いつまで経っても、敵機が減ったように思えない。
「ったく……アスランは何ぐずぐずしているんだよ!」
 いい加減、敵の旗艦を撃墜してもおかしくはないことではないか。
「他の連中のバッテリーが切れかねないぞ」
 ストライクやその兄弟機は別だが、と彼は続けた。
 ジンだってその点は改良されている。しかし、外部バッテリーを搭載されていない以上、交換は必要なのだ。
 これだけ派手に戦闘を繰り広げていれば、絶対にまずい状況になっている機体だってあるはず。
「まじで、消耗戦だな」
 このままでは、と思ったときだ。直ぐ傍にいたジンが被弾をする。
「マシュー!」
『大丈夫だ。ただ、これじゃ足手まといだからな……撤退する』
 悪い、と彼は言い返してきた。
「いい。それよりも、無事に案全区域まで行けよ?」
 最後の最後でやられるな、と言外に付け加える。
『了解』
 そのまま彼は機体を後退させていく。もちろん、その間にも攻撃は続いている。だが、それらを回避する余裕はマシューにもあるようだ。
 自分に出来ることは、その攻撃を少しでも減らすことだろう。
「とりあえず、さっさと消えて貰おうか」
 言葉とともにライフルの引き金を引く。
 ねらいを外すことなく、それは敵機を撃ち抜いていく。
「さて……後どれだけ戦えるかな」
 バッテリーの残量を反射的に確認をする。まだ、エールユニットに搭載されている外部バッテリーに余裕があった。しかし、ライフルを使い続けていればどうなるかわからない。
「まぁ、何とかなるか」
 と言うより、何とかするしかないだろう。
「キラと家族が待っているんだからな!」
 そういうと同時にミゲルはストライクを前進させた。

 そのころ、アスランは必死にタイミングを計っていた。
 自分の接近を敵艦に知られるわけにはいかない。だから、出来るだけ障害は少ない方がいいのだ。
 しかし、旗艦だけあって流石に単独になることがない。
 だからといって、いつまでもここで待機しているわけにもいかないことはわかっていた。
 自分が決断をしなければ、同胞が危険にさらされ続けるのだ。
 だから、と前を見る。
「……今なら、いけるか?」
 おそらく、イージスならば大丈夫だろう。
 だから、と操縦桿を握り直す。そのまま、思い切り前にペダルを踏み込んだ。

 目の前の機体が急旋回をする。
 その瞬間、キラの目にブースターが映った。
「……あれを破壊すれば……」
 きっと、動きが止まるはず。
 しかも、だ。
「今なら、隊長達に意識が向いているようだし」
 何とかなるだろう。
 直接、あれらと対峙しているクルーゼ達にその余裕はないはず。だから、自分が何とかしなければいけない。
 そう考えて、ライフルの照準をロックする。
「当たれ!」
 間髪入れずに、引き金を引く。
 その次の瞬間、MAは動きを止めた。



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最遊釈厄伝