クライン邸でカガリのためのお茶会が開かれる。それに出席して欲しいと連絡が来たのは、休暇が終わる二日前だった。
「どうしよう」
 何か、アスランと会いたくないのだが……とキラは呟く。しかし、ラクスの婚約者である以上、彼も招待されているだろう。
 もちろん、カガリが傍にいてくれれば何かあっても助け船を出してくれることは否定できない。
 それでも、不安は消えない。
「ミゲルも行くの?」
 その中にこの一言を見つけて思わず呟いてしまう。
「なら、行こうかな」
 アスランには会いたくないけど、ミゲルには会いたいから。そう考えてしまうのはワガママなのだろうか。ふっとそんなことも考えてしまう。
 別に、今でもアスランは嫌いではない。大切な幼なじみだと思っている。
 ただ、昔のように彼を一番に考えられないだけなのだ。
 もちろん、アスランが今でも自分を《親友》だと思ってくれているかどうかはわからない。何よりも、彼には自分以上に優先しなければいけない存在がいるはずだ。
 それなのに、どうして……と自分でも不思議には思っている。
「……みんなに、あれこれ言われていたからかな、それは」
 何故か、みな、一人でアスランの傍にいくなと言うのだ。
 ミゲルとカガリとレイはわかる。ラクスも、そう言いたくなる理由も想像が付く。
 しかし、クルーゼをはじめとした隊の者達にまでそう言われるのはどうしてなのか。
「やっぱり、怒っているのかな?」
 再会するまで自分が《女》だ、と言うことを黙っていたことを……とキラは首をかしげながら呟いた。
「いくらなんでも、僕以外の友達を作っていなかった、なんて事はないだろうし」
 ラクスという婚約者もいるのに、と思う。
「……でも、何かラクスが怖いことを言っていたよね」
 まだ、彼が自分に執着していると。それはヘリオポリスに行く前の話だったし、しかもラクスと婚約する前だったような気がする。
「今でも、同じ状況なのかな」
 ミゲルなら、教えてくれるだろうか。
「……連絡、していいよね」
 ご家族のいる自宅に連絡するのは、何故か気後れしてしまうんだけど……と小さな声で付け加える。
 しかし、ここで連絡をしなければ困るような気もするのだ。
「メールしよう」
 まずは、とキラは呟く。
「うん。それがいいよね」
 そうしよう、と口にするとパソコンを起動させる。そして、既に暗記している彼のアドレスへとメールを書き始めた。

「まったく……もう少しなぁ……」
 キラからのメールを確認して、ミゲルは苦笑を浮かべる。
「まぁ、そう言うところがキラなんだが」
 さて、どうするか。
 こちらから連絡をするのは構わない。しかし、それはなんか面白くないような気がする。
「やっぱり、こういうことは言い出しっぺから行動して貰おうか」
 少し意地悪かもしれないが、その位はして貰ってもいいよな……と思う。
「と言うことで、頑張って貰おうか」
 どんな表情で連絡を入れてくるのだろうか。それを想像するのも楽しいし、と心の中で付け加えながらミゲルはキーボードを叩く。
「頑張ったら、ご褒美だよな」
 これから時間があるなら、一緒に食事にいってもいいかもしれない。
「……隊長に怒られないことを祈っておくか」
 もっとも、そんなことをしたら、クルーゼが何をしでかしてくれるかわからない、と言うのも事実。でも、その位は妥協して欲しいよな……と思う。
 今まで、健全――と言っていいのだろうか――という交際を続けてきたのだから。
 そんなことを考えながら、メールを送信した。



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最遊釈厄伝