戦闘がなくなれば、自分たちのような一般兵は待機する以外に何もすることがない。
「まぁ、それも戦争が終わったってことなんだろうな」
 そう言いながら、ミゲルはストライクを見上げる。
「なぁ」
 答えは返ってこない、とわかっていてもついつい呼びかけてしまうのは、目の前のこれが自分の機体だからだ。
 同時に、これらが自分たちに有利な状況を与えてくれたことも否定しない。
 何よりも、キラが自分に与えてくれたものだ。
 それが自分の手に渡ることになった経緯についてはちょっと疑問があるが、それでも、それも彼の好意だろうから、と心の中で呟く。
「とりあえず、お前はしばらく出番なし、だな」
 自分もだが、と呟きながら、その装甲を軽く叩いた。
「ここにいたんだ、ミゲル」
 その時だ。彼の背中に向かって声がかけられる。
「何か用か? キラ」
 用事がなくても、探してくれたのなら嬉しいが……と付け加えながら振り向く。
「用って言うか……時間があるから、ちょっと話をしたいかな、と」
「お前となら、無条件で大歓迎だってぇの」
 自分から声をかけに行きたいくらいだ、とミゲルは笑う。ただ、キラの場合、自分よりも忙しいようだから声をかけるのがためらわれることがあるだけで……と続ける。
「気にしないで声をかけてくれればいいのに」
 そう言って、キラは笑う。
「でも、今回『話をしたい』って言っているのは僕じゃないんだよね」
 困ったことに、と彼女は付け加える。
「……じゃ、誰だ?」
 キラに声をかけたと言うことは、共通の知り合いか、あるいはキラサイドの人間だと言うことだろう。
 そう考えた瞬間、真っ先に脳裏に浮かぶのは、オーブ関係者だ。
 できれば、遠慮したいな……と言うのが本音である。しかし、逃げ出したいと思うほどではない。
「カナード兄さん」
 とりあえず、とキラは付け加える。
「あの人か」
 まぁ、殴られるぐらいは覚悟しておくか……と小さな声で付け加えた。
「それは、ないと思うけど……」
 流石に、とキラは続ける。
「何か、ミゲルにだけ話したいことがあるって……他のみんなの許可は取ってあるから、とも言っていたけど」
 断る? と彼女は首をかしげた。
「いや、会うよ」
 ここで逃げ出したら、きっとあることないこと言われるような気がする。それに、クルーゼ達が許可を出したというのであれば、話を聞かない方が後悔しそうだ。
「で、どこに行けばいい?」
 相手が相手だから、あまりおおっぴらに会わない方がいいのだろう。だから、きっと、どこか目立たないところにいるのではないか。そう思って問いかける。
「……クルーゼ隊長の執務室」
 それに、キラはこう言葉を返してきた。
「それは……盲点だったな」
 だが、確かに一番安全な場所とも思える。
「とりあえず、二人だけって希望だけど……僕は隣の部屋にいるから」
 クルーゼも途中で帰ってくるような気がする、とキラは続けた。だから、安心していい、というのは自分に言い聞かせているのだろうか。
「大丈夫だって。殴られるとしても一発だけにしておくから」
 明るい口調でそう言う。
「ミゲル!」
「そうは言うけどな……カガリちゃんのアスランに対する言動を見ていると……ちょーっと怖いかな、と」
 ないとは思うが、あり得ない話とも言い切れない。
 そして、カナードの実力は自分と同等かそれ以上だろう。
「……手は出さないって約束してくれたから……」
 だから、ないと思う、とキラは続ける。
「そうお願いするよ。本気になられると、隊長にお小言程度ではすまない事態になりそうだからさ」
 それが一番怖い。そう告げれば、キラは苦笑を浮かべながらも頷いて見せた。



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