久々のヴェサリウスは、何故かほっと出来る。 そんなことを考えていれば、隣を歩いていたキラが離れていく。 「キラ?」 「デュエルの改修が終わっているはずだから、確認してくる」 どうかしたのか、と問いかければ彼女は直ぐにこう言い返してきた。そのまま、ガモフへと向かっていく。 「了解。俺はストライクの所にいるから」 その細い背中に向かってミゲルはこう声をかける。そうすれば、わかったというように手が挙げられた。 本当は付いていった方がいいのかもしれない。だが、アスランはまだもどってきていないと聞いている。それに、きっと、もどってきたとしても、自分が駆けつけるまで整備クルーが何とかしてくれるだろう。 そんなことを考えていたときだ。 「ミゲル」 いきなり声がかけられる。それについては問題がない。あるとすれば、かけた人間の存在だ。 「何で、お前がここにいるんだ、イザーク」 キラが向かったのは彼の機体のはず。それなのに、パイロットがいなくていいのか、と言外に問いかける。 「ちょっと確認したいことがある」 キラでもいいが、本人には少しはばかられるから……と彼は小声で付け加えた。 「ったく……何だよ」 とはいうものの、キラの秘密についてストレートに問いかけられても困る。その位なら、自分がクッションになった方がいいのではないか。ミゲルはそう判断をした。 「手短に言え」 だから、とこういう。 「……ここじゃない方が都合がいいだろう?」 部屋を確保してある、と彼は言い返してきた。 「お前にしては手際がいいな」 自分の知っているイザークなら、そんな回りくどいことはしない。それなのに、どうしたというのだろうか。 「ニコルの提案だ」 言外の問いかけに、イザークはそう言い返す。 「俺がお前を捕まえたのはたまたまだ」 他の二人は別の入り口を張っている、と彼は付け加える。どこから来るかわからなかったからな、と言われて、ミゲルは苦笑を浮かべた。 「何を考えているんだか」 それとも、それだけ知りたい内容だ、と言うことか。 「最初に言っておくが、俺にも守秘義務はあるからな」 だから、聞かれても答えられないことの方が多いぞ……とミゲルは言っておく。 「わかっている」 とりあえず、付き合え……とイザークはにらみ返してきた。 まぁ、彼等も最高評議会議員の子弟だ。その程度のことは日常茶飯事なのかもしれない。まぁ、アスランがいないだけでもマシか、と心の中でそう呟く。 「じゃ、案内して貰おうか」 不本意だが、とミゲルは水を向ける。 「わかった」 そのまま、イザークは歩き出す。 しかし、いったい何を聞こうとしているのか。 内容次第で、クルーゼ達に直ぐに伝えなければいけないだろう。そんなこともミゲルは考えていた。 同時に、キラを傷つけるようなことがなければいい。 彼女は幸せにならなければいけない存在なのだ。そして、自分が幸せにする予定だし……と口の中だけで呟く。 とりあえず、とはいえ、キラの周囲の人間には、認めてもらえているようだし、とそっと付け加える。 しかし、それも、キラが自分を好きでいてくれるからだ。 「……どちらにしても、さっさとブルーコスモスにはいなくなってもらわないとな」 そうしないと、次の段階に進めないだろう。いい加減、キス止まりというのは辛い。そんなことを考えていると、キラに知られない方がいいのだろうか。 ミゲルは小さなため息とともに自分の中にたまっているものをはき出した。 |