久々に軍務以外でキラに会えるかもしれない。
「もっとも、邪魔が入るのは目に見えているがな」
 むしろ、そちらの可能性の方が高い。だが、この機会を逃すと二人だけで話できる可能性はなくなるのではないか。
「うまくいけば、キラを連れ出せるかもしれないしな」
 そうすれば、あるいは彼女から『是』と言う言葉が得られるかもしれない。
 もちろん、そうならない可能性があることはわかっていた。しかし、少しでも可能性があるのであればそれにかけてみたいのだ。
「俺には、キラが必要なんだ」
 キラが側にいてさえくれれば、どんなことでも出来る。
 だから、とアスランは唇を引き締めた。

 目の前に、予想通りの表情をしたレイの姿がある。
「……いらっしゃい」
 それでも追い返されないだけマシなのだろうか。
「御邪魔するよ」
 にこやかな声音でそう告げれば、彼は渋々といった様子で体を移動させる。
「リビングにどうぞ。今、姉さんが来ると思いますので」
 そのまま、感情を感じさせない声音でこういった。
「ありがとう」
 それとも、彼の場合、これがデフォルトなのだろうか。しかし、キラに向ける表情はもっと柔らかな物だったような気がする。
 そんなことを考えながら、案内されるがままにリビングへと足を向けた。
 リビングと言っても自宅のそれとはまったく違う。それはきっと、この家の主であるデュランダルの趣味なのではないか。それとも、普段、ここに居座っているレイのものだろうか。
 こんなことを考えながらクッションのいい椅子に腰を下ろした。
「……それで、あなたも行くんですか?」
 明日、とレイがいきなり問いかけてくる。
「その予定だが?」
 無視したりしたら、ラクスが怖い。
 それ以上に、キラが彼女たちに会いたいだろうと思う。
「一緒に行けば、喜ぶだろう?」
 何よりも、万が一の時にフォローが出来るのではないか。そして、彼女たちはそれを望んでいるはずだ。でなければ、自分になんて声をかけないだろう。
 素直にそう言葉にする。
「アスランは……あれでもラクスさまの婚約者だからな」
 ラクスとしても無視するわけにはいかないのだろう。そして、周囲もそう考えるはずだ。
「まぁ、ラクスさまの他に俺とカガリ嬢がいれば、キラから目を離さずにすむだろうし」
 個人的には、軍服以外のキラのエスコートをしたいし……と言って笑う。
「……まぁ、及第点ですね」
 ため息とともにレイはこう言ってくる。
「ここで変なセリフを言えば、カガリ姉さんに連絡を取るところでしたが……やめておきましょう」
 さらに彼はこう付け加えた。
「……キラの従姉妹と言うことは、お前にとってもそうなんだな、そう言えば」
 今更ながら気が付いた、とミゲルは思わず呟いてしまう。
「何を言っているんですか、あなたは」
「……うまくつながっていなかっただけだ」
 カガリ個人の印象が強すぎて、と続ける。
「一応、軍人のコーディネイターを、ナチュラルの女の子がのしてしまうところを見てしまえばな」
 さらにこう付け加えれば、レイは少しだけ唇をほころばせた。
「俺としてはいい気味ですけどね」
 ついでに、キラに指一本触れられなかったらしい模擬戦闘の結果も……と彼はその表情のまま続ける。
「あれか。はっきり言って、キラの実力には、いつでも感嘆するしかないよな」
 しかも、あの思考の柔軟性は見習わないと、と素直に賞賛の言葉を口にした。
「そんなに凄かったのですか?」
 キラは自分からは言わないし、クルーゼは忙しくて聞くのがはばかられる。だから、詳しい内容を知らないのだ、と彼は続けた。
「あぁ」
 それに、思わず身振り手振りを交えてミゲルは説明をしてしまう。
「ちょっと! 何の話をしているのさ!」
 それは、顔を出したキラがこう叫ぶまで続けられた。



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