キラの意志が固いと判断したのだろう。だからといって、解放するわけにもいかない。
 妥協案として、三人はキラとカガリをこの部屋に閉じ込めることにしたらしい。
「それで、どうするつもりだ?」
 忌々しそうに周囲を見回しながらカガリが問いかけてくる。
「どうするも……このまま、出航されるのは困るよね」
 流石に、恋人に会えなくなるのはいやだ……とキラは呟くように付け加えた。
「そうだよな。私もそろそろ家族が心配していると思うし」
 こう言いながら、彼女はさりげなく室内を見回している。もちろん、キラも同様だ。
「早々においとまさせてくれればいいんだが」
 あの様子では無理だろうな、と深いため息を吐く。
「いざとなったら、強引に出ていくしかないのか」
「きっとね」
 カガリ一人ぐらいならば、自分の実力でもフォローが可能だろう。本当であれば、守られてくれればいいのだが、彼女の性格では難しいことも知っている。
「……でも、本当にどうなるのかな」
 諦めてくれればいいけど……とキラはため息を吐く。
「無理だろうな」
 地球軍にしれ見れば、あれらは起死回生の切り札だと言える。そして、それを最良のものにしなければいけないと思っているはずだ。
「お前ほどの才能の持ち主は、モルゲンレーテにもいない」
 そうである以上、簡単に手放してもらえるとは思うな。カガリはそう言った。
「……だから、困るんだよ……」
 絶対に、地球軍には関わりたくなかったのに。言葉とともにまたため息を吐く。
「第一、あれだって関わったつもりはないんだよ」
 おそらく、カトーが手渡したものだろう。だから、あれにはあわないのではないか。
「と言うことは……最初から繋がりがあったと言うことか?」
「あるいは……言いたくないけれど、首長家の誰かに圧力をかけられたとか?」
 研究費を盾に取られては、きっと断れなかっただろうな……と彼の顔を思い出しながらキラは呟く。
「あぁ……だとするなら、あそこだろうな」
 いくつか思いあたり場所がある、とカガリも頷いた。
「ともかく、何をするにしても、ここにいては難しいな」
「そうだね」
 せめて、艦内の見取り図があれば何とかなるのだが。心の中でそう呟く。
「……パソコン、持ってくればよかったな」
 そうすれば、見取り図ぐらい簡単に入手できるのに。あの時、ラボにおいてきてしまった。見られて困るデーターは入れてなかったが、使いやすいようにカスタムしたあれは少し惜しかったかもしれない。
 そう考えていたときだ。
「あるぞ」
 さらりとカガリがこんなセリフを口にしてくれる。
「はぁ?」
「避難するとき、確保してきたからな」
 検査はされたが、とりあえず見逃されたぞ……と彼女は続けた。
「本当に必要になるとは思わなかったがな」
 言葉とともに、彼女は背中からそれを取り出す。どうやら、ウエストに挟んでいたらしい。
 モルゲンレーテ製のそれは確かに薄くて軽いが売りだったが、そんなところに入れておくには邪魔な大きさだ。
 それでも、これがあるとないとでは大違いと言うことも事実。
「カガリ、大好き」
 満面の笑みと共にこう告げる。
「心配するな。私は愛しているからな」
 カガリはそう言って抱きついてきた。
 このセリフだけを聞くと、絶対に誤解されるだろうな。そう思いながらもキラは静かに頷いてみせる。
「とりあえず、ここに監視カメラはない」
 しかし、彼女の意図はこれを伝えることだったらしい。
「了解」
 ならば、後は自分の仕事だ。そう囁いてキラは微笑む。
「大丈夫。何があっても、君を無事にオーブに帰してあげる」
 そして、こう言い切った。



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