地球軍が――と言うよりはモルゲンレーテと言った方が正しいのか――開発をしているMSの存在は、ザフトとして見逃せないものだったらしい。
 そして、それを調べ、なおかつ奪取のために必要な情報を得ることが出来るメンバーの中にキラが欠かせないと言うことも否定できない事実だ。
 だから、彼女が他の情報局員と共にオーブに向かうことになったのは仕方がないことだろう。
「……だからといって、忘れられるのも、不本意だよな」
 ふられるのも、とミゲルは続ける。
「と言うことで、忘れられないように努力しないとな」
 形に残る何かを贈ってしまおうか。
 キラの性格を考えれば、プレゼントを捨てるはずがない。そして、それを目にすれば、送ってくれた相手のことを思い出すに決まっている。
 それが、キラに近づく人間を牽制してくれればなおいいな……とミゲルは心の中で呟いた。
「本当は、抱いてしまえばいいんだろうけど……キラの場合、壊しそうで怖いし」
 そもそも、彼女はその手のことに疎い。だから、手を出しかねている、というのは大げさだろうか。しかし、実際、キス以上のことが出来ないでいるのは事実だったりする。
「やっぱ、それは後のお楽しみにしておくか」
 クルーゼも怖いし、とこっそりと付け加えた。
「と言うことで、無難なところはプレゼントだよな、やっぱり」
 それも、できればいつでも身につけていられるものがいい。
「指輪か、ネックレスか?」
 無難なところはそんなものだろう。
「……指輪だな」
 個人的趣味から言えば、とミゲルは結論を出す。
「と言うことで、キラのサイズをゲットしてくるか」
 チャンスなら、いくらでもあるから。だが、すこしでも早く行動をした方がいいだろう。そうかんがえると同時に、ミゲルは立ち上がった。

「だから、どうして姉さんなんですか?」
 自分は反対だ、とレイがクルーゼにくってかかっている。
「他に適任者がいないからだ」
 そんな彼に、クルーゼは冷静に言い返す。
「軍人である以上、命令があればどこにでも行かなければいけない。それはわかっていたことだろう?」
「そうかもしれませんけど……よりにもよって《オーブ》ですか?」
 他の場所であればこんな風に言わない……彼は付け加える。
「もし、あいつらに見つかったら……」
「それは大丈夫だ」
 クルーゼは断言をした。しかし、レイは納得できていないらしい。
「どうして、そう言いきれるんですか!」
 あいつらのしつこさはよく知っているだろう。そう言って彼はクルーゼをにらみつけてくる。
「だが、キラは女の子だよ?」
 にこやかな表情を作りつつ、クルーゼはこう言い返した。
「……それは理由になってません!」
「なるだろう?」
 連中が知っている《キラ》は《男の子》だっただろう? と付け加える。
「それとこれとは、別問題です!」
 キラは美人だから、変な虫が付くかもしれないだろう……とレイは言い返してきた。本当に、どうしてこう屁理屈ばかり思いつくのか。これはきっと、あの男の悪影響だろう、とため息を吐く。
「ただでさえ、変な虫が付いているのに……」
 それでも、あれはキラが気に入っているから存在を妥協しているのに……と彼は付け加えた。
「ミゲルは信用できる。あれとは雲泥の差だ」
 しかも、自分が直々に鍛え上げてきたのだ。何があってもキラを守ることができるだろう。
「それに、今回、あの子に同行するメンバーもね」
 言葉とともに、一枚のリストをレイへと差し出す。彼は即座にそれに視線を走らせた。
「……この人達は……」
「だから、心配はいらない、と言っただろう?」
 彼等は別の意味で信頼できる。そう付け加えた。
「でも、いいのですか?」
 彼等が傍にいてくれることは、キラにとってプラスだ。しかし、とレイはクルーゼを見つめてくる。
「ここには君もギルもいる。他にも、私に力を貸してくれる人々がいるからね」
 だから、キラのことを優先することにしたのだ。そう彼は続けた。
「まだ、何か異論があるかね?」
 この問いかけに、レイは静かに首を横に振ってみせる。
「ならば、キラにそんな表情を見せるのではないよ?」
 不安を感じるだろうからね、と付け加えれば、今度は首を縦に振った。その事実にクルーゼは微笑む。
「では、あの子の手伝いをしてやってくれないかな」
 絶対に、最低限のものしか準備していないだろう。しかし、それでは困ることもあるのではないか。
「わかりました」
 言葉とともに、彼はきびすを返した。



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