めまぐるしくモニターの内容が書き換わっていく。だが、それを実行に移す時間があるか……というとかなり問題だ。 「……あまり、無理をするな……」 何よりも、これだけ多くのデーターを処理していれば、キラの負担が大きいと言うことは否定できない。 しかし、それを止めることもできないのだ、今の自分は。 その事実がこれほど悔しいと思ったことはない。 自分はこうしてシートに座ったまま戦闘を眺めている人間には慣れないのだな、と。やはり、自分の機体に乗り込んで敵を撃破する方が性に合っている……とは思う。 だが、今の自分の立場ではそれは許されていない行為だ。 「MS隊の状況は?」 忌々しさを押し隠しながら、フラガはこう口にする。 「ウィンダム隊は、既に半数が戦闘不能です!」 その言葉に、仮面の下でフラガは眉を寄せた。 「カオス、アビス、ガイアは、それぞれ敵機と交戦中です!」 それはわかっている……とフラガは心の中で呟く。 「オーブは?」 あいつらがもう少し使えていれば、かなりましなのだが……と思いながら、フラガは問いかける。 「動きは見られません」 これはあてにできないな……とフラガは小さくため息をついた。 「無事に生き残れたら、それなりの責任は取ってもらわないとけないだろうな、あいつには」 その前に、生き残ることの方が重要だが……と呟く。その瞬間だ。 「ガイア、少破!」 戦闘には支障がないとは思いますが……と報告が飛んでくる。 しかし、時間の問題だろう。 どうさせるべきか……とフラガは考えた。 「ステラ! 聞こえているな?」 『ネオ?』 「無理はするな。いざとなったら、ガイアを敵機にぶつけて自爆コードを打ち込め。もちろん、ちゃんと脱出するんだぞ?」 せめて、あの新型だけは何とかしておかなければ、後々が困る。だからといって、彼女を失うわけにもいかないのだ。そう判断して、フラガはこう指示をする。 『うん、ネオ』 「その後は、キラの所に行け! 場所はわかっているな?」 自分が行くまで、決して誰も部屋の中に入れるな……とフラガは付け加えた。 でなければ、自分は《キラ》を永遠に失うかもしれない。 『わかった。言うとおりにする』 フラガのそんな内心を知っているわけではないだろう。だが、ステラはすぐにこう言い返してくる。 『だから、キラが起きたら一番最初に、抱きしめてもらって、いい?』 「そのくらいならな。かまわんさ」 彼女らしい可愛らしいお願いに、フラガの口元にも笑みが浮かぶ。しかし、それはすぐに引き締められた。 ガイアの装甲をインパルスのレーザーが再び切り裂いた。 「さっさと撃ちろよ!」 そう叫びながら、シンはさらに攻撃を加えようとする。しかし、ガイアは変形をするとそのままインパルスへと組み付いてきた。 その瞬間、インパルスのセンサーがガイアのコクピット部分を映し出す。 どうやら、先ほどの攻撃でハッチ部分が損傷していたらしい。パイロットの姿が確認できた。 「女の子?」 確かに、ザフトでも女性のパイロットはいることはいる。だが、地球軍のパイロットが自分たちとそう変わらない年齢だと言うことはあり得ない、とアカデミーでは習ったのだ。 しかし、現実として目の前にいるパイロットは自分と同じ年齢にしか見せない。 無意識のうちにシンはパイロットの顔を拡大していた。 「……嘘、だろう……」 次の瞬間、彼の瞳が信じられないというように見開かれる。 「ステラ……」 思わずこぼれ落ちた呟きは、彼女の耳には届かない。 インパルスの動きが止まった瞬間、彼女はガイアで抱きつくように機体を接近させてきた。 「危ない、ステラ!」 このまま海中に落ちてしまえば、自分はともかく彼女の機体の損傷度では命が危ないのではないか。そう思える。 「ステラ、ダメだ!」 守ると言ったのに…… 彼女が何者だったとしても、自分が守るとそう約束したのに。 それなのに、どうして自分たちが戦わなければいけないのか。そう思う。 これが戦争だ、と言われてしまえばそれまでかもしれない。それでも、守りたい相手を撃破できるはずがない。 では、どうしたらいいのだろうか。 「ステラ!」 俺だ、とシンは叫ぶ。 そんな彼の方に、ステラは一瞬視線を向けた。 しかし、バイザーのせいで、彼女の表情を確認することはできない。それがもどかしい、都心は思う。 「ステラ! 頼むから、戦いをやめてくれ!」 俺が守るから……とシンはさらに言葉を重ねる。 『ダメ!』 しかし、ステラから返ってきたのはこんなセリフだ。 『ステラが戦わないと、ネオとキラが、死ぬの!』 だから、戦いをやめるわけにはいかない……と彼女は叫ぶ。 「ステラ!」 そんな彼女が、コクピット内で何か操作をしている。次の瞬間、ガイアがインパルスごと海中へと飛び込む。 「ステラ!」 何を……とシンは思う。 そんな彼の目の前で、ステラが機体を捨てて脱出したのがわかった。 「ステラ!」 一瞬遅れて、彼の目の前を閃光が包み込む。それの意味がわからないわけではない。それでも、シンは衝撃を隠せなかった。 |