「何故、お前がここにいるんだ?」
 ユウナ・ロマ・セイラン……とカガリは問いかける。
「カガリィ、僕は、君を助けようと……」
「拉致しようと、の間違いじゃないのか?」
 彼の言葉を遮ってカガリがそう言った。その口調は険しいものだ。
「お前のせいで、今度はオーブとプラントの間で戦争が起きかねないんだぞ!」
 それがわかっているのか、と彼女はさらに続ける。
「だって、カガリィ!」
「だってもあさってもあるか!」
 言葉とともにカガリが思いきりユウナを蹴飛ばした。低重力のせいか、彼の体は真っ直ぐに壁へと向かっていく。しかし、カガリは平然と仁王立ちに戻っていた。
「流石だね、カガリ……」
 ザフトの人間でも、この状況でバランスを崩さないのは難しいのではないか。それに、彼女は滅多に宇宙空間にでたことはなかったはずなのに、一体どこで身につけたのだろうか。そんなことも考えてしまう。
「お前の今回の行動も、きっちりと首長会に報告させてもらう。覚えておけ」
 セイランは完全に取りつぶしだな。カガリはそうも続けた。
「別に、困らないだろう、それは」
 静かな声でカナードが彼女の言葉をフォローする。
「それって、大丈夫なの?」
 五氏族のうちの一つが取りつぶしになるというのは、と言外に滲ませながらキラが問いかけた。
「大丈夫だ。セイランの分家の中から一つを代わりに据えればいい」
 氏族の長になりたい者はたくさんいる。その中から中立を保てそうな者を選べばいいだけのことだ。カナードはそう言って笑う。
「こいつやウナトを嫌っているものも多いしな」
 どちらにしても、そいつらには関係のないことだが。彼はその表情のまま付け加える。
「……そういうわけだ。構わないから営巣でもどこにでも放り込んでおいてくれ」
 何か言われたら、自分が責任を取る。カガリはきっぱりとそう言い切る。
「逃がさないようにしてくれれば、それでいい」
 その言葉に、クルーゼが小さく頷いて見せた。
「それにしても、まさかこういうことをしでかしてくれるとは、思わなかったな」
 彼はそのまま付け加える。
「バカはどこまで行ってもバカだ、と言うことだ」
 オーブの五氏族の一つでありながら、その理念を正しくは認識していない――いや、認識できない連中だからな……とカナードは言い返す。
「ともかく、そいつさえ確保しておけば、後は何の問題もないはずだ」
 一緒に来たオーブ軍の者達は、恐らく、ユウナの命令に逆らえなかっただけだろう。彼はそうも続ける。
「そうだな。彼等には私が話をする。多分、それで大人しくなるはずだ」
 構わないだろうか、とカガリも口にした。
「キラ。それに……そうだな。ディアッカに付き添っていって貰おうか」
 カガリに付き添って、オーブ軍の者達の掌握を……とクルーゼは言う。
「ミゲルとアスランは、それぞれの機体で、船外に待機していたまえ」
 何かあった場合、直ぐに制圧するように。彼は続ける。
「妥当なところだな」
 ただし、自分はカガリ達に同行するぞ……とカナードは宣言をした。
「もちろんだよ」
 それは当然の権利だ、とクルーゼは頷き返す。
「後は、オーブとプラントの首脳陣への連絡だが……」
「それは、私がしておこう」
 大丈夫。適当に言いくるめておくよ……と言ったのはデュランダルだ。
「お願いする。あぁ、できれば、オーブ側に関してはアスハかサハクに連絡をしてもらえると嬉しい」
 その方が話は簡単にすむはずだ、とカガリは言う。
「そうさせてもらうよ。君の名前を借りても構わないかな?」
「あぁ。もっとも、できれば同席させてもらいたいが……」
 でなければ、カナードを同席させてくれると確実かもしれない。カガリはそう言い返す。
「とりあえず、先に連絡を入れてから、だね」
 もっとも、カガリが早々にあちらの者達を掌握してくれれば立ち会ってもらえるだろうが……とデュランダルは言葉を返す。
「そうだな。私の努力次第か」
 だが、元はと言えば、あのバカが悪い。この言葉とともにカガリは床を蹴る。そして体を起こそうとしていたユウナの体をまた蹴飛ばした。



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