「何なんだよ、こいつらは！」
　ウィンダムを撃ち落としながら、シンはこう叫ぶ。
　その最中に確認した所では、セイバーは現在、カオスと交戦中のようだ。
　あれでは彼は動けないだろう。しかし、自分は……と思ったときだ。
「……あれは……」
　一隻の戦艦の上にガイアが確認できる。と言うことは、あれが連中の母艦なのだろうか。
「って言うことは、あれか？」
　目標があの艦に乗り込んでいると言うことだろう。
「沈めずに制圧って……あぁ、ブリッジを抑えてしまえばいいのか」
　インパルスの砲門をブリッジに向けて降伏を迫ればいいのではないか、とシンは判断をする。もっとも、そのためにはガイアが障害になることは事実だ。
「やってやるさ！」
　できないなんて言えば、アスランにバカにされるに決まっている。他の誰に何を言われてもいいが、アスランにだけはいやだ。できることなら、あいつの鼻をあかしてやりたいのに……とシンは心の中で呟く。
　その思いのまま、彼はガイアへとビームライフルの照準を合わせようとした。
「この角度じゃ、船体にまで損傷を与えてしまうか」
　厄介だな、とシンは思う。
　撃破することは簡単なのに、何かを守ろうとするのは難しい。
　それでもやらなければいけないのだ……と言うことはわかっている。
「仕方がない！」
　どうやら、ガイアは海中戦も空中戦もできないようだ。それならば、海中に落としてしまえばいいだろう。
　そのくらいなら、船体も保つに決まっている。
「どけぇ！」
　叫びと共に、シンはガイアへとインパルスを接近させた。

「……こいつ……」
　それが、あの日奪取された機体なのだ……と言うことはアスランも覚えていた。
「ったく」
　しかし、予想以上に強い。
　地球軍の量産型に比べて機体の性能が上だ、というのは事実なのだろう。しかし、それとパイロットが機体を使いこなせるかどうかはまったく別問題であるはずだ。
　確かに、フラガのようにナチュラルでありながらコーディネイターと同等の反射神経を持ったものはいる。しかし、それはそう多くはないはずだ。
　何よりも、目の前の相手は彼ではない。
　さほど多くはないとは言え、彼の動きは目にしたことがある。それから判断すれば、操縦している相手の癖は彼のそれではないのだ。
「こいつ……あの時の奴か……」
　よく見れば、キラの癖の片鱗が見える。
　それは、アーモリーワンで見たものと同じだ。
「だとすれば……キラが近くにいるって事だな」
　やはり……とアスランは心の中で呟く。
　なら、さっさと終わらせてキラの元に行かなければいけない。それこそ、他の連中の邪魔が入らないうちに、だ。
　自分が一番最初にキラを手に入れてしまえば……とアスランは暗い笑いを漏らす。他の誰にも触れさせないまま隠すことができるのではないか。
　それが、フラガと同じ行動だとアスランは気づいていない。
「今、迎えに行くからね」
　そうしたら、もう離さないよ……と記憶の中のキラの面影に向かってアスランは囁く。
「俺と一緒にいる方が、キラには幸せなんだ」
　だから……という彼の瞳には《幸せ》だった頃の自分たちの姿しか映し出されてはいなかった。

「……バズーカーを！」
　レイはブリッジに向かってこう叫ぶ。
『レイ？』
「海中の中の奴を止める！　でなければ、いい的だ！」
　既に、味方の艦隊の半数は沈められたか航行不能に陥っていた。ここでミネルバまでそのような状況に陥れば、ザフトは負ける。それは何においても避けなければいけない事態だ、とレイは思う。
　だから、少しでも有効だと思う方法があるのであれば実行しよう、と考えるのだ。
「早くしてくれ！　このままではミネルバも危ない！」
　以前、行った人間がいるのであれば、自分にできないはずはない。それだけの実力を自分は身につけている、という自負もレイにはある。
『わかりました。ただ、射出は難しいそうですのでデッキまで取りに行ってください』
　調整を終えたのだろう。メイリンがこう指示を出してきた。
「わかった」
　確かに、ビームライフルや何かと違ってバズーカーは火薬を使う。誘爆の可能性がある以上、少しでも危険は避けた方がいいに決まっている。
　だから、もっともな指示だとは思う。
　それに下手に反論をして時間を無駄にはしたくない……とも考えるのだ。
「ルナマリア？」
　一人でも大丈夫だな……とレイは彼女に向かって問いかける。
『誰に向かっていっているのよ！』
　そうすれば、彼女らしいセリフが返ってきた。
「では任せる。ミネルバを沈めるなよ？」
　ザクを移動させながらレイはさらに言葉を重ねた。
『任せておいて！』
　ルナマリアの頼もしい言葉を聞きながら、レイはバズーカーを掴んだ。そして、そのままザクで海中へと飛び込んだ。
「さて……問題は俺がこの状況に慣れる時間があるかどうか、だな」
　相手がそれを許してくれるだろうか。
　そう思った次の瞬間、アクアブルーの機体が接近してくるのがわかった。

「さて……俺もあいつの所へ行くか」
　ウィンダムを撃破したところでハイネはこう呟く。
「シンの方は心配はいらないだろうが、アスランが何をしでかすかわからないからな」
　それに、バルトフェルド達が間に合うとは限らないのだ。
「シン達じゃ、あいつを止められないだろうしな」
　立場的に……と呟く。
「こっちは、何とかなりそうだしな」
　万が一の時の彼等の怒りを考えれば、めちゃくちゃ恐い。そう判断すると、ハイネはグフを敵艦へと跳躍させる。
「これは行きがけの駄賃かな」
　そのまま、そのブリッジへとヒートロッドをたたき込んだ。