「……言いたいことはそれだけか、ユウナ……」
 そのころ、カガリはタケミカズチの中でユウナをにらみ付けていた。
「お前達がしでかしたことが、オーブの国民を危険にさらした……という自覚はないのか!」
 ナチュラルだけではなく、コーディネイターだってオーブの民だ。
 そして、そんなコーディネイター達がいてくれたからこそ、オーブは先の戦いの傷跡をいやし、再び今の繁栄を築くことができたのに。それなのに、自分を幽閉したあげく、彼等を追い出しにかかったのは《セイラン》ではないか。
「……だからといって、あのままでは地球連合に……」
 国を焼かれていたではないか、とユウナは言い返してくる。
「そうさせないための準備はしていた。それに……軍人達は、貴様のコマではないんだぞ!」
 それがわからなかったからこそ、軍人達は彼の言葉に絶対服従をしなったのではないか。カガリはそう考える。
「……ともかく、貴様の知っていることを全て話してもらおうか!」
 特に、あの二人に関することを。
 カガリはそう言って、どう猛な笑いを浮かべた。その瞬間、彼が小さく体を震わせる。
「その後で、きっちりと裁かせてもらおう」
 国を混乱に陥れた責任を取ってな……とカガリは付け加えた。

 予想どおり、と言うべきなのだろうか。
 前方から響いてきた声に、ハイネは思わずため息をついてしまう。
「わかりやすいと言えば、そうなのかもしれねぇけどな」
 しかし、それが最悪の結果につながったらどうする気だったんだ……と呟く。そして、そのまま最後の距離を一息に駆け抜けた。
「だから、議長のご命令だ、と言っているでしょう!」
「ここには、ネオ以外は入れないんだよ!」
「キラ、帰ってこなくなる!」
「あきらめろよな!」
 シンの他に三人分の声が聞こえる。いったい誰なのか……と思えば、地球軍のパイロットスーツらしきものを身につけた少年達が確認できた。
「いつの間に仲良くなったんだか」
 それとも《目標》に関係しているのだろうか。
 どちらなのかはわからないが、ありがたいことは事実だ。そう判断をするとハイネは口を開く。
「何をしているんだ、アスラン・ザラ!」
 同時に、背後から彼の首を絞めるように腕を回す。もっとも、パイロットスーツの襟元が邪魔をするから、本当にしめることは不可能だが、それでも動きを止めるには十分だろう。
「邪魔をするな!」
 伊達や酔狂で《FAITH》の地位を得ているわけではない。
 確かに、ラクスやバルトフェルドのことを考えれば、不本意でも引き受けなければいけなかった。そして、それはデュランダルにしても同じ事だったとは思う。
 だからといって、与えられた地位にあぐらをかいていたつもりはない。それに見合うだけの働きをしている自信はある。
「邪魔? 命令違反をしている奴に言われたくないね」
 前の大戦の英雄だろうとなんだろうと、何とか押さえ込めるのはそのせいだ。
「議長は、自分たちが確認するまで目標には誰も会わせるな、触れさせるなと命令されている。それを無視しようとしている奴が何だって?」
 え? と聞き返しながら、ハイネはアスランを押さえつけている腕にさらに力をこめる。
「シン!」
 ついでとばかりに、側にいる少年に声をかけた。
「はい」
「かまわないから、こいつ、拘束しちまえ!」
「……はい?」
 ハイネの言葉にシンはすぐに反応を返してこない。それは当然だろう、と思う。いくら命令違反をしているとはいえ、上官を拘束するというのは彼の想定の範囲外に決まっている。
「いいから! このままだと取り返しのつかない結果になるかもしれないんだぞ!」
 責任は自分が取る! とさらに厳しい口調で怒鳴りつけたときだ。
「これで、後ろ手に拘束すりゃ、いいか」
「足は、どうする?」
 こう言いながら、地球軍の二人が真っ先に動き出した。
「……いいと思うけど、念のために拘束しとけ」
 こう言いながら、アスランを押さえつけにかかる。もっとも、本人が暴れているせいでうまくできないようだ。
「ステラ! キラのためだ。手伝え!」
 脇にいた少女が動き出したのを見て、シンもようやく行動を開始する。
「……お前ら……」
 あるいは、この三人は地球軍のためではなく大切な相手のためだけに動いているのだろうか。
 だとするなら、自分と同じ立場かもしれないな。
 なら、いざというときには彼等の擁護をしてやろうか……などとハイネは考えていた。