デッキから他の候補生達がいるブリーフィングルームへと戻れば、そこは何故か騒然としていた。
「……どうかしたのかな」
 それは、決して自分たちの行動のせいではない。そう察したのだろう。キラは首をかしげながらそう呟いた。
「さぁ、な」
 どちらにしろ、できれば関わりたくない理由だと思うが……とミゲルは言い返す。
「だよなぁ」
 しかも、自分たちが原因ではないらしい。こう言ってきたのはハイネだ。
「でも、戻らないわけにはいかないよね?」
 自分たちもそこで待機しているようにと指示をされたのだから。そう言ったのはキラだ。
「何か、無視した方が良さそうなんだけど、ね」
 でも、命令は命令だろうし、とため息を吐く。
「まぁ、そうだな」
 諦めるしかないだろう。ミゲルもそう言って頷く。
「とりあえず、キラは俺たちの後ろにいればいい」
 少なくとも、自分たちならば連中が飛びかかってきても潰されるようなことはない。しかし、キラはそういうわけにはいかないだろう。ハイネのこの言葉に、キラは不本意だという表情を作った。
「僕だって、大丈夫だよ」
 そのままこう言い返す。
「そう言うことは、組み手で俺に勝ってからいいなさい」
 組み伏せられた状況から、一度も抜け出せたことはないだろう? とハイネは笑う。
「……それは……」
 否定できない事実だから、か。キラは直ぐに反論が出来ないようだった。
 しかし、そこで大人しく引き下がるような性格をしていないのもキラだ。
「ハイネが太くて重いからでしょう!」
 叫ぶようにこう言い返す。
「……太くて重いって……」
 まさかこう言い返されるとは思っていなかったのか。彼が絶句するのがわかった。
 しかし、その衝撃は直ぐに過ぎ去ったらしい。
「キラに比べれば、誰だって太くと重いだろうが!」
 自分は標準だ! と叫び返している。
「でも、重いじゃない!」
 負けじとキラは叫び返す。
 本当に、こう言うところは子供としての顔を見せてくれるよな。そう考えながら、ミゲルはキラの襟首を掴んだ。
「はいはい。そこまでにしておけ」
 そのまま自分の方へと引き寄せる。
「ミゲル!」
 何で、とキラは怒りの矛先を彼へと向けてきた。
「目立っているぞ」
 そう言うじゃれ合いは自由時間にしておけ、とミゲルは付け加える。
「……でも……」
「いいから、いいから」
 後であいつからデザートを取り上げてやるから、と付け加えれば、とりあえずキラは暴れるのをやめてくれた。
「……ミゲル、お前な」
「いいだろう、別に」
 その位は、と付け加える。
「……まったく。寮に帰ったら、おごれよ?」
「了解」
 と言うことで、入るか。そう言いながら、ミゲルはキラを捕まえたままブリーフィングルームへと足を踏み入れた。
 その瞬間だ。
「キラ!」
 聞き覚えがある声が周囲に響く。それと同時に、ピンク色が二人に向かって、真っ直ぐに飛んでくる。
「ラクス?」
 その姿に、信じられないというようにキラが呟く。
「お久しぶりですわ、キラ。お元気そうで何よりです」
 ラクスが満面の笑みと共にこう告げる。その瞬間、周囲から大きなどよめきがわき上がった。



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