クルーゼの言葉通り、そこには既にカガリとラクス、デュランダルとレイ、そしてカナードがいた。
「ミナ様とギナ様は?」
 だが、彼らがいるならきっと同行しているだろうと思っていたサハクの双子の姿はない。それはどうしてなのだろうか、とキラは首をかしげる。
「自分たちが動くと目立つから、と言うことでクライン邸で留守番だ」
 そう教えてくれたのはカナードだ。
「まぁ、あちらで何か悪だくみをしている可能性は否定できないが」
 シーゲルもいるから、と彼は続ける。
「……それは言い過ぎじゃないか?」
 ミゲルがっそっと指摘をした。
「お前はあの双子を知らないからそう言えるんだ」
 かなりえぐいことも平気でやるぞ、とカナードは言い返す。
「まぁ、国を治めるものとしてはその位当然なのかもしれないが」
 さらに、彼はこう続ける。
「……カガリも、そうなるの?」
 何か、想像できない。キラは思わずそう呟いてしまう。
「あいつは……どうだろうな。傍にきちんとフォローできる人間がいれば、今のままでもかまわないと思うが」
 問題は、カガリの体力について行けて、なおかつ政治的にフォローできる人間がいるかどうかだな……とカナードはため息を吐く。
「まぁ、そのあたりはウズミ様が考えているだろう」
 言外に、自分はそれに関わる気がないのだ……と彼は告げてきた。
「そうだな。家のオコサマ連中も、いずれはそうなるのかもしれないし」
 それはそれで問題があるような気はするが、とミゲルがため息を吐く。
「ミゲル?」
 どういう意味だろう。そう思って彼の顔を見つめる。
「流石に、カガリ嬢ちゃんも、人前でアスランをのしたりはしないと思うんだけどな」
 それに、彼は苦笑と共にもう言い返してきた。
「いや、カガリだからな。やりかねん」
 彼女の場合、周囲が見えなくなることがあるからな……とカナードは苦笑を浮かべる。
「一呼吸置いてから行動しろ、といつも言っているんだがな」
 聞く耳を持たない。
「だって、カガリだよ?」
 それに、こう言い返すしかできないというのも事実だ。キラの言葉に、カナードはさらに苦笑を深めた。
 その時だ。
「キラ」
 静かな声でクルーゼが彼女の名を呼ぶ。
「はい」
 何か、とキラは言い返す。そうすれば、彼が彼女を手招く。と言うことは、自分に用があるのか……と直ぐに駆け寄った。
 当然のように、ミゲル達も後を付いてくる。しかし、クルーゼは二人に注意を向ける様子を見せない。
「そんなに慌てなくていいよ」
 言葉とともにそっと彼女の体を引き寄せた。
「このバカがうるさかっただけだしね」
 そう言われて、改めて目の前にいるメンバーの顔を見回す。
 全員、見知った顔なのに、何故か違和感を覚えた。それはどうしてなのだろう。そう思って、もう一度一人一人を確認していく。
「……フラガ、さん?」
 そうすれば、ここにいるはずのない人間の存在に気付く。しかも、彼は何故かオーブ軍の軍服に身を包んでいた。
「地球軍の、大尉じゃなかったんですか?」
 思わずこう問いかけてしまう。
「いや。元々はオーブの軍人だよ、俺は」
 必要があったから、地球軍に混じっていたわけで……と彼は笑いながら付け加える。
「って言うか……やっぱ、覚えてなかったか」
 全て、お前が悪い……と彼はクルーゼへと視線を向けていった。
「そのあたりのことは納得していたのではないかね?」
 カナードでさえ我慢していたものを、とあきれていると隠すことなくクルーゼは言い返す。
 その声音に、親しさすら感じられるのは、キラの錯覚ではないだろう。と言うことは、と思いながら口を開く。
「ひょっとして……」
 彼が最後の一人なのか、と問いかければ、クルーゼだけではなくカナードも頷いてみせる。
「だから、アークエンジェルの中でフォローしてくれたのですか?」
「……じゃなくても、フォローはしたと思うけどな。一応、立場上は民間人だったわけだし」
 まぁ、キラだから、本気でフォローをしたけど……と笑うフラガが誰に似ているのか、ようやくわかったような気がした。



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