キラの趣味が何であるのか。それは直ぐにわかった。
 もちろん、本人から直接聞いたわけではない。
 教えてくれたのは、クルーゼだ。
「……そんなことを言っていたのか」
 ミゲルのジンに付いての話題から、ついつい、そこまで白状させられたの。しかし、そこまではどこか微笑ましいとい言いたげだった――と言っても、ミゲルから見えたのは口元だけだが――彼の表情が、一変する。
「……隊長?」
 さっさと許可をもぎ取って出ていったキラのことを思い出しているのか。クルーゼはミゲルの呼びかけにも言葉を返さない。
「これは、要注意だな」
 かといって、四六時中、監視をしているわけにもいかないし……と彼は続ける。
「隊長?」
 聞こえていないかもしれないが。そう思いながら、ミゲルはまた呼びかける。
「あぁ、お前がいたな」
 そこでようやく彼の存在を思い出した、と言うようにクルーゼは呟く。
「とりあえず、キラの趣味だったな」
 そして、わざとらしい笑みと共に言葉を綴り出す。その表情と声音から、ひょっとして、自分は地雷を踏んだのではないか。そんな考えすら抱かせる。
「あの子の趣味は、ハッキングだよ」
「はい?」
 ハッキングというと、やっぱりあのハッキングだよな? と呟いてしまう。
「ザフトに入れれば、私が監視できる、と思っていたのだがね」
 現状では、キラの様子を確認することで精一杯だ。かといって、他の者に任せるわけにはいかない。
「そう言うことだからね、ミゲル」
 クルーゼは楽しげに視線を向けてくる。
「あのこの事だから、気付かれることはないだろうが……どこのコンピューターにハッキングをしているのか、それだけ確認してくれるかな?」
 止めても無駄だろうからね、と彼は続けた。
「……はぁ……」
 止めても無駄なら、自分が見ていなくてもいいのではないか。
「以前、ザフトのマザーに侵入したことがあってね……そのせいで、あの子はジンのOSに手を出すことになったのだが……」
 まぁ、それについては非常に助かっているからいいのだが……とクルーゼは続ける。
「……どうしてばれたんですか?」
 気付かれることはないと聞いたが、と思わず聞き返してしまう。
「あまりにできがよすぎたのだよ。だから、ついつい、自分が使っていた機体に入れてしまってね」
 要するに、そこからばれたのだと彼は続けた。
「あれは、痛恨のミスだったね」
 今更言っても仕方がない。それに、キラが改良をしたOSがなければ、自分たちが生き残ることが出来たかどうか、わからない。そうも彼は続ける。
「……まぁ、それに関しては俺も否定できませんが」
 しかし、とミゲルはため息を吐く。
「一応、キラは女ですよね?」
 そして、自分は間違いなく男だ。
「いいんですか?」
 今はまだ自制が効いているが、万が一と言うことがないとは言い切れないぞ……と言外に付け加える。
「……と言うことは、まだ告白もしていないのか、お前は」
 そんな彼に向かって、クルーゼは予想もしていなかったセリフを口にしてくれた。
「隊長、あの……」
 ばれていたのか、とミゲルは焦る。
「キラはその手のことに鈍いからね」
 気が付いたら他の人間にとられていたと言うことにならなければいいが、とクルーゼはさらに言葉を重ねた。
「……いいんですか?」
 そんな彼に、ミゲルはこう聞き返す。
「お前とキラのことだからね。私は、あえて口は出さないよ?」
 他のものは知らないが。そう付け加えられて、嫌なものを感じてしまう。
「……わかりました」
 だが、それならそれでいい。自分もあれこれ割り切れるし。そう思う。
「ともかく、キラの側にひっついていればいいと言うことですね?」
 自分のジンのこともあるから、それに関しては難しくないだろうが。
「まぁ、そう言うことだな」
 せいぜい頑張るんだね。その言葉を聞きながら、ミゲルはその場を辞した。



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