目的地に着いてみれば、予想外の被害の大きさに誰もが息をのんだ。
「あれって、砲撃されたのか?」
 そう呟く声が耳に届く。
「……デブリだと思うけどね」
 じっとモニターを見つめていた整備コースの誰かが小さな声で呟いた。
「何でそう思うんだ?」
 即座に質問の声が上がる。
「外壁のめくれ方だよ。この前、授業で見たのと同じじゃないか」
 もっとも、規模はこちらの方が大きいが。そう言い返す声が聞こえた。
「乗員は無事なのかな?」
 不安そうな声音で、キラはこう呟く。
「大丈夫だろう。あのクラスの船だと、乗客が乗り込んでいる部分の生命維持装置は二重になっているはずだし……」
 直ぐに誰かが言葉を返してきた。
「操縦士もうまいな。一番、被害が少ないように、船の角度を変えたんだろう」
 だから、重要な部分には被害が及んでいない。
 それでも、本国まで戻るのには支障があるのだろう。だから、救難信号を出したのではないか。
「そうなんだ」
 整備コースの人間が抱いた言葉に、キラはほっとしたように頷いてみせる。
「しかし、どうやってこちらに連れてくるんだ?」
 不意に誰かがこういう。
「……こちらに収容するとなると、俺たちの訓練は、しきり直しってことになるんだろうな」
 それに呼応するかのように、誰かがこう呟いた。
「いいんじゃないか、別に。俺たちは誰かを守るためにザフトに入ろうって思ったんだろう?」
 何よりも、とハイネが笑いながら付け加える。
「ひょっとしたら、可愛い女性が乗客でいるかもしれないぞ」
 お知り合いになれる機会があるかもしれない、と言うセリフに、何故かどよめきがあがった。
「……いいのか、それで」
 ミゲルはそれにため息を吐いてしまう。
「いいんじゃない?」
 別に、とキラが言葉を返してくる。
「それで『実習の邪魔をされた』と言う感情がなくなるなら」
「なるほどな」
 もっとも、ハイネがそこまで考えているかどうかはわからないが。そう心の中で呟いたときだ。
『以下のものは、直ぐにデッキへ』
 不意に、スピーカーから教官の声が流れ出す。その後に続けられた名前の中には、自分やキラ、ハイネと言ったパイロットコースでも上位の者達のそれが並べられた。
「……何だ?」
「さぁ」
「行ってみればわかるだろう」
 意味がわからない。しかし、呼び出された以上、行かないわけにはいかないのだ。
「さっさと行きますか」
 言葉とともにミゲルは移動を開始する。その隣には当然のようにキラの姿があった。
「……何か、ろくでもないことを言われそうな気もするんだけどな」
 まぁ、それも訓練の一環か。
「大丈夫じゃない。無理はさせられるかもしれないけど、無茶はさせないでしょう、教官達も」
 無茶をさせるとすれば、クルーゼではないか。キラはそう呟く。
「あるいは、MSで乗客の輸送をするつもりなのかも」
 近くまであの船を引っ張ってくれば、直接通路をつなげられるだろう。その方が安全だろうし、とキラは付け加えた。
「なるほど。その作業を間近で見せようってとこか?」
 だが、それならば、どうしてこのメンバーだけなのか。全員でもいいだろう、とハイネが口を挟んでくる。
「……特等席だったりしてな」
 あははは、と笑いを漏らしながら、ミゲルが口にした。

 それが現実になるとは、誰も思ってもいなかったが。



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最遊釈厄伝