「ようやくまとまったのか」
 キラの話を聞いて、カガリは笑う。
「後少しで、あいつをぶん殴りに行こうかと思っていたところだ」
 さらに付け加えられた言葉に、キラが困ったように視線を彷徨わせている。
「あきらめろ。それがそう言う性格だと言うことは、お前がよく知っているだろう?」
 苦笑と共にミナが言葉を口にした。
「殴りに行かないだけ、マシだ」
 よくわかっていらっしゃる、と内心、呟く。
「……あの」
 それで何かを気が付いたのだろうか。キラが不安そうな表情を作った。
「どうした?」
 カガリは即座に問いかける。
「ギナ様は?」
 それに対し、キラは逆にこう聞き返してきた。それだけで、彼女が何を心配しているのか想像が付いてしまう。
「心配するな、キラ」
 苦笑と共にロンド・ミナが口を開く。
「あれは今、アマノトリフネだ。カナードが付いていったから、途中でどこかに行くようなことはあるまい」
 そう言われても、キラはすぐに頷けなようだ。
「……逆に心配だと思うが?」
 カガリはぼそっと呟くように告げる。その瞬間、キラが泣きそうな表情になってしまった。
「と言っても、お前にそんな表情をさせるかもしれない、とわかっているから、大丈夫だと思うが」
 二人とも、キラが泣くのに耐えられないはずだから……と慌てて告げる。
「それに、あれはラウが気に入っている相手だろう?」
 ラクスも認めているのだ。下手に手を出せば、二人からの反撃に遭うのは目に見えているだろう、とミナが微笑む。
「だから、お前は何も心配しなくていいのだよ。それよりも、幸せになることを考えなさい」
 必要なバックアップは自分たちがする。だから、と口にしながら立ち上がる。そして、大股にキラの方へと歩みよった。
「お前にはその権利があるのだからね」
 だから、と彼女はそっとキラの体を抱きしめる。
「ミナ様」
 それに、キラは静かに微笑む。
「でも、そのためにみんなに迷惑をかけるわけには……」
「誰も迷惑と思っていないから、安心しなさい」
 むしろ、迷惑をかけられて嬉しいと言い出しそうだね……と彼女は続ける。
「そうだぞ、キラ」
 ミナに負けじとカガリも口を開いた。
「お前は絶対に幸せにならないといけない」
 だから、とにやりと笑う。
「今はあいつを殴りはしないさ。お前を泣かせたときには本気で〆に行くが」
「その時は、私も付き合おう」
 当然、ギナ達もそうするだろうな……とミナも頷く。
「その前に、ラウが動くだろうが」
 さらに続けられた言葉に、カガリも同意をした。その時だ。
「あらあら。ずいぶんとうらやましいことをされておいでですわね」
 言葉とともにラクスが顔を出す。
「いいだろう?」
 にやりと笑いながら、カガリもキラの体をそっと抱きしめる。
「でも、私たちは今しかできないんだぞ? だから、大目に見てくれ」
 さらにこう付け加えた。
「仕方がありませんわね」
 ラクスはそう言ってため息を吐く。
「それよりも、キラ。今度、もう一つ、温室を作ろうかと思っておりますの。今度はグリーン中心で」
 カガリ達が帰るときに苗をお願いしようと考えている。だから、好きな木の種類を教えてくれ。笑顔で彼女はそう続ける。
 しかし、それとは逆に、キラの顔は強ばっていく。
「何で、それを知っているの?」
 ミゲルにしか話してないんだけど、と彼女はその表情のまま続けた。
「わたくしが、キラを大好きだから、ですわ」
 平然とラクスはそう言い返す。
「……そう言う問題じゃないだろう」
 カガリは思わずこう呟いてしまった。



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最遊釈厄伝