流石に女性陣の着替えに立ち会うのはまずい――レイをのぞいての話だ――のではないか。そう判断をして、ドアの前でミゲル達三人がキラ達が出てくるのを待っていたときだ。 しかし、人前と言うことも考えているのか。クルーゼは大きめのミラーグラスでメモとを隠していた。しかし、それが逆に人目をひいているような気がするのは自分の錯覚だろうか、とミゲルは悩む。 その時だ。 「デュランダル君、それにクルーゼ隊長。今、構わないかね?」 どこか頬を引きつらせたシーゲルが言葉とともに歩み寄ってくる。 「何か、ありましたか?」 やはり、アスランの件はやりすぎたのだろうか。 シーゲルに言葉を返しているデュランダルを見つめながら、ミゲルは心の中で呟く。 「お客人がおいでなのだがね」 オーブから、とシーゲルは口にした。と言うことは、アスランとは関係がないらしい。 「……どなたですか?」 いやそうな表情でクルーゼが彼に聞き返した。 「入国を希望しているのはアマノトリフネ、と言う船名だそうだから、おそらくサハクの双子のどちらかだ、と思うが」 シーゲルのこの言葉を耳にした瞬間、クルーゼは思い切り渋面を作る。 「どうしたのかね、ラウ」 それが気にかかったのだろう。デュランダルが問いかけた。 「おそらく、双子が揃ってきているだろうな……と思っただけだ」 きっと、カガリのことを名目に、キラの顔を見に来たに決まっている。彼はそう続けた。 「なるほど。彼等もこちら側の人間、と言うことか」 「それに関しては確実だ」 二人をコーディネイトしたのも、幼年期に面倒を見ていたのもヴィアだから、とクルーゼは口にする。 「だからこそ、彼等のヴィアに対する思い入れは我々以上かもしれなくてね」 言外に、彼女にうり二つのキラに対するそれも、と付け加えられた。 そのまま視線を向けられれば、彼が何を言いたいのか、わからないはずがない。 「……俺の品定め、ですか?」 思わず、ミゲルは口を挟んでしまう。 「それもあるだろうが……まぁ、キラの意志を無視することはないだろうからね」 多少イヤミを言われるぐらいではないか。そう言われてもあまり嬉しくはない。 「それ以上に怖いのは、アスランに対する報復だよ」 この言葉に、シーゲルが目を丸くしている。 「……クルーゼ隊長?」 「まぁ、あの二人はサハクの当主ですからね。国際問題にならないように配慮してくれると思いますが」 問題は、もう一人が同行していたときだ、とクルーゼはため息とともに付け加えた。 「どちらにしろ、先に私が会いに行くしかないでしょうな」 しばらく、船内で待たせておくしかないでしょう……と彼はさらに言葉を重ねる。 「そうだね。明日、私が足を運ぶことになっている。その時、同行をお願いしよう」 シーゲルがこう言ったときだ。 「ほら、諦めて!」 この言葉とともにドアが開く。そして、中から華やかなドレスに身を纏ったカガリと、彼女の背中を押すようにしているキラ達の姿が見えた。 「諦められるか!」 そんな彼女たちに向かって、カガリがこう叫んでいる。 「だって、似合うのに」 人の時はあれこれ言ってくれたのに、どうして自分のことだとそんなにあきらめが悪いのか。そう言い返す、キラの言葉はもっともだ。 「お前は可愛い恰好をしてもいいんだ!」 と言うより、しなければいけないんだ! とカガリはさらに付け加える。 「あらあら。あきらめが悪いですわよ、カガリ」 くすくすと笑いながらラクスが彼女の手をひく。 「せっかく、綺麗にしたのですから、この時ぐらいはおしとやかにしてくださいませ」 そう思われません? と彼女は即座にミゲル達に同意を求めてきた。 「そうだね、カガリ。どうせなら、今日ぐらいはその恰好で大人しくしていなさい」 ここはオーブではないのだから、とクルーゼも頷く。 「でも、いやなんです!」 こんななおしおきが待っているとは思わなかった。そう叫ぶ彼女に、苦笑を禁じ得ない。 「それは、お前の考えが甘かったとしかいいようがないね」 さて、お付き合いしていただけますか? といいながら、クルーゼが彼女へ向かって手を差し伸べる。それに、カガリは頬をふくらませた。 |