どんな弱い信号でも逃さないように、ジンのセンサーの感度を上げる。
 そうすれば、結果的にデブリからのそれも拾ってしまうことになるが、諦めるしかないだろう。
「しかし、まぁ……よく生きているものだな」
 これだけ、とあきれたように呟く。
 破壊され、うち捨てられた機械達。それらが、まだ微弱な信号を発している。そのせいで、ラクスが乗ったと思われる救命ポッドがどこにあるのかわからないのだ。
 そう。
 救命ポッドなのだ、とミゲルは無意識に操縦桿を強く握りしめる。
 彼女が乗っていた船は、破壊尽くされた姿で発見された。しかし、その中に《ラクス・クライン》の姿はなかった。
 代わりに、ポッドが射出された痕跡を発見した、と言う報告があったそうだ。
 そして、船長がその傍で倒れていたという。
 そこから推測された結論は一つしかない。
 彼がラクスをポッドに乗せ、脱出させた。
 そして、その角度や何から推測した宙域がこの周辺なのだ。しかし、それはデブリのせいで難航していると言っていい。
「もう二、三人、捜索に回して貰いたいよな」
 こうなれば、人海戦術しかないだろう。
「あいつらの機体も、その程度には使えるんじゃねぇの?」
 さらにこう付け加えたときだ。見覚えのある――だが、この一年ばかりデッキの奥に封印されていた――機体がこちらに近づいてくるのがわかった。
「キラ?」
 何故、とミゲルは問いかける。
『手伝いにいけって、隊長が』
 捜索ならこの機体の方が適しているだろう。そう判断されたのだ……とキラは続ける。
「まぁ、そうかもしれないが」
 だが、それだけではないのではないか。ミゲルは心の中でそう呟く。
「来たのは、お前だけ?」
 それを直接問いかけても意味はない。そう判断をして代わりにこう問いかけた。
『ニコル君とイザークさんだよ』
 バスターはエラーがでていたから修正させている、とキラは続ける。
『他の二機はテストしても大丈夫だと思ったから、ついでに連れてきた』
 イージスはどうなっているのかわからない。こう言って彼女はため息を吐く。
「まぁ、それはいいんじゃね」
 今のところ、キラがアスランに近づくとカガリがぶち切れる。その結果、彼の命が危うくなりかねない。
 だからと言えばキラも納得したらしい。
『カガリなら、やりかねないもんね……』
 小さなため息とともに言葉をはき出す。
『それよりも、周囲の警戒、お願いしていい?』
 しばらく、そっちには注意を払えなくなるから……と彼女は続けた。
「わかっているって」
 キラが探索に集中している間、彼女の機体は無防備になる。それを守るのが自分のいつもの役目だった。
 いったい誰であろうと、それを渡すつもりはない。
「任せておけ」
 他の二人は、そこいらでふらふらしていればいい。そんなことまで付け加える。
『それはいいすぎだよ』
 多分、とキラは言い返してきた。
「そうか?」
 あいつらのことをよく知っている人間であれば、全員同意をしてくれるぞ……とミゲルは口にする。
「後でオロール達に聞いてみろって」
 連中もそう言うに決まっているから、と笑った。
『時間があったらそうするね』
 何か、ものすごい厄介な事態に巻き込まれそうな気がする。キラはそう言いながら、キーボードを叩いているらしい。小さな音が耳に届く。そのリズムが心地よく思えるのは自分だけではないだろう。
『見つけた』
 不意にキラがこう呟く。
「流石」
 この短時間で、とそう思う。
「で、どこだ?」
 そのまま問いかければ、直ぐにある座標が伝えられた。



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