見覚えのある様子に、キラはようやく肩から力を抜くことが出来た。
 だからといって、このまま飛び出すわけにはいかない。
「二人とも、パイロットスーツもノーマルスーツも着ていないから」
 だから、今はでられない……と機体の外にいる面々に報告をする。
『了解。今、エアを充填する』
 即座に、チーフがこう言い返してきた。
「別の急がなくても……他のみんなが帰ってきてからでもいいよ」
 その間の暇つぶしはあるし、とキラは言い返す。
『気にするな。隊長からの指示だ』
 それに、古参の連中はみな、キラの顔を見ないと安心できない。だから、さっさと顔を見せろ……と彼は続ける。
「わかりました」
 相変わらず過保護だ、とキラは心の中で呟く。
「……流石だな」
 微妙な表情と共にカガリがこういう。
「本国に行くと、レイも凄いよ」
 幼年学校時代はあれこれ言って、自分にまとわりついていた。アカデミーに入学してからはそれはなくなったが、代わりにクルーゼがあれこれ情報を入手していたらしい。
「ミゲルなんて、僕と同室になったせいで、それこそDNAレベルまで調査されたんじゃないかな」
 苦笑と共にキラはそう言った。
「なるほど。それでもお前の傍にいることを許可されている……と言うことか」
 と言うことは、あれよりも見込みがあると判断されたのか。苦笑と共にカガリはそう告げた。
「なら、腹に一発ですましてやろう」
 だから、どうしてそうなるのか……とキラはため息を吐く。
「いいじゃないか。私がそれですませたと知れば、あの人はそれ以上のことをしないぞ」
 くつくつと笑いながらカガリは言い返す。
「……恐いこと言わないでよ」
 確かに、あの人がどう出るのか。それがわからないから余計に怖いのに……とキラは不安そうに告げる。
「だから、私までが認めたと知れば、とりあえず傍観してくれるって」
 その点は保証する、と彼女は笑う。
「それよりも、問題なのはあれの方だな」
 ぶん殴るだけで諦めてくれればいいのだが、とカガリは考え込む。
「……それも隊長に相談してからにしてね」
 今ここで、オーブとプラントの関係を悪化させたくない。だから、とキラは言い返す。
「大丈夫だろう。普通の男であれば、女の――しかも、ナチュラルの――私に殴られたなんて、恥ずかしくて親には言えないはずだからな」
 そう言う問題なのだろうか。
「それに、ラクスもそれに関してはフォローしてくれる約束になっている」
 きちんと根回しがすんでいるのであれば、自分があれこれ言う必要はないのかもしれない。
「……お手柔らかに」
 それでも何かが引っかかるんだよね、と心の中で呟きながらも、キラは言葉を口にした。
「わかってる」
 顔だけは無傷にしておいてやろう、と言うセリフはどこかずれてはいないか。そう思ったときだ。
『キラ、いいぞ』
 外からミゲルの声がする。
「わかった。今、開けるから」
 ハッチから離れていて、とキラは言い返すと即座にキーを叩く。
「これで、少しは広いところにでられるな」
 カガリが笑う。
「今度は居心地がいいといいんだが……」
 彼女はさらにこう付け加える。
「それに関しては、僕がフォローするし……隊長も注意してくれるんじゃないかな?」
 みんなに、と告げると同時に、ハッチが開く。
「キラ!」
 まだ完全に開ききっていないのに、すきまからミゲルが顔をのぞかせた。
「ミゲル」
 その瞳を見た瞬間『帰ってきた』という気持ちに襲われる。その気持ちのまま、キラはシートから立ち上がった。



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