目の前のプラントに愛しい少女がいる。
「……作戦開始は伝えたが……」
 問題は、それに対する返信が来ていないことだ。はたして、彼女は自分からのメールを読んでくれただろうか。
「まぁ、とりあえず戦闘に巻き込まれなければいいんだが」
 巻き込まれたとしても、キラの顔を知らない新人連中は奪取組だ。その傍には彼女に世話になっているものが付いている。だから、心配はいらない。
 それはわかっているのだが、何故か不安を消せないのだ。
 何か、厄介なことが起きるのではないか。
 そんな予感すらある。
「……こういう予感だけは外れないんだよな」
 先日もそれを証明したばかりだ。
「ばれたら、絶対に怒られるよな」
 キラがあれこれ整えてくれたカスタムジンを、戦闘で壊してしまった。しかも、補給がうまくいかなくて現在もまだ修理がすんでいない。この調子では、キラが戻ってくるまでこのままではないだろうか。
 それ以前に、作戦中にばれるような気がする。
「ともかく、無事に帰ってきてくれれば、それでいいか」
 怒られるのも、ようやくキラが帰ってきてくれた証拠だと思えばいい。
 自分に言い聞かせるようにこう呟く。
「ミゲル」
 そんな彼の背中に、後輩の一人の声がかけられる。
「何だ?」
 くせのある後輩達の中で、彼は可愛いと言える人間だ。もっとも、それは外面だけかもしれないが、と心の中で呟きながら振り向く。
「隊長がお呼びです」
 そうすれば彼はきまじめそうな表情と共にこう言ってくる。
「了解。ありがとうな、ニコル」
 言葉とともに床を蹴った。すれ違う瞬間、肩を叩けば「どういたしまして」と彼は笑う。
 それに頷き返すと、視線を前へと向けた。その瞬間、ミゲルは表情を引き締める。
 わざわざ自分を呼び出すとはいったい何があったのか。
「嫌な予感と関係ないといいんだがな」
 ため息とともにミゲルはこう呟いた。

 目の前の人物が誰なのか。それを確認した瞬間、キラは思いきり目を丸くしてしまった。しかし、それは相手も同じだったらしい。
「何で、お前がここにいる!」
 遠慮なくこう叫んでくれた。
「なんでって……ここのカレッジに通っているから」
 カトー教授の授業を受けたくて、と無難なセリフを口にする。
「だったら、一言ぐらい連絡を……」
「入れたけど、家出中って言われたよ? マーナさんに」
 この言葉に目の前の相手は言葉に詰まったようだ。だが、そのままキラの腕を掴む。
「ちょっ!」
「いいから、付き合え」
 まさしく引きずるように移動を開始する。
「キラ?」
「大丈夫。知り合いだから」
 心配そうに声をかけてくるミリアリアにこういった瞬間、目の前でドアが閉まった。
「……それで?」
 周囲に誰もいないことを確認してから、目の前の相手――カガリが問いかけてくる。
「多分、カガリがここに来たのと同じ理由だよ」
 即座にキラはこう言い返す。
「悪いけど、貰っていくから」
 あれを地球軍に渡したくない。だから、とキラは続けた。
「それは構わないが……それよりも、お前!」
「こっちの方がばれないかなって。プラントではIDも変えてあるし」
 恋人も出来たよ、と笑いながら付け加える。
「何!」
 次の瞬間、カガリが叫ぶ。
「どこのバカだ、それは!」
 ぶん殴りに行く、と彼女はさらに付け加える。
「……大丈夫。兄さんのお墨付きだから」
 彼のしごきにも耐えた人間だし、とキラは慌てて彼女を制止しようとその頬に触れた。
「彼のようなことにはならない。それよりも、もっと他に考えなければいけないこともあるし」
 特にカガリは、と告げれば彼女はとりあえず落ち着いたようだ。
「そうだな」
 そして、こう頷いてくれた。



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