キラは視線の先に何か異様なものを見つけてしまった。
「……イザークさんとディアッカさんとニコル君?」
 何で、こんなところで三人セットでうずくまっているのだろうか。彼等なら、パイロット控え室に行けばいいのに、とキラは思う。
「と言うと、クルーゼ隊の?」
「パイロットだよ」
 後一人いるけど、とダコスタに言い返す。
「君やミゲル以外に?」
「うん」
 でも、本当にどうしたのか。首をかしげながらそう考える。ミスをしたにしても、彼等らしくないし……と呟く。
「確かめた方がいいのかな」
 そう言ったときだ。
「ほっとけ」
 脇からこんなセリフが飛んでくる。
「ミゲル?」
 それが誰のものか。確認しなくてもわかった。しかし、どうして、と思う。
「守秘義務違反を隊長に咎められて落ちこんでいるだけだ。ヘタに慰めの言葉をかけると、さらに落ちこむぞ」
 自分たちが特別だと思っていたらしくてな、と少しだけ非難がましい声音で続ける。それをクルーゼに打ち砕かれたところだ、とも。
「何でまた、そんな思い違いを……」
 あきれたような声音でダコスタが問いかけた。
「……そりゃ、あいつらの親が最高評議会議員だから、だろう」
 昔から、周囲に特別扱いされてきたから、、どこか満身があったのではないか。ミゲルはそう告げる。
「自業自得だな」
 ダコスタがどこかあきれたようにそう言った。
「懲りてくれればいいけど」
 ため息混じりにキラが言葉を口にする。きっと、今、彼女の脳裏にはアスランのことが思い描かれているのだろう。
「まぁ、大丈夫だろう。あそこまでしつこいのは珍しいと思うからな」
 それよりも、早くいかないとクルーゼとバルトフェルドの口論が始まりそうで怖い。キラの意識を彼からそらすためにこんなセリフを口にした。
「あぁ、あり得る」
 即座にダコスタが頷いてみせる。
「二人とも、矜持が高いから」
 そして、取る戦略は正反対だ。だから、と彼は続けた。
「まぁ、それはそれなりの理由があるんだろうけどね」
 苦笑と共に付け加える彼に、キラは首をかしげる。
「そうなの?」
 キラは比較的クルーゼに好意的な隊長達しか知らない。だから、信じられないのだろう。
 確認するように、彼女はミゲルへと視線を向けてきた。
「まぁ、隊長が無条件で歩み寄るのはお前ぐらいだと思うぞ」
 それにこう言い返す。
「……そんなことはないと思うけど……」
 キラはますます考え込んでしまう。
「まぁまぁ。考えるのは向こうにいってからでもできるよ」
 ミゲルの言動から何かを察したのだろう。ダコスタがこう言ってくれる。
「どんな険悪な状況になっていても、キラの顔を見れば直ぐに収まるから」
 にっこりと笑って告げられた言葉にキラは目を丸くした。
「お前な……人の彼女を口説くんじゃない」
 こう言いながら、ミゲルはキラの体を自分の方へと引き寄せる。
「口説いているわけではないよ。こう言うのが礼儀なのだと言われただけだし」
 隊長の彼女に、とダコスタは笑みに少しだけ苦いものをくわえた。
「……そう言うことにしておいてやるよ」
 こう言い返しながらも、ひょっとしてバルトフェルド隊もクルーゼ隊と同じくらいくせ者揃いなのだろうか……とミゲルは思う。
 まぁ、どこの隊も似たり寄ったりなのかもしれないが。
「ハイネの奴、元気でやっているかな」
 ふっと、アカデミー時代にいつも一緒にいた最後の一人のことを思い出す。
「元気じゃないかな」
 先日、ジンのカスタムを依頼していたらしいし……とキラが言い返してくる。
「まぁ、殺して死ぬような人間じゃないからな、あいつも」
 ダコスタが最後にこう締めくくった。その事実に思わず笑いを漏らす。
「まぁ、そのうち会えるか」
 そのまま、こう告げれば二人は頷いて見せた。



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