その言葉は、ノイズの中からフラガの耳にも届いていた。
「……坊主……」
 強くなった、とフラガは思う。
 自分が最初に彼を見つけたときは、本の些細な物音にもおびえていたのに。
 そして、再会してからも彼は、すぐになく子供だった。
 それが変わったのはいつからだろうか。そう考えれば、あの時だろうとは思う。
 しかし、それはまだ彼の目から見れば危なっかしいとも思えるものだ。キラの強さは、間違いなく支えてくれるものがいてこその物だろう。そして、その中でも自分が一番だ、と彼は思っていた。
 だから、どうやっても生き抜かなければならないのだと。フラガはそう信じていた。
 そして、今度こそあの子供を自分の手で幸せにしてやろう。
 彼は自分の手を取ってくれたのだから、と。
 しかし、それも状況次第だ。
 自分一人と、大勢の仲間たち。
 キラの未来にとってどちらが重要か……
 それを比較したわけではない。
 ただ単に、気がついたら身体が動いていた、と言うだけだ。
『ムウさん!』
 悲鳴のようなミリアリアの声。いや、これはマリューかもしれない、とフラガは思う。
「大丈夫だ!」
 口ではこう言いながらも、フラガは自分の命がここまでだ、と理解していた。そして、キラに悪いな、とも思う。
 メールなんて苦手だ。
 第一、戦闘中にパイロットに送るそれが相手をどれだけ危険にたたき落とすかもわかっている。それでも、この言葉だけはキラに伝えなければいけない。自分を失って生きる《恋人》に……
『ムウさん、もう!』
 よけて、と言われて、今更よけられるわけがない。
 第一、クルーゼとの戦いでストライクは限界まで傷ついていたのだ。こうしてドミニオンから発射されたローエングリンをシールドで遮断している事すら奇跡だと言っていい。
「やっぱ、俺って不可能を可能に……」
 する男だよなァ……と言う言葉は最後まで口に出す事は出来なかった。
 ストライクの外装がゆっくりと溶けていく。
 そして、フラガの身体を光と爆炎が包み込む。
 その光の向こうで、キラがとっておきの笑顔を向けている様な気がしたのは、フラガの気のせいだったろうか。それとも、最後の瞬間に《神様》とやらが死に逝く自分を哀れんで与えてくれた慰めなのか。
「キラ……」
 愛していた、と……そして、いつまでも側で見守っていくから……例え、魂だけになっても……と。
 フラガは声にならない声でその《キラ》に向けて呼びかけた。

 そのまま、彼の命は宇宙に還り、キラを包み込むはずだった……



ネオキラです。と言いつつ、フラキラです。
すみません、これは以前オフで発行した『いつか君と……』の続編になってしまいました。と言うか、その設定が捨てきれない私って……と言っても、こちらだけでも大丈夫なようにがんばりたいとは思います。
つなげるつもりは全くなかったのになぁ(^^;