その情報に、パトリックは渋面を深める。
「何を考えている、シーゲル」
 呟くように彼は口にした。
「今更、あの国と手を結んだとしても、意味がなかろう」
 それでも、全力で排除しようと考えないのは、彼の元に非公式に滞在しているのがサハクの双子だから、だろうか。
 オーブで唯一のコーディネイターの首長。
 そして、プラントという国はまだ、オーブとの繋がりがなけれ存在し得ない。
 だから、それに関しては妥協するしかないのだろうか。
「だが、そのための駒は、既に手の中にあるだろうに」
 もっとも、それが自分の息子アスランに必要以上に接触してくるのは好ましくない。
 そう考えれば、アスランをクルーゼ隊に配属させなかった方がよかったのかもしれない。しかし、と考えてやめる。
 過ぎてしまったことはどうでもいい。
 必要ならば、相手を移動させればいいだけのこと。
 問題があるとすれば、クルーゼがあれを手放さそうとしないことか。
 理由はわかっている。そして、それを迂闊には拒めないだけの実力を、二人とも持っていることも否定できない。
「まぁ、いい。それも何とでも出来る」
 今、一番重要なのは、プラントを勝利に導くことだ。
 そのためには、利用できるものは何でも利用する。
 こう呟くと、その情報に関わることは思考の隅へと追いやった。
「……地球軍の動きはどうなっている?」
 こう言いながら、他の書類へと手を伸ばす。そんな彼の元へ、望んでいた情報が届けられるのはまだ先のことだった。

 目の前は和やかなのか、それとも……とミゲルは悩む。
「女性陣の笑顔は、可愛いんだが……」
 何か、素直に見られないのはどうしてなのだろうか。その答えを探すまでもない。おそらくラクスがいるからだ。
 もっとも、と直ぐに思い直す。
 彼女がキラに向ける表情に裏はないはずだ。だから、目の前の光景も見えているとおりなのだろう。
 ならば、和んでいいのか。そう結論づける。
 しかし、それを直接口に出すことはない。
「キラが一番だよな」
 代わりにこう呟く。
「それは否定できないか」
 即座にカナードが同意の言葉を口にする。
「中身を知っていると、どうしてもな」
 まぁ、ここにロンド・ミナがいれば、もっと凄いことになるぞ……と彼は続けた。
「……と言うよりも、今もカガリ嬢ちゃんが両手に花に、見えるんだが」
 キラも三年前なら、十分男の子に見えたが、今は違う。しかし、カガリはキラよりもスタイルがいいはずなのに、何故か少年にしか見えないのだ。
 そのせいで、何故かそんな認識になってしまう。
「あいつの場合、行動が女らしくないからな」
 そのあたり、気をつければいいものを……と彼はため息を吐く。
「せっかく、キラと同じ顔をしているんだから」
 その言葉に、ミゲルも同意だ。
「だが」
 しかし、と思いつつ慎重に言葉を口にする。
「あれはあれでいいって言う人間がいるんじゃないか?」
 自分がキラを好きになったときのように、と言外に付け加えた。
「好きな相手ができれば、女性らしくなるものらしいし」
 一般論かと思っていれば、事実だった。そう言って笑う。
「キラは……昔から可愛かったがな」
 それにカナードはこう言い返す。
「しかし、お前はよく、あいつのことを見ているようだな」
 どこかのアホとは大違いだ。その言葉に苦笑を返すしかできない。
「ともかく、問題はあちらだな」
 それをどう判断したのか。カナードは言葉とともに視線を移動させる。
「……そうだな」
 その先には、クルーゼにお小言を食らっているフラガの姿があった。



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最遊釈厄伝