三日後の実習は、本当に壮観だった、と思う。
 派手な動きではなく、基本に則った動きをしている方が実は強い。それをまざまざと見せつけられたのだ。
 もっとも、負けた方の連中もそれなりに騒いでいたらしい。曰く『ナチュラルにMSが操縦できるか』と言うことだそうだ。
 しかし、それを耳にした教官から、別の意味で衝撃的なセリフを聞かされたことも事実である。
「地球軍の戦闘用コーディネイター、か」
 そう言う同胞がいることは、噂として知っていた。
 しかし、あくまでも都市伝説、だと信じていた。
 だが、教官達の言葉がそれを打ち壊してくれた。
「……戦えるのか、俺たちは」
 そんな相手と、とミゲルは呟く。
「そんなことを行っていたら、ブルーコスモスとも戦えないだろうな」
 こう言ってきたのはハイネだ。
「あそこにも、第一世代の連中がいるって話だぜ」
 そうなれば、必然的に戦わなければいけないだろう。彼はそうも言った。
「そう、かもしれないな」
 確かに、敵である以上戦わなければいけない。でも、そこまで割り切れるものなのか。
「まだまだ、先だろうけど、ね」
 そんな彼等の会話に、いきなりキラの声が割り込んできた。
「キラ?」
「あちらは、まだ、MSの開発に成功してないみたいだから……実際にはMS戦にはならないと思うよ」
 とりあえずサンプルも奪取されていないそうだし、とキラは付け加える。
「この優位がいつまで続くか、わからないけどね」
 少しだけ哀しげな表情でさらに言葉を重ねたのはどうしてなのだろうか。
「まぁ……それでも、連中が俺たちの存在を否定する以上、いずれは戦わなければいけないんだろうな」
 だからこそ、ここでしっかりと基本を身につけるべきなのだろう。その時に本当に戦えるかどうかはともかく、その心構えだけはしておかなければいけないのではないか。ミゲルは自分に言い聞かせるように口にする。
「だな」
 派手な動きは一見、格好良く見えるが、その実、無駄が多い。だから、相手がMSでなくても負ける可能性があるのではないか。
「だろう?」
 数だけは、あちらの方が多いんだから……とハイネはさらに続ける。
「だから、死なないように、自分たちの技量を高めるだけだろう」
 その言葉に、キラは小さく頷いてみせる。
「他の人たちも、同じように考えてくれればいいんだけど」
 今回のことで、多少は心構えが変わったのではないか。しかし、とキラは顔をしかめる。
「……だと、いいけど」
 でも、きっと直ぐに忘れると思う。小さなため息とともに、こう告げた。
「ところで、キラ。何で呼び出されたんだ?」
 話題を変えようとするかのように、ミゲルはこう問いかけた。
「ん? たいしたことじゃないよ」
 どこかほっとしたような表情でキラは口を開く。
「新型の実地テストをね、今回の実習と平行して行いたいって言う話」
 そんなにせっぱ詰まっているわけじゃないだろうに、とそのまま首をかしげた。
「……まぁ、クルーゼ隊長に協力して頂けるなら、とは言ってきたけどね」
 流石に、他の隊ではちょっと難しい。自分はまだ学生でしかないのだから、とキラは続ける。
「クルーゼ隊ならいいのか?」
「顔見知りの整備クルーが多いから」
 だから、多少の無理は聞いてもらえるのだ。そう教えてくれた。
「……そうか」
 でも、と言いながらミゲルはキラの頭に手を置く。
「だからといって、無理はするなよ?」
 あくまでも、実習がメインだと言うことを忘れるな。そう付け加えればキラは小さく頷いてみせる。
「キラの面倒は、いつも通りミゲルがすると」
 まぁ、当然のことだな……とハイネが意味ありげに笑って見せた。



BACKNEXT

 

最遊釈厄伝