最短ルートで目標と思われるMSが隠されている場所へとたどり着いた。
「……しかし、えげつない罠を知っているな、お前」
 その途中途中でしかけられたトラップを思い出したのか。誰かがこう言っている。
「あれか。前に調べたときに見掛けて、ちょっと使ってみたかったんだよ」
 ライブラリだけではどれだけ有効性があるのか、実感できなかったから。そう言い返す声も聞こえた。
「お前らしいよ」
 ため息とともに付け加えられた言葉に、ミゲルも同意だ。あの手際の良さから判断をして、何度も練習してきたのだろう。しかし、暇な奴と言いたくもなるのだ。
「やっぱり、あるね」
 その時だ。キラの言葉が周囲に響いた。
「なら、即座に突入かな?」
 ダコスタがこう言い返している。
「トラップ、ないよね?」
 ぼそっと、キラが呟くように口にした。
「ないとは言い切れないが……ここで悩んでいても仕方がないことも事実だ」
 ミゲル達がなんとかするだろう、というダコスタのセリフは何なのか。
「お前は高みの見物か?」
 即座にミゲルはつっこみを入れる。
「仕方がない。情報を整理する人間も必要だろう?」
 システムに関してはキラに任せるしかない。そうなれば、どうしても自分たちは周囲まで気を配ることが出来ないではないか。
「それとも、お前が代わってくれるか?」
 それならば、自分がトラップに対処をするが。ダコスタはさらに言葉を重ねた。
「俺が悪かった……すまない」
 だから、情報処理の方をお願いします。ミゲルは即座にこう言い返す。
「わかればいい」
 と言うことで、とりあえず中にはいるか……といいながら、ダコスタは他の者達へと視線を移す。
「それしかないだろうしな」
「ここでのんびりしていても意味がない」
 即座に彼等も口を開く。
「じゃ、ロックを外すよ」
 手元で何か作業をしていると思えば、キラは既に突入の準備をしていたらしい。
「気をつけろよ」
 こう言いながらミゲルはその傍に歩み寄る。
「大丈夫だと思うけどね。一応、ドアの前は空けておいてね」
 ドアが開くと同時にトラップが作動するかもしれない。その言葉に、ダコスタ達も移動を開始する。
 彼等が安全と思われる場所に移動したことを確認して、キラの指がエンターキーを押した。
 それに数秒遅れてドアが開く。
 だが、それだけではない。
 次の瞬間、何かが空を裂いた。
「……やっぱり……」
 おそらく、麻酔薬でも塗られているのだろう。殺傷力はないと思われる吹き矢が視線の先に転がっている。
「ってことは、まだまだあるな」
 ため息とともにミゲルが呟く。
「あるだろうな」
 それに誰もが同意をする。しかも、かなりえげつないものが、だ。そう考えて、誰もがうんざりとした表情を作った。
「と言うわけで、行くか」
 それでも、ここで引き返すわけにはいかない。ダコスタの言葉とともにみなは意を決したように足を踏み出す。
「キラ。俺の側から離れるなよ?」
 ミゲルはそう言いながら、さりげなくキラの隣に並ぶ。
「大丈夫だよ」
「お前の『大丈夫』はあてにならない」
 キラの言葉を即座にミゲルは否定する。それに、他のメンバーも頷いて見せた。
「……何だよ、それ……」
 ただ一人、当人だけが納得していない。キラの頬がぷくっとふくらんだ瞬間、その場は笑いに包まれた。



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