「それでは、とりあえずオーブに戻れるよう手配をしよう」
 クルーゼは言葉とともに腰を上げる。
「……何だ? もう帰るのか」
 そんな彼に、あきれたようにフラガが言葉を投げかけてきた。
「お前のことよりも優先しなければならないことが待っているからな」
 それだけで、彼には意味がわかるはずだ。
「なるほど。あきらめが悪いっていうのは、困りもんだな」
 即座にこう言い返してくる。
「と言うことは、それが何とかならないと、あのじゃじゃ馬は国に帰ろうとはしない、と言うことか」
 ならば、徹底的にやってもらうしかないのだろうな……と続ける彼に、クルーゼの口元に笑みが浮かぶ。
「察しがよくて助かる」
「まぁ、その手の情報は、きちんと届いていたからな」
 不本意だが、とフラガは苦笑と共に告げた。
「まったく……地球軍の将校に何を送り付けてくるんだか」
「ばれなければかまわないと思うのだが?」
 自分だって、クルーゼ達にさりげなく情報を流してきただろう、と言外に付け加える。
「そう言うことなんだけどな」
 そのおかげで、余計な戦闘は避けられただろう、と彼は笑った。
「ともかく、近いうちにマルキオ様とキサカ氏がこちらに来られる。その時に、お前も向こうに帰れ」
 他の地球軍の兵士達も、一緒にオーブに言ってもらう手はずになっている、だから、後のことはその時に相談をしろ。その言葉を合図に、クルーゼは歩き出す。
「その前に、キラにきちんと紹介してくれると嬉しいんだが」
 彼の背中に向かって、フラガがこう言ってくる。
「考えておこう」
 この言葉を残して、部屋を出た。
「……ラウ……」
 そうすれば、即座にレイが声をかけてくる。
「顔を見ていくかね?」
「いえ。それは後でも十分です」
 それよりも、キラの方が心配だ。そう言う彼に微苦笑が浮かんでしまう。
「まったく……君はそのうち、本気でキラとミゲルの間を邪魔してくれそうだね」
「……壊さない程度なら、構わないのではありませんか?」
 クルーゼの言葉に、彼は即座にさらに笑みに苦いものを含める。
「キラに嫌われないように気をつけるんだよ」
 あの調子であれば、ミゲルに味方をしそうだから。そう言えば、レイは小さく頷く。
「あいつの二の舞はごめんです」
 それが誰のことを指しているのか。確認しなくてもわかっていた。
「その心配はないと思うけどね」
 では、行こうか。そう言うと、クルーゼはレイの肩に手を置く。
「はい」
 それに、彼は静かに頷いた。
「ギルが、待っていると思いますし」
 今、自分たちがいない間に、キラがアスランに困らされているのではないか。そう考えるだけで不安になる……とレイは言った。
「大丈夫だ。ラクスさまもカガリもいるからね」
 何よりも、ミゲルがいる。
 だから、アスランも簡単には手出しできないだろう。
「それでも、早く言った方がいいかな?」
 その方がキラが安心してくれるだろうしね……と付け加えれば、レイはしっかりと頷いて見せた。



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