先ほどからミゲルをにらみつけているのは誰だろう。どこか見覚えがあるような気がするのだが、とキラは首をかしげる。 「カナード……キラが困っているよ」 それがわかったのだろう。クルーゼが苦笑とともに彼に声をかけた。 「……わかっていますが、面白くないので」 それに、カナードと呼ばれた青年がこう言い返してくる。しかし、その表情はまったく変わらない。 「それも、お前が選んだことではないか?」 低い笑いと共にサハクの双子の一人がこう告げる。 確か、彼等は男女の双子だったはず。だが、よく似た服装を身に纏っているせいか――あるいは、雰囲気そのものがよく似ているためか――直ぐには判別が付かない。 もちろん、よくよく見ればその区別は付く。 「……うるさいぞ、ミナ」 しかし、彼はとっさに判断できるらしい。忌々しそうに言葉を返している。 「お前達はこの前会ったかもしれないが、俺は本当に久々なんだぞ」 何年ぶりだと思っている、と言われてキラは首をかしげた。 「知り合いか?」 ミゲルがそっと問いかけてくる。 「どこかであったような気はするんだけど……でも、思い出せない」 だから、あったとすれば、月にいく前ではないか。キラはそう付け加えた。 「と言うと、三つぐらい、だっけ?」 「そう」 そのころにあった人の記憶は少しあやふやだから、と言えば、ミゲルは「そうだよな」と答えてくれる。 「覚えられていないのはお前だけではないからな。安心しろ」 そんなことを囁きあっていれば、今度はギナがこう言って笑った。 「……安心することなのか、それは」 カナードの周囲の気温が微妙に下がったような気がするのは錯覚だろうか。 「私たちもそうだった、と言うだけだよ、カナード」 他にも一人いたようだしな、とミナが笑う。 「それよりも、今はそれを優先すべき時ではあるまい」 キラを連れてきてくれたのはクルーゼの好意だろうしな、と彼女は続けた。 「お前を連れてきたのが、私たちの気遣いだ、と言うのと同じようにな」 そう言われて、彼はとりあえず引き下がることにしたようだ。 「後で、きちんとキラに紹介するよ」 苦笑と共にカガリが口を開く。 「その位しても罰は当たるまい」 即座にミナがそう言ってくる。 「それにしても……いったい何故、お前が巻き込まれたのか……キラならば、まだ納得できるのだが」 キラがあちらに目をつけられていたことは知っていた。だから、さりげなくカナードをフォローにつけていたのだが、と言われて思わず目を丸くしてしまう。 「気が付かなかった……」 そのまま、こう呟く。 「気にしなくていいぞ。こいつには、絶対、お前の前に姿を見せるな、と言ってあったからな」 でなければ、あちら側にキラの正体が知られかねなかった。そうギナが教えてくれる。 「……だが、そろそろ、それも終わりにした方がいい、と言う結論に達したのでね」 自分たちも、アスハも……とミナが告げた。 「プラントとしても、その方がよろしかろう」 その言葉に、シーゲルが慎重に口を開く。 「あのデーターに関することですかな?」 「そう考えていただいてよろしいかと」 もっとも、とミナが小さな笑いを漏らす。 「そのためには、あれこれと掃除して、厄介な連中を排除するという仕事があるが……それに関しては、どのみちやらなければなるまい」 今のままでは、世界は次のステップに進めないのだから。 この言葉に、誰もが頷いてみせる。 「では、少しでも実りのある話し合いになるように、努力させていただこうか」 シーゲルが静かな声でそう言った。 |