キラの端末がささやかな自己主張を始める。
「……何かあったのかな?」
 ギルバートやクルーゼではなく自分に呼び出しが来ると言うことは、開発局からだろうか。そう思いながら、鞄の中から端末を取り出す。
「どうした?」
 それに、ミゲルがこう問いかけてくる。
「わからない」
 誰からだろう。そう言い返しながら相手の名前を確認しようとモニターに視線を落とす。
「ラクス?」
 そうすれば、見慣れた名前が表示されている。
「えっ?」
 何で、とミゲルが呟くのが聞こえた。
「……内線もあるのに」
 何で、携帯端末になんだろう。そう思いながら、キラは通話をするために操作をする。。
「ラクス、何?」
『御邪魔ではありませんでしたか?』
 声をかける彼女に、ラクスは即座に聞き返してきた。
「別に。ただおしゃべりをしていただけだから」
 邪魔されたわけではないけれど、と顔をしかめる。そちらで何かあったのではないか。言外にそう問いかけた。
『アスランとカガリがまたケンカをしてくれましたので、あの部屋が使えなくなりましたの』
 それに対するラクスの答えがこれだった。
「……へっ?」
 その言葉に、ミゲルが変な声を上げる。その気持ちはよくわかる、とキラは心の中で呟く。
「使い物にならなくなったって……あの部屋の家具、凄く綺麗なものだったよね?」
 それが全部? と思わず問いかけてしまう。
『全部ではありませんわね。とりあえず、ソファーとサイドテーブルが壊れたくらいですけど……』
 だが、カーペットの上にそれらやカップの破片が散らばっているから、掃除しないうちは足を踏み入れない方がいいだろう。そう彼女は続ける。
「ケガは?」
『アスランの顔に、一つ二つ、あざが出来たぐらいですわね』
 と言うことは、カガリは無傷と言うことか。
「マジで、アスラン、鍛え直さないとダメじゃないか?」
 部屋がそんな状況だ、と言うことは、双方、本気を出したのではないか。それなのに、一方的にケガをするとは、とミゲルがあきれたように言う。
「いや。あの部屋にはレイもいたはずだからね。彼が手を出したのかもしれないよ?」
 クルーゼはラクス嬢のフォローに回っただろうからね、とデュランダルはそう言ってきた。
「隊長ならそうでしょうが……」
 しかし、それでも……とミゲルは納得できないという表情で呟いている。
「それで、カガリ達は?」
 どうしたの? とキラは問いかけた。
『アスランはお帰りをいただきましたわ』
 あの顔では、人前にでない方がいいだろう。そう判断をしたのだ。それはそうなのかもしれない、とキラも思う。
『カガリには、お仕置きを受けていただくことにしましたの』
 しかし、この言葉には何と反応をしていいものか、と悩む。
「おしおき?」
 いったい何を、と頬を引きつらせる。
『ドレスに着替えていただいておりますわ』
 まさしく、満面の笑みと言った様子でラクスがこう言い返してきた。
『ですから、キラもこちらに来ていただきたいのです』
 そうすれば、カガリも逃げ出さないのではないか。そう言われても、相手はカガリだ。本当にいやなら、下着姿のまま遁走しかねない。
「……わかった。でも、どこ?」
 だからといって、ラクスの言葉を無視できないし。ため息混じりに、キラはそう告げた。



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