久々の休暇、ということでアカデミーの学生達は久々の開放感に包まれている。
 しかし、キラはそういうわけにはいかない。
「……とりあえず、迎えが来るまでに課題をなんとかしておかないと」
 でなければ、やっている暇があるかどうか。そう言ってため息を一つ吐く。
 多少のことは免除されるとはいえ、それに甘えるわけにもいかないだろう。もっとも、ジンのOSを構築したのは自分だから、今更何を書けばいいのかわからない、というのも事実だが。
 ここはやはり、教官の好意に甘えて免除してもらう方向へ行くべきだろうか。
 そんなことを考えていたときだ。キラの目の前に一台のエレカが止まった。そのまま、ドアが開かれる。
「キラ。乗りなさい」
 しかし、そこにいたのは開発局の人ではなかった。
「……ギルさん?」
 どうして、とキラは聞き返す。
「今日から休暇なのだろう? その話を聞いたある方が、どうしても君に会いたいと言い出されてね」
 そういうわけで、自分が迎えに来たのだ。彼はそう教えてくれる。
「……誰、ですか?」
 アスランなら、絶対に断らなければいけない。そう考えて、キラは聞き返す。
「ラクスさまだよ」
 苦笑と共にデュランダルはこう教えてくれる。
「それに……レイも君に会いたがっている」
「レイもですか?」
 ということは、彼も幼年学校から帰ってきていると言うことだろうか。しかし、あちらはまだ休みではなかったような気がする。
「細かいことは気にしなくてもいいのではないかな?」
 それよりも、早く乗りなさい……と彼は続けた。出なければ、不必要に目立ってしまうよ、とも。
 確かに、ここでクルーゼだけではなく彼とまで知り合いだと知られると、いらぬ腹まで探られてしまいかねない。
「わかりました」
 開発の方はいいのだろうか。一瞬、そんな考えがキラの心の中をよぎる。
 しかし、直ぐに彼等がなんとかしてくれるだろう。そう言う結論に達した。
「では、乗りなさい」
 その呼びかけにキラは小さく頷く。そして、そのまま車内に滑り込んだ。

「あいつ、何しているかな」
 ミゲルは思わずこう呟いてしまう。
「あいつって、だぁれ?」
 隣に座っていた弟が、即座にこう問いかけてくる。
「ルームメイトのキラって奴。俺よりも凄く頭がいいんだけどな。ものすごくドジなところもあるからさ」
 ちょっと心配なだけだって……とミゲルは彼に笑い返す。
「それに……あいつには、親も兄弟もいないみたいだから……ちょっとな」
 こう言うときにはどうしているんだろう。そう思っただけだ、と彼は続けた。
「お前の誕生日でなければ、引っ張ってきてもよかったのかもしれないが……」
 今回だけはお前優先だよな、といいながら弟の髪を撫でる。
「うん」
 それに弟は笑い返してくれる。
「でも、僕も会いたいから次は連れてきてね」
 そうしたら、自分もキラと仲良くするから。そう言って、彼はさらに笑みを深めた。
「いいこだな、お前は」
 そうするよ、とミゲルは言い返す。
「その前に、その子におみやげを持っていきなさいね」
 二人の中で結論が出たと判断したのだろう。母が口を挟んできた。
「でも、その子、甘い物が好きかしら?」
 ということは、手作りのお菓子か何かを考えているのだろう。
「好きだよ」
 もっとも、そんなものを迂闊に渡しては食事を食べずにそれですませるかもしれない。そんな不安がある。
「なら、たくさん持っていってね」
 しかし、母にこう言われてはそんなことを口にするわけにはいかないだろう。
「頼むよ、母さん」
 それに、せっかく楽しげなのだ。まぁ、そのあたりは自分がコントロールすればいいか。そう心の中で呟いていた。



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