本当に、久々にのんびりと出来る休暇だ。しかも、キラと一緒に、である。
「何か、誰かさんの思惑が見え隠れしているような気はするが……純粋に嬉しいと思っておこう」
 と言うことで、明日はキラを誘ってどこかに行くか……と呟きながらミゲルは彼女の元へと足を向ける。
 彼女もやるべきことをやってしまったのか。自分の機体の前で所在なさそうにパソコンをいじっている。
 その様子に、苦笑が浮かんできたのはどうしてなのか。
「キラ」
 それを隠さずに声をかける。
「ミゲル?」
「暇だな、お互い」
 まぁ、仕方がないんだろうが。そう言いながら歩み寄った。そして、視線だけで座っていいかどうか、問いかける。それにキラは頷いて見せた。
「明日、休暇だよな?」
 こうなったら、下手な前ふりは必要ない。そう思って問いかける。
「そうだけど……って、ひょっとして、ミゲルも?」
「そう言うこと。隊長の気遣いかな」
 この問いかけに、キラは首をかしげた。
「そうかも」
 そして、あっさりとこう言い返してくる。
「ラクスに何か言われてたって、ギルさんが教えてくれたから」
 だから、と言う彼女にさらに苦笑を深めた。
「なるほど。隊長でもラクス様には勝てないと言うことか」
 流石、プラントで最強の女性だな……とミゲルは付け加える。それに、キラは苦笑を浮かべた。
「否定は出来ないけど、本人の前では言わないでね」
 怒るかもしれないから、と彼女は小声で付け加える。
「了解」
 小さな笑いと共に頷いて見せた。
「と言うことで」
 ともかく、話を元に戻そう。そう思いながらミゲルは言葉を口にする。
「明日、一緒に出かけないか?」
 せっかく、隊長が気を遣ってくれたんだし……と付け加えた。
「……いいの?」
 少し考えた後で、キラがこう問いかけてくる。
「いいに決まっているだろう」
 と言うか、声をかけたのは自分だから。言葉とともにミゲルはそっと彼女の頬に触れる。
「だから、遠慮するなって」
 一緒に出かけよう、ともう一度口にした。そうすれば、今度は直ぐに頷いてくれる。
「じゃ、明日、迎えに行くから」
 どこに行くかはおまかせで、とミゲルは付け加えた。
「うん」
 言葉とともにキラは微笑んでくれる。それに満足そうにミゲルも笑った。

「……これって、でばがめって言わねぇ?」
 物陰から二人の様子を見ていたニコルに、ディアッカがこう問いかける。
「そうだな。二人のプライベートだろう?」
 それにイザークも頷いて見せた。
「ですが……ラクス様に頼まれているんですよ。お二人の様子を知らせて欲しいと」
 何か計画していることがあるらしい。そうニコルが言い返してくる。
「ラクス嬢か……」
 途端に、二人は思いきり顔をしかめた。そのままアスランへと視線を向けてくる。
「何か、聞いてないのか?」
「……俺が?」
 ディアッカの問いかけに即座にこう言い返す。
「婚約者だろう?」
 だから、何か連絡を取っているのではないか。その問いかけに、アスランは苦笑を浮かべるしかない。
「残念だが、ここしばらく顔を合わせたことはない」
 あくまでも、自分たちは義務として婚約しただけだ。キラとミゲルのように思い合ってのそれではない。そうも付け加える。
「第一、今、彼女の所に連絡を入れても、あいつに切られる可能性の方が大きいしな」
 カガリがいる以上、義務の訪問とは言え、控えた方が身のためではないか。そう付け加えれば、彼女とアスランが顔を合わせたときのことを思いだしたのだろう。三人は納得をしたような表情を作っている。
「とりあえず、ラクス様にはアスランから連絡をお願いしますね」
 その位は義務だ。そう付け加えるニコルに、アスランは「無理だ」と言い返す。
「お願いしますね」
 しかし、ニコルはまたこう言ってくる。その時彼が浮かべた笑みに、アスランは思わず一歩、後ろに下がってしまった。
「いいですね、アスラン」
 さらに彼はこう続ける。その迫力に逆らえる人間がどれだけいるだろうか。そう思いながらも頷くしかできないアスランだった。



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