出す。
「冷たいが我慢しろよ」
 そう言いながら、手のひらにたっぷりとオイルを落とした。自分の体温で暖めると、二人がつながる場所へと塗り込めていく。そのたびにキラは鼻にかかる声を漏らした。
 それがフラガの中心の熱を煽ってくれる。
 深く深呼吸を繰り返すことで何とかそれを散らす。それでも、キラのそこをほぐす仕草が少しだけだがあらっぽくなったのは否定できない事実だ。
「……ムウさん……ムウ、さん……」
 フラガの刺激を受け止めるたびにキラの口から彼を呼ぶ声が飛び出す。
「いいこだ、キラ」
 ここにいる……と言いながら、フラガはさらに指を増やしていく。
「あっ……あん……」
 いい……とキラがうわごとのように言葉を口にしている。それが次第にかすれ始めたとき、ようやくフラガはそこから指を引き抜いた。
「あっ……」
 今度は、物足りないというような声がキラの唇からこぼれ落ちる。
 そんなキラの体をフラガは抱き起こした。そして、そのまま自分の熱を入り口に押し当てる。
「力を抜いていろよ?」
 こう言えば、キラは小さく頷いて見せた。
「いいこだ」
 そのまま一息にキラの体をその上へと落とす。
「あぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
 甘い悲鳴が室内に響き渡る。
 フラガの雄を熱い内壁がきつく締め上げてきた。それでも、そこは柔軟に彼の形を包み込んでいる。
 荒い息をついてフラガの胸に体を預けてきているキラの背中をフラガはそっとなでた。そして、キラの呼吸が整うのを待つ。
「……ムウさん……」
 キラがそっと彼の名を呼んだ。それが何の合図であるのかフラガも知っている。
「動くぞ……」
 言葉と共にキラを突き上げ始めた。
「あっ……あぁっ!」
 二人の熱が次第に上がっていく。そのまま、彼等は吐息を共有し続けた。