アークエンジェルのことはもちろん、ラクスとカガリの存在をすこしでも早く安全な場所へ移動させなければいけない。
 だから、と言うわけではないのだろうが、ヴェサリウスとガモフには帰国命令が出た。
「キラは久々の本国ですわね」
 ラクスの言葉にキラは頷いてみせる。
「レイ、元気かな」
 ミゲルとクルーゼにはここで会えたけど、と付け加えた。
「あいつなら、元気だろう」
 ぼそっとカガリが言ってくる。
「……そうかな?」
 結構、熱とか出していたよ……とキラは首をかしげた。
「お前が帰るからに決まっているだろう」
 それに対して、カガリはきっぱりと言い返す。
「そうですわね。色々と邪魔しなければいけませんもの」
 言葉とともに、ラクスが意味ありげに視線を移動させた。その先にはミゲル達がいる。
「ミゲルとのことは……別に……反対していなかったと思うけど……」
 少なくとも自分の目の前では、とキラは口にした。
「まぁ、妥協したんだろうな、あいつに関しては」
 悪い奴ではないし、実力もある。
 何よりも、家柄を鼻にかけていないから……とカガリは笑う。
「そうですわね。ミゲル様がキラをお好きなのはキラがキラだからですもの。ですから、キラがどんな風に変わってもお好きでいてくださるはずですわ」
 ラクスもまたそう言って微笑む。
「でも、あいつはダメだ」
 言葉とともに、カガリはミゲルの脇にいる相手をにらみつけた。
「そうですわね。彼は絶対にダメですわ」
 まったく、いい加減、諦めればいいものを……とラクスも頷く。
「……アスラン?」
 だとするならば、と思いながらキラは幼なじみの名前を口にする。
「別に、僕は彼のことをそう言う対象としてみてないのに」
 むしろ、幼なじみ以上の感情を抱くことはない。そう言いきれる。
「お前がそうでも、あいつは違うと言うことだ」
「指一本触れられませんでしたのにね」
 まったく、実力差を認識できないなんて……とあきれながらラクスは口にした。
「あいつも一緒なんだ。レイがねていられるはずがないだろう?」
 自分はラクスのところで世話になることになっている。そうなれば、キラの側にいられるのはレイだけだ。カガリもこう言って頷く。
「……でも……」
 いくらなんでも、とキラは続けようとした。
「いいから。私の言葉を信じろって」
 何度、アスランを殺しに行こうと考えたか、とカガリは言う。
「そうですわ、キラ。あなたの情報がアスランに渡らなくなってから、彼が何をしでかしたか。それはわたくしの方が知っておりますもの」
 だから、とラクスも口にする。
「お願いですから、しばらくの間、一人で行動しないでくださいませ」
 ミゲルにも話を通しておく。ラクスはそう付け加えた。
「二人が、そこまで言うなら……」
 理由はわからないがそうした方がいいのだろう。キラはそう告げる。
「僕の方も、カガリに頼みたいことがあるんだけど」
 ラクスのところでお世話になるのであれば、きっと、オーブに連絡が取れるはずだから。そう言っただけで彼女にはわかったらしい。
「カレッジのことなら適当にごまかしておく。まぁ、地球軍には思い切り悪者になってもらうがな」
 ついでに、カトーの責任問題についても、だ。
 それ以上に、モルゲンレーテの上層部に関しては大なたを振るわなければいけないだろうが。そう続ける。
「そのあたりのことを、あいつに押しつけてしまえばいいか」
 そうすれば、こちらに押しかけてくることは出来ないだろう。ついでに、サハクの双子に監視を頼めば、完璧ではないか。
「とりあえず、オーブとプラントの関係を悪化させるわけにはいかない。それだけは、事実だ」
 だから、とカガリは言葉を重ねる。
「うん、わかっているよ。ラウ兄さんも、そのことは自覚しているはずだから……」
 だから、とキラは頷く。
「後は……アークエンジェルの人たちのことだけど……」
「そちらに関しては、それこそ、ラウ兄様に任せるしかないだろうな」
 最悪の状況にはしないはずだ。だから……と言うカガリの言葉は間違っていない。
「そうだね。ギルさんもいてくれるから」
 だから、なんとかしてくれるだろう。キラはそう言って微笑む。
「となると、やはり問題はアスランですわね」
 さてどうしてやろうか。そう告げるラクスが少しだけ怖いキラだった。



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