バルトフェルドは、ものすごく強烈な印象を与えてくれる人間だった。
「あぁでないと、隊長職って務まらないのかな」
 小さなため息とともにキラはこう呟く。
「おや? キラは私もそうだというのかな?」
 即座にからかうような声が投げかけられた。
「……自覚していなかったの?」
 しかし、相手がクルーゼであれば気にすることなく言い返すことが出来る。きっとそれは、相手に対するなれのようなものがあるから、だろう。あるいは甘えだろうか。
「自覚はしていたさ」
 くすくすと笑いながら、彼はそう言い返している。
「ただ、君の前では出来るだけ見せないようにしていたつもりなのでね」
 さらにこう付け加えた。その瞬間、助手席にいたミゲルが「嘘付け」と呟いたのが聞こえた。
「おや。君もそのことはよく知っていてくれているものと思っていたが」
 くつくつと笑いながら、クルーゼがこういう。
「知っていますけどね。最近はかなり化けの皮がはがれてきていますよ」
 自覚されていませんでしたか? と彼は平然と言い返す。
「それは気が付いていなかったね。気をつけないと」
 指摘をしてくれてありがとう、と言えるあたり、やはり彼には勝てないと言うことだろうか。
「……どこに向かっているのですか?」
 とりあえず話題を変えようとして、キラはこう問いかける。
「教えていなかったかね?」
 それに、クルーゼが驚いたように聞き返してきた。
「聞いていません」
 と言うことは、彼は告げたつもりになっていた、と言うことなのか。
「バルトフェルド隊長がいらしたことで、隊長もすっかり調子を崩されたようですね」
 まぁ、その分、棘が凄いことになっていたが……とミゲルは付け加える。
「何が言いたいのかな、君は」
「……あの三人が復活できるのは、いつだろうな……と思っただけです」
 自業自得だから、どうでもいいが……しかし、ここで出撃命令が出たらどうしようか。それだけが不安なのだ、と彼は続けた。
「アスランも、あてにしない方が良さそうですしね」
 さらに付け加えられて、キラは思わず複雑な気持ちになってしまう。その原因は、間違いなく自分にあるはずだ。
「その時は、私が動く。だから、気にすることはない」
 彼等が来る前はそうだったではないか。そう言われて、キラもミゲルもとりあえず納得をする。
「これから行く場所にはカガリ達も待っているよ」
 ついでに、もう一人の関係者もね……と彼は続けた。
「もう一人の関係者?」
 誰だろう、それは、と思う。
 きっと、自分に関係がある人物なのではないか。だが、と考えていればある結論に行き着いた。
「ひょっとして、もう一人の兄さん?」
 会わせてくれると言っていたが、とキラは続ける。
「その方がいいだろうからね」
 あちらもじれてきているし、とクルーゼはため息を吐く。
「まったく。君とは既に顔を合わせているというのに……」
 《兄》として認識して貰わないといやだというのは、一体どこのお子様だ……と彼は続けた。
「……ひょっとして、若いんですか、その人」
 そう言うセリフを言うとは、とミゲルが問いかけてくる。
「……少なくとも、カナード兄さんよりは年上だったよね?」
 彼の言葉に、キラはキラでクルーゼにこう問いかけた。
「私よりも年上だ、あの男は」
 その言葉にミゲルが驚いたような気配が伝わってくる。いったい、どんな大人なのか、と言いたいのだろう。
「と言うことは……ヘリオポリスであったの?」
 キラはキラでこう問いかける。
「あってからのお楽しみ、だよ」
 しかし、クルーゼはこう言って微笑むだけだった。



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