彼等がそんなどこか気の抜けた日々を送っている間にも、政治的なことは進められていたらしい。
 そして、その最終的なものとして、プラントと地球連合の調停式がオーブで行われることに決まった。
「我々も、護衛としてそれに参加することになった」
 表向きは、とクルーゼは言葉を重ねる。
「と、言いますと?」
 何か、ものすごく、聞かない方がいいような気がするが。言外にそう付け加えながらミゲルが問いかける。
「それと、キラはどこにいるんでしょうか」
 まさか、不参加なのだろうだ。しかし、昨日はそんなことを言っていなかったが。そうも考える。
「キラなら、ラクス嬢とカガリ嬢の出迎えに行かせている」
 デュランダルと共にヴェサリウスでオーブまで行くことになっているのだ、とクルーゼはため息とともに付け加えた。
「って、マジですか?」
 ラクスはともかく、何故、カガリまで……と問いかけたのはアスランだ。その表情が強ばっているのはミゲルの気のせいではないだろう。
「あちらからの依頼、だそうだよ。サハクの方々は別件をすませてからオーブへ向かわれるそうだ」
 カガリの護衛としてカナードが付いてくると言う。その言葉に、ミゲルの頬もひきつる。
「基本的に、彼女たちの相手はキラにしてもらう予定だ」
 それが一番被害が少ないのではないか。そう続けられた言葉に、誰もが苦笑を浮かべる。
「そうですね。確かに、彼女たちもキラには直接手出しはしないでしょうし」
 おそらく、何かあれば、手近にいた人間が被害を受けるのだろう。
 一番可能性があるとすれば、アスランだろうな……とミゲルは心の中で付け加えた。
「と言うわけで、頑張ってくれたまえ、アスラン」
 同じ事を考えていたのだろう。クルーゼはしっかりと彼を名指しする。
「何故、自分でしょうか」
「ラクス嬢からの依頼でね。婚約者殿には、最低でも、一日に一度は顔を出すようにして欲しい、だそうだよ」
 口元に楽しげな笑みを刻みながら、クルーゼはそう言った。
「……極悪……」
 誰かがそう呟く。
「誰か、何か言ったかね?」
 クルーゼがそう言いながら、視線を向けてくる。
「で、彼女たちはどこのブロックを使う予定なのですか?」
 ごまかすようにミゲルが口を開いた。
「傍に、アスランの部屋を用意しないといけないと思いますが」
 さらにこう付け加える。
「そうだね。とりあえず士官室の近くに空き部屋を用意してある。アスランは……カナード君と同じ部屋を使って貰おうか」
 デュランダルはレイを伴っているという。だから、とクルーゼは言った。
 それって、何の嫌がらせですか。ミゲルでもそう言いたくなってしまう状況に、少しだけアスランへの同情心が芽生えた。

 目の前に並んでいるメンバーに、キラは苦笑を禁じ得ない。
「ギルさんやカナード兄さんまではわかるけど、何でレイまで」
 公私混同と言われないのか。言外にそう付け加える。
「マルキオ様から、正式に招待状が届いてね。だから、それは問題はいらないよ」
 安心しなさい、とデュランダルが告げた。
「なら、いいけど……」
 こちらへ、といいながら、キラは歩き出す。
「一応、部屋と談話室、それに食堂は使用許可が出ています。でも、何があるのかわからないので……できれば、みんな一緒にいてくれると嬉しいかな?」
 デュランダルはクルーゼと話し合いをしなければいけないだろうから、ある程度自由に動いて貰って構わないけれど、と続ける。
「とくに、カナード兄さんは、あちらこちら動かないでね」
 とりあえず、と釘を刺しておく。
「そうだな。とりあえず、お前の希望通りにしておこう」
 カナードは微笑みと共にこう告げる。その瞬間、カガリが目を丸くした。
「どうかしたの?」
 キラは不審そうに問いかける。
「……何でもない……」
 そうは思えないが、彼女の表情が『聞かないで欲しい』と告げていた。だから、それ以上は追究できない。
「なら、いいけど」
 とりあえず、部屋に行こうか。そう言うしか言えないキラだった。



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