ストライクに向けて砲火が集中をしている。
 もっとも、機動性から言えばこちらの方が上だ。それに、とミゲルは口元に笑みを浮かべながら呟く。
「やはり、あれが旗艦か」
 あれを押さえるか――あるいは撃墜すれば、地球軍は混乱する。うまくいけば、そのまま勝利を掴むことが出来るだろう。
「しかし、多いな」
 ミストラルとはいえ、数が多ければ鬱陶しい。
「それに……あれはMSか?」
 数は少ないが、それらしき機影が確認できる。そう言えば、あちらにも僅かだがコーディネイターがいたのだな、と心の中で呟いた。
「一人だと、ちょっときついか?」
 流石に、と呟く。
 もちろん、不可能ではない。だが、こちらもそれなりの損傷を覚悟しなければいけないだろう。
 そう思ったときだ。
『ミゲル』
 聞き覚えのある声がスピーカーから流れてくる。
「アスラン?」
 何をしに来た、と言外に問いかけた。
『援護をする。皆も、今、来るはずだ』
 クルーゼの指示だ、と彼は付け加える。
「そうか」
 なら、あてにしている……とミゲルは言い返した。
 個人的な思惑はどうあれ、この場ではそれを考えている暇はない。それよりも、と周囲を見回す。
「アスラン。お前の機体の方が機動性がいい。旗艦にはお前がいけ」
 自分は敵のMSの相手をする、と続ける。
『ミゲル?』
「その方が確実だ」
 イージスのスピードであれば敵機を振り切って近づけるだろう。
『……わかった』
 彼の言葉にアスランは頷き返す。
『でも、ケガをするなよ?』
 キラのためにも、と付け加えられた言葉にミゲルは驚く。だが、直ぐにそれは笑みに変わった。
「当たり前だろう」
 これからようやく恋人らしいことが出来るのだ。だから、死んでたまるか……と言い返す。
「お前らに見せつけてやらないとな」
 覚えてろ。そう付け加えれば、アスランがせいだにため息を吐いた。
『……キラに鬱陶しがられないようにしろよ』
 ついでに、レイ達に邪魔をされてしまえ! と彼は言い返してくる。
「もう経験済みだ」
 言葉とともにミゲルはストライクをイージスから放す。
「とりあえず、任せたぞ」
 そのまま、敵の中心へと全速でつっこむ。
『了解』
 アスランもまたイージスを変形させると最高速度で行動を開始した。

『なかなか、思い切りがいいようだな』
 その光景を虚空からひっそりと見つめていた。
「そうだな」
 しかも、判断は的確だ。だからこそ、クルーゼは彼がキラの側にいることを認めたのだろう。
「まだ、キラも出撃していないようだし……手を出さずにすむか?」
 カナードはそう呟く。
 自分にしてみれば、どちらが勝利を収めようと構わない。もっとも、キラとクルーゼ達がいるから、プラントは勝利した方がいいのだろうが。そうでなかったとすれば、あの三人をつれて逃げればいいだけだとも考えている。
『あいつらが何か悪あがきをしなければ、だがな』
 セイランの動きから判断をして、まだ何か切り札を持っているかもしれない。そうギナが言い返してくる。
「セイランか」
 本当に邪魔な奴、と吐き捨てるように口にした。
『それも今回までだ』
 そろそろ堪忍袋の緒が切れる。だから、とギナは笑いを漏らす。
『全力で叩きつぶすさ』
 そう彼が付け加えたときだ。センサーに妙な動きをしている機影が映し出された。
『カナード!』
 それが目標としているのは、間違いなくヴェサリウスだ。
「わかっている!」
 言葉とともに操縦桿を大きく動かした。



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最遊釈厄伝